冂 - 漢字私註
説文解字
邑外謂之郊、郊外謂之野、野外謂之林、林外謂之冂。象遠界也。凡冂之屬皆从冂。古熒切。
- 五・冂部
古文冂从囗、象國邑。
冋或从土。
説文解字注
邑外謂之郊。郊外謂之野。野外謂之林。林外謂之冂。與『〔詩〕魯頌・毛傳』同。邑、國也。歫國百里曰郊。野、郊外也。平土有叢木曰林。皆許說也。『爾雅・釋地』邑外謂之郊、郊外謂之牧、牧外謂之野、野外謂之林、林外謂之坰。多謂之牧牧外五字。依『〔詩・召南〕野有死麇』『〔同・邶風〕燕燕』『〔同・鄘風〕干旄』傳、『〔同・鄭風〕叔于田』箋𣃔之。淺人妄增也。牧、李巡作田。王砅注『素問』作邑外謂之郊。郊外謂之甸。甸外謂之牧。牧外謂之林。林外謂之坰。坰外謂之野。所偁更繆。象遠介也。介各本作界。誤。今正。《八部》曰、介、畫也。像遠所聯亙。一象各分介畫也。古熒切。十一部。凡冂之屬皆从冂。
古文冂。从囗。象國邑。像國邑在介内也。
冋或从土。『詩』『爾雅』皆如此作。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『集韻』涓熒切、音扃。『說文』邑外謂之郊、郊外謂之野、野外謂之林、林外謂之冂。象遠界也。『集韻』古作冋、象國邑也。今文从土作坰。
又『集韻』欽熒切、音褧。遠也。
又『集韻』戸茗切、音迥。空也。
- 部・劃數
- 冂部・三劃
『唐韻』『集韻』𠀤古文坰字。註見土部五畫。又『唐韻』戸頃切『集韻』戸茗切、𠀤音迥。義同。
- 部・劃數
- 土部・五劃
- 古文
- 冋
『唐韻』古螢切『集韻』『韻會』『正韻』涓熒切、𠀤音扃。『爾雅・釋地』林外謂之坰。『詩・魯頌』在坰之野。『左思・吳都賦』目龍川而帶坰。
又地名。『尚書序』湯歸自夏、至于大坰。《註》大坰、未詳所在、當在定陶向亳之閒。『正字通』大坰作大行、非。
又叶葵營切、音瓊。『謝靈運・初去郡詩』理櫂遄還期、遵渚騖修坰。叶上迎平、下明英。
音訓
- 音
- クヱイ(漢) キャウ(呉) 〈『廣韻・下平聲・靑・扃』古螢切〉[jiōng]{gwing1}
- 訓
- さかひ。とほい。むなしい。
解字
白川
境界の象。境界を設ける形で、必ずしも地の遠近に關しない。邊疆の城塞などに冂形の防塁を築くことが多く、のち遠界の意となつたのであらう。
金文に冂を絅衣の絅の意に用ゐ、また冋黃のやうに褐色の玉名に用ゐる。
藤堂
遙か彼方の境界を示す象形字。
のち場所を示す口印を加へ、冋とも書く。
落合
甲骨文に見えるのは亡失字。丙や高の初文で高い建築物の一部として用ゐられてゐるが、單字では欠損片にしか見えず、用義不明。
現用字は、篆文で冋の略體としてつくられた。
漢字多功能字庫
金文は高く出た地面の形に象り、堂の初文(唐蘭)。本義は高堂(補註: 高字條を見るに、寧ろ土臺、堂基と解すべきか。)冂とあなの形に象る凵は對比される。甲骨文、金文の高字は冂に從ひ、土臺の上に建物のある形に象る。『楚辭・招魂』高堂邃宇
、王逸注言所造之室、其堂高顯。
尚、常、嘗、堂など、いづれも冂聲に從ふ。
金文では通假して裳となし、下半身の衣服を表す。
- 大盂鼎
冂(裳)、衣、巿、舄
は、下裳、上衣、蔽膝(古代、朝覲、祭祀の時に裳の上に著けた服飾、膝掛)、鞋子(履物)を指す。 - 復乍父乙尊
冂(裳)、衣、臣、妾、貝
。
金文の冂字は堂に同じく讀み、『説文解字』に採錄する扃と同じく讀む冂字とは同形異字。(補註: 即ち上述の字は現用字とは別字。落合のいふ亡失字と同系か。)
屬性
- 冂
- 別字衝突
- U+5182
- JIS: 1-49-36
- 冋
- U+518B
- JIS: 2-3-10
- 坰
- U+5770
- JIS: 1-15-39
関聯字
冋に從ふ字
漢字私註部別一覽・冋部に蒐める。
其の他
- 冖
- 別字。あるいは冂に作る。