綏 - 漢字私註

説文解字

車中把也。从从妥。
註に徐鍇曰、『禮』升車必正立、執綏所以安也。當从爪从安省。『說文』無妥字。といふ。
説文解字注は第二句を从糸妥聲。とする。
十三糸部

康煕字典

部・劃數
糸部七劃
古文

『廣韻』息遺切『集韻』『韻會』宣隹切『正韻』蘇回切、𠀤音雖。『說文』車中把也。《註》徐鍇曰、『禮』升車必正立執綏、所以安也。『儀禮・士昬禮』壻御婦車授綏。《註》綏、所以引車者。『禮・曲禮』僕人之禮、必授人綏。

又『書・禹貢』五百里綏服。《傳》綏、安也。安服王者之政敎。『詩・周南』福履綏之。《傳》安也。

又『左傳・文十二年』乃皆出戰交綏。《註》古名退軍爲綏。《疏》『司馬法』將軍死綏。舊說綏、却也。

又『荀子・儒效篇』綏綏兮其有文章。《註》安泰之貌。或爲葳蕤之貌。

又州名。『廣韻』春秋時白翟所居、秦幷天下爲上郡、後魏廢郡置州、取綏德縣爲名。

又『集韻』雙隹切、音榱。毿㲤、毛長貌。一曰狐貌。㲤、或作綏。『詩・衞風』有狐綏綏。《傳》匹行貌。

又『集韻』儒佳切、音蕤。緌、或作綏。『詩・大雅』淑旂綏章。《傳》大綏也。《疏》綏者、卽交龍旂竿所建。『禮・王制』諸侯殺則下小綏、大夫殺則止佐車。《註》綏當爲緌。緌、有虞氏之旌旗也。又『明堂位』夏后氏之綏。《註》綏、讀爲冠蕤之蕤。

又『集韻』思累切、音瀡。隋、或作墮。亦作綏。尸所祭肝脊黍稷之屬。『儀禮・士虞禮』不綏祭。《註》事尸之禮、始於綏祭。綏、當爲墮。

又『集韻』呼恚切、音毀。義同。

又『集韻』吐火切、音妥。『禮・曲禮』執天子之器則上衡、國君則平衡、大夫則綏之。《註》綏、讀曰妥。妥之謂下於心。『又』國君綏視。《註》視國君彌高。妥視、謂視止於袷。

又『集韻』通回切、音推。妥、或作綏、安坐也。

音訓・用義

スイ(漢、呉) タ(漢、呉) キ
やすい。やすんずる。たれる。

説文解字の述べるところは、車に乘るときに持つ紐のこと。

解字

白川

形聲。聲符は妥。妥に挼、娞(スイ)の聲がある。妥は女子に上から手を加へ、これを安撫する意。綏安の意に用ゐ、字はまた緌につくる。

説文解字に車中の把るものなりとあり、『論語・鄕黨』に升車、必正立執綏。(車に升るに、必ず正しく立ちて綏を執る。)と見える。『儀禮・士昬禮』に、新郎が新婦を親ら迎へるとき、車上から綏を授ける儀禮がある。

食前に、黍、稷を以て尸(かたしろ)を祭ることを綏祭といひ、キの音で讀む。食前にその一部をお供へすること。(補註: 康煕字典の第八項、第九項も參照のこと。)

藤堂

と音符妥の會意兼形聲。妥はの會意で、いきり立つ女を手で宥めて落ち著かせることを表す。

屬性

U+7D8F
JIS: 1-69-23