虎 - 漢字私註

説文解字

虎

山獸之君。从、虎足象人足。象形。凡虎之屬皆从虎。呼古切。

虎部
𠪳

古文虎。

𪊖

亦古文虎。

説文解字注

虎

山獸之君。

从虍从會意。虎足象人足也。巳上八字、鉉本妄改。張次立復以鉉本改鍇本。惟『韵會』如是。此古本之眞也。从儿、『韵會』作从人。此其誤巳久耳。《儿部》曰、孔子曰在人下。故詰屈。謂人之股腳也。虎之股腳似人。故其字上虍下儿。虍謂其文。儿謂其足也。『說文』龜頭、黽頭似它頭。燕尾似魚尾。兔頭似㲋頭。萈足似兔足。能足、彘足似鹿足。㲋頭似兔、足似鹿。文義相同。儿有其字。故先言从儿而後言虎足象人足。篆體改作虎。則象人足之云不可通。顧氏藹吉乃疑虎下當从爪矣。今正之。凡篆虎字依𣜩體从儿爲是。呼古切。五部。五部與十七部通。故左氏陽虎、『論語』作陽貨。非一名一字也。邢昺、孫奭乃有虎名貨字之說。

凡虎之屬皆从虎。

𠪳

古文虎。

𪊖

亦古文虎。

康煕字典

部・劃數
虍部・二劃
古文
𧇂
𪊖

『唐韻』火古切『集韻』『韻會』火五切、𠀤音滸。『玉篇』惡獸也。『說文』山獸之君、从虍从儿、虎足象人也。『徐鉉註』象形。『易・乾卦』風從虎。『詩・小雅』匪兕匪虎、率彼曠野。『大戴禮』三九二十七主星、星主虎、故虎七月而生。『述異記』虎千年、則牙蛻而角生。

又姓。『廣韻』漢有合浦太守虎旗、其先八元伯虎之後。

又州名、唐有虎州、後避太祖諱攺武州。

又灘名。『水經注』夷水又東逕虎灘。

又山名。『吳越春秋』吳王葬閶門外、金玉精上浮爲白虎、名虎丘。

又便器名。『西京雜記』漢朝以玉爲虎子、以爲便器。

又與琥通。『吳志・裴松之註』虞翻曰、僕聞虎魄不取腐芥。

『六書正譌』象虎踞而回顧之形。

『篇海』儿、古人字、虎足象人、故从人。从几、誤。

『干祿字書』通作𧆞

部・劃數
虍部六劃

『集韻』古作虝。註見部首。

部・劃數
虍部・八劃

『玉篇』古文字。註見部首。

部・劃數
鹿部四劃

『字彙補』古文字。註詳虍部二畫。『集韻』作𠪳

集韻

四聲・韻・小韻
上聲・姥第十・虎
反切
火五切

火五切。

『說文』山獸之君。

亦姓。

古作𠪳𪊖。

文十六。

異體字

或體。

音訓

コ(漢) 〈『廣韻・上聲』呼古切〉[hǔ]{fu2}
とら

解字

白川

象形。

『説文解字』に虎足は人足に象るとあるが、その部分は脚、尾の形。

楚では於兔といひ、青銅器に見える饕餮の文樣は、その展開文であるらしく、語としても關係があるかと思はれる。

藤堂

象形。虎の全形を描いたもの。

落合

甲骨文は虎の象形。虎の爪牙、あるいは胴體の縞模樣が表現されてゐる。異體字には胴の部分を簡略化した形や、耳を強調した形もある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. とら。狩獵の對象として記される。《甲骨綴合集》377・後半驗辭壬子卜貞、田[宀午]、往來亡災。王占曰、吉。茲御、獲兕一虎一狐七。
  2. 祭祀名。《合集》27339乙未、其⿱隹示虎于父甲、盉。
  3. 厄災の意味。詳細不明。《合集》11018貞、我馬有虎、惟禍。
  4. 人名。第一期(武丁代)。倉の領主で、倉侯虎と呼ばれる。恐らく倉侯豹と同一人物。《合集》6554貞、今者…從倉侯虎伐蒙方、受有祐。
  5. 地名またはその長。《屯南》4140田祟𭓠虎、亡災。

字の要素としては、動物の虎のほか、派生義で災厄を表す字にも用ゐられる。

古文に下部を人の形に變へたものがあり、これが現用字のの部分に當たる。

別字?

甲骨文に虎面を被つた人の姿(あるいはの會意字)があり、恐らく別字だが、虎と隸定される。地名またはその長を表す。《東京大學東洋文化研究所藏甲骨文字・圖版篇》379庚寅卜㱿貞、呼虎伐猶。

漢字多功能字庫

甲骨文、金文は虎の形で、身の線は虎の縞模樣。本義は虎。

虎の形を象る。甲骨文の上部は虎の頭、下部は虎の身、足、尾。戰國文字では虎の身、足、爪、尾を簡略化して人の形とする。虎字はには從はず、儿は虎の足や尾の形の變形したもの。

甲骨文、金文には他に字があり、虎の頭部を指す。虎も虍も他の漢字の要素となり、古文字においては虍よりも虎が廣く使用される。

卜辭での用義は次のとほり。

虎は生まれつき勇猛であるから、虎字は多く勇猛の義に用ゐる。『漢書・趙充國辛慶忌傳』漢命虎臣、惟後將軍、整我六師、是討是震。「虎臣」は侍衞の臣で、征戰に參與し、虎の如き勇猛により名を得る。

屬性

U+864E
JIS: 1-24-55
常用漢字(平成22年追加)
U+865D
JIS X 0212: 58-31
𧇂
U+271C2
𪊖
U+2A296
𠪳
U+20AB3
𧆞
U+2719E

関聯字

虎に從ふ字を漢字私註部別一覽・虎部に蒐める。