サラダボウルの朝ボウルいっぱいサラダを作って膝を抱えながら食べた。
草を削る虫みたい。シャクシャクシャキシャキ。
テレビはつけない、音楽も要らない、
歯に当たるキャベツがきれいに鳴くのだから。
こんな朝があってもいい。
返って来ないということは届いたかも分からないということ。
一方通行の泥道、しゃくとり虫のため息、
水溜りを這っていく。溺れているんじゃなくて、越えていくの、
泥まみれのお腹で水面を打てば、ありあまる光が砕けて跳ねる。
太陽がはしゃいでるのは微風が誉めてくれたから、いつも、頑張ってるね、って。
生きとし生けるもの全て、日々、無言の感謝を捧げていてもね、
そんな一言が必要な時だって、ある、きっと、ある。
ボウルいっぱいサラダを作って膝を抱えながら食べた。
顎でリズムを取るの、シャクシャクシャキシャキ。
口の周りにドレッシング、鼻の頭にも、
Tシャツの裾にも跳ねた。唇つけて吸っておしまい、
歯に当たるキャベツがきれいに鳴くのだから。
こんな朝があってもいい。
昨日、金平糖の親玉みたいなことばを投げつけてしまった。
舐めてみれば甘かったのかも、でも先に傷がついた。
荒げる声は嫌いだけど、痛いのはもっと嫌いだから、
仕方ない。でも謝らない。まだ折れない。もう嘘は要らない。
どっちへ転がるのか分からない金平糖、小さな女の子がいたらプレゼントしよう。
案外笑って食べてくれるかも、そう、きっかけは単純なこと、
しおれた草に実のなる朝が、ある、きっと、ある。
シャクシャクシャキシャキ、シャクシャクシャキシャキ。
かけすぎたレモン酸っぱい、
ささくれにしみて痛い、
口の中噛んで、剥けて、むき出しになる、内側、
見ないふり、できない、違和感、もう、知ってしまったから。
舌で確かめておしまい、今のところはね、
大丈夫、前へ進んでる、
知っているという事実、昨日とは違う果実、
食べてるんだから、きっと。
こんな朝があってもいい。
ボウルいっぱいサラダを作って膝を抱えながら食べた。
ボウルいっぱいサラダを作って膝を抱えながら食べた。
緑をいっぱい吸い込むんだ、草原にはなかなか行けないから、
光をいっぱい取り込むんだ、風のにおいを感じるんだ、
土に肌で触るんだ、虫のつぶやきを掬うんだ、
小さなものを抱きしめるんだ、
シャクシャクシャキシャキ、シャクシャクシャキシャキ、
届くかより先に叫べるかどうか、
あの空を割って響けるかどうか、
この手で、足で、むき出しの内側で、
泥まみれで、汗まみれで、傷まみれで、涙まみれで、
意地まみれで、卑屈まみれで、弱気まみれで、虚勢まみれで、
いい、それでいい、いい、かな、いい
いい?
シャクシャクシャキシャキ、シャクシャクシャキシャキ、
シャクシャクシャキシャキ、シャクシャクシャキシャキ、
大丈夫、
キャベツがきれいに鳴いている。
・――・ * ・――・ * ・――・ * ・――・