■ 第16回 ソネットを書こう 1
今回は個人的に大ショックなことがありまして、うかうかしてたらせっかく書いたサルレト原稿を削除ってしまいました。それまたショックなのですが、がんばって書きます。前みたいにだらだらにはしませんぞ。今回はなぜかやる気に燃えているのです(ほんまかよ)。
これまでやったことを簡潔に書きますと、まずは日本語リズム、ついで押韻、音の雰囲気と進みまして、しつこいくらいに繰り返しを繰り返し、さらに対句をやり、ついで構成について簡単に触れました。今回から半年くらいのあいだは、これまでやったことの総合的おさらいとして、日本語ソネットに挑戦してみようと思います。
ソネットは、ひとことでいうと14行の押韻詩です。本来英語圏で生まれた定型詩であって、日本語でやるのは無理じゃというひともいます。確かに日本語の押韻は難しいし、英語とまったく違う日本語で英語詩に特有な格の強弱による韻律リズムを持たせるのはたいへんに困難です。ですが、今回はともかく四連に分かれた14行の詩を書いてみましょう。
まずソネットには大きくわけてイギリス式ソネットとイタリア式ソネットというものがあります。イギリス式ソネットの中にはシェイクスピアソネットというものもありますが、行数や連分けはイギリス式とかわりません。そちらは次回の次回くらいに説明します。
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●イギリス式ソネットの例(佐々作品につき特にうまくはないですよ)
「ラフレシアの夜」
生殖器ばかりが巨大化した ラフレシアには 根もなく葉もなく 鮮やかな色彩もありませんが
濃緑の森に裸体を隠し 忠実な蛇を足元に従えて 深紅の実を両手にささげもち 悪臭漂う花弁にくちびるを寄せれば
陽気な蝿が受粉を祝福します たちまちに花は腐敗しますが 生あふれる熱帯雨林のただなかにあって 腐敗は忌むべき現象ではありません
雨のしずくさえ熱い夜 わたしは汗をぬぐわずに眠ります
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●イタリア式ソネットの例(同じく佐々作品)
「リルケたまねぎ」
いちばん外には地味な薄皮 その下には半透明の腐った皮 それら外皮を剥いでゆくとあらわれる 幾重にも重なったものは
白く甘く瑞々しく 人を涙させる しかしそれもまた 皮に過ぎない
たまねぎの中心 筋張って硬くて食えたものでない うすみどりの芽は
しかし誰のための槍でも眠りでもなく あるいはやはり 皮に過ぎないのだ
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というのをぱっとみておわかりのように、イギリス式は4/4/4/2の四連あわせて14行からなり、イタリア式は4/4/3/3の四連あわせて14行からなるところが違います。どこが違うかわかんないってヒトはいませんね??? もしもいたら、上記ふたつの詩の行数をきちんと数えてください。
ものすごく単純に考えれば、どちらも四連に分かれているのですから、それぞれの連がそれぞれ起承転結を構成するということもできます(ほんとはそんな簡単なもんでもないのですが、ひとまずそう考えるとらくちんです)。ソネットは、きっちりしたかたちを持つ詩型であり、たとえ本当のソネットのような韻を踏まずに書いても、かっちりした構成の詩を学ぶにあたってとても勉強になるものであるはずです。
日本語のソネットとして書かれた入手しやすい詩に、谷川俊太郎の「六十二のソネット」というものがあります。書店にも図書館にもあるはずですから、広い意味でのソネットがどんなものか知るためにも読んでみてください。
○課題12 半年後には本格的なソネットが書けることを目標にして、まずはともかく四連に分かれた14行の詩を書いてみましょう。イタリア式でもイギリス式でもかまいません。
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