笑 - 漢字私註
説文解字
此字本闕。臣鉉等案、孫愐『唐韻』引『說文』云、「喜也。从竹从犬。」而不述其義。今俗皆从犬。又案、李陽冰刊定『說文』从竹从夭、義云、竹得風、其體夭屈如人之笑。未知其審。私妙切。
- 五・竹部
説文解字注
喜也。从竹从犬。徐鼎臣說、孫愐『唐韵』引『說文』云、𥬇、喜也。从竹从犬。而不述其義。攷孫愐『唐韵』序云、仍篆𣜩石經勒存正體。幸不譏煩。葢『唐韵』每字皆勒『說文』篆體。此字之从竹犬。孫親見其然。是以唐人無不从犬作者。『干祿字書』云、咲通、𥬇正。『五經文字』力尊『說文』者也。亦作𥬇喜也。从竹下犬。『玉篇・竹部』亦作𥬇。『廣韵』因『唐韵』之舊亦作𥬇。此本無可疑者。自唐玄度『九經字㨾』始先笑後𥬇。引楊承慶『字統』異說云从竹从夭。竹爲樂器。君子樂然後笑。『字統』每與『說文』乖異。見玄應書。葢楊氏求从犬之故不得。是用改夭形聲。唐氏從之。李陽冰遂云竹得風。其體夭屈如人之笑。自後徐楚金缺此篆。鼎臣竟改『說文』𥬇作笑。而『集韵』『類篇』乃有笑無𥬇。宋以後經籍無𥬇字矣。今以顧野王、孫愐、顏元孫、張參爲據。復其正始。或問曰、从犬可得其說乎、曰从竹之義且不敢𡚶言、況从犬乎。聞疑載疑可也。假云必不宐从犬。則哭又何以从犬乎。哭之獄省聲乃亦强作解事者爲之也。詳哭下。私妙切。二部。○又按宋初『說文』本無𥬇。鉉增之。十九文之一也。孫愐但从竹从犬。其本在《竹部》、抑在《犬部》。鉉不能知。姑綴於竹末。今依之。恐有未協。凖哭从犬求之。𥬇或本在《犬部》。而从竹部之字之省聲。未可知也。
康煕字典
- 部・劃數
- 竹部三劃
- 古文
- 咲
- 𠇄
『廣韻』私妙切『集韻』『韻會』仙妙切『正韻』蘇弔切、𠀤音肖。『廣韻』欣也、喜也。『增韻』喜而解顏啓齒也。又嗤也、哂也。『易・萃卦』一握爲笑。『詩・邶風』顧我則笑。『毛傳』侮之也。『禮・曲禮』父母有疾、笑不至矧。《註》齒本曰矧、大笑則見。『左傳・哀二十年』吳王曰、溺人必笑。『論語』夫子莞爾而笑。《註》小笑貌。
又獸名。『廣東新語』人熊、一名山笑。
又『韻補』思邀切。『詩・大雅』勿以爲笑、叶上囂、下蕘。『淮南子・汜論訓』不殺黃口、不獲二毛、于古爲義、于今爲笑。『古逸詩・趙童謠』趙爲號、秦爲笑。以爲不信、視地上生毛。
又入宥韻、音秀。『江總詩』玉臉含啼還自笑、若使琴心一曲奏。
或作咲。『前漢・揚雄傳』樵夫咲之。
亦省作关。『前漢・薛宣傳』一关相樂。
- 部・劃數
- 口部六劃
- 部・劃數
- 八部四劃
『集韻』笑古作𠇄。『前漢・谷永傳』罷歸倡優之𠇄。餘詳竹部四畫。
『正韻』亦作咲。
- 部・劃數
- 口部十劃
『廣韻』俗笑字。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 去聲・𥬇・𥬇
- 反切
- 私妙切
欣也。喜也。
亦作笑。
私妙切。五。
- 卷・韻・小韻
- 去聲・𥬇・𥬇
- 反切
- 私妙切
俗。
嚴密には𥬇に從ふ形に作る。
音訓・用義
- 反切
- 『廣韻・去聲・𥬇・𥬇』私妙切
- 官話
- xiào
- 粤語
- siu3
- 日本語音
- セウ(漢、呉)
- 訓
- わらふ。ゑむ。よろこぶ。
本邦では咲を花が咲く意に用ゐる。
解字
白川
笑
象形。巫女が手を擧げ、首を傾けて舞ふ形。若も巫女が兩手を翳して舞ふ形で、その前に祝詞の器を置く。兩字の構造は近く、艸、竹は兩手の形。
字はもと𠇄(关)、咲に作り、『漢書・敍傳』に談𠇄
とあり、𠇄は笑の初文。
『説文解字』新附に笑を錄し、竹と犬に從ふとする舊説や、竹と夭に從ふとする李陽冰の説を記してゐる。
夭は夭屈して巫女が舞ふ形。上部は翳した手の形。神意をやはらげるために、「笑ひゑらぐ」動作をすることをいふ。
咲
形聲。聲符は𠇄(关)。
『説文解字』新附に笑を錄し、竹夭に從つて、竹葉の風に靡くさまとする説を記してゐるが、もと若と同じく、巫女が手を翳して歌舞する形。ゑらぎ笑ふことが、神を樂しませる方法であつた。𠇄はその略形と見るべき字。
咲は笑の古文とされるが、古い字書に見えず、李義山の『雜纂』に未だ語らざるに先づ咲ふ
ものを、かたはらいたきもの
とする一條がある。
「花咲く」は、古くは「花開く」「花披く」といひ、『色葉字類抄』(補註: 平安末期成立)にも「さく」といふ訓はなほ見えない。
藤堂
笑は竹と夭の會意。夭は細くしなやかな人。笑はもと細い竹のこと。
㗛は口と音符笑の會意兼形聲。口を細く窄めて、ほほと笑ふこと。これが正字。㗛を誤つて咲と書き、また㗛を略して笑を用ゐる。
落合
『漢字字形史小字典』㚔部に、幸の篆文の上部の夭を犬から變はつたものとし、笑と同樣の經緯によるものと説く。
漢字多功能字庫
笑は竹と夭に從ふ。本義は喜悦により顏を綻ばせ、あるいは發聲すること。笑は古文字では艸と犬に從ひ、後に小篆は變形して竹と犬に從ふ。唐の李陽冰が刊定した『説文解字』で竹と夭に從ふ形に改められ、今日の笑字のもととなる。『增韻・笑韻』笑、喜而解顏啟齒也。
典籍に本義に用ゐる。
- 『鄧析子・無厚』
體痛者口不能不呼、心悅者顏不能不笑。
- 晉・郭璞〈遊仙詩〉
靈妃顧我笑、粲然啟玉齒。
簡帛文字でも本義に用ゐる。
- 《馬王堆・老子乙本卷前古佚書・稱》第152行
實穀不華、至言不飾、至樂不笑。
また轉じて欣羨(非常に羨ましがること)、喜愛(好む、好感を持つこと)の意。
- 唐・孟郊〈雪〉
意勸莫笑雪、笑雪貧為災。
- 宋・辛棄疾〈鷓鴣天・鄭守厚卿席上謝余伯山〉
君家兄弟真堪笑、箇箇能修五鳳樓。
また嘲り笑ふことを表す。
- 『孟子・梁惠王上』
以五十步笑百步、則何如。
- 『戰國策・齊策五』
然而智伯卒身死國亡、為天下笑者、何謂也。
また可笑しいことを表す。
- 唐・韓愈『順宗實錄三』
百姓苦之、遠近以為笑。
あるいは敬辭に用ゐる。
- 元・趙孟頫〈與友人書〉
以表微意、伏冀笑領。
屬性
- 笑
- U+7B11
- JIS: 1-30-48
- 當用漢字・常用漢字
- 咲
- U+54B2
- JIS: 1-26-73
- 當用漢字・常用漢字
- 𠇄
- U+201C4
- 关
- U+5173
- JIS: 2-3-8
- 㗛
- U+35DB
- 𥬇
- U+25B07