冠 - 漢字私註
説文解字
絭也。所以絭髮、弁冕之緫名也。从冂从元、元亦聲。冠有法制、从寸。徐鍇曰、取其在首、故从元。古丸切。
- 七・冖部
説文解字注
絭也。曡韵爲訓。所㠯絭髮。絭者、纕臂繩之名。所㠯約束褎者也。冠以約束髮。故曰絭髮。引伸爲凡覆葢之偁。弁冕之總名也。析言之冕弁冠三者異制。渾言之則冕弁亦冠也。从冖元。會意。元猶首也。元亦聲。古丸切。十四部。冠有法制。謂尊卑異服。故从寸。古凡法度之字多从寸者。
康煕字典
- 部・劃數
- 冖部・七劃
『唐韻』『集韻』『韻會』古丸切『正韻』沽歡切、𠀤音官。『說文』絭也、所以絭髮。从冖元。冠有法制、故从寸。《徐曰》取其在首、故从元。古亦謂冠爲元服。『白虎通』冠者、卷也。卷持其髮也。『釋名』冠、貫也、所以貫韜髮也。『後漢・輿服志』上古穴居野處、衣毛冒皮。後世聖人見鳥獸有冠角𩑞胡、遂制冠冕纓緌。又姓。『風俗通』古者鶡冠子之後。
又『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤古玩切、官去聲。『禮・曲禮』二十曰弱冠。『冠儀』冠者、禮之始也。故聖王重冠。『白虎通』男子幼、娶必冠。『韻會』男子二十加冠曰冠。
又爲衆之首曰冠。『前漢・魏相丙吉傳贊』高祖開基、蕭曹爲冠。『史記・灌夫傳』夫名冠三軍。
又姓。『韻會』列仙傳有仙人冠先。
又叶俱倫切、音麇。『張紘・枕箴』瓌材允麗、惟淑惟珍。安安文枕、式彼弁冠。
又『韻補』叶居員切、眷平聲。『劉歆・孟母贊』子學不進、斷機示焉。子遂成德、爲當世冠。
又叶扃縣切、音睊。『蘇轍・燕山詩』丹子號無策、亦數游俠冠。玉帛非足云、女子罹蹈踐。
音訓・用義
- 音
- (1) クヮン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・桓・官』古丸切〉[guān]{gun1/gwun1}
- (2) クヮン(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・換・貫』古玩切〉[guàn]{gun3/gwun3}
- 訓
- (1) かんむり
音(2)に讀んで、冠を被ること、成年に達すること(例: 弱冠)、衆の頭(例: 冠軍)の意に用ゐる。
解字
白川
冖と元と寸の會意。また完と寸に從ふと見てもよい。完は廟中で儀禮を行ふ意であらう。結髮加冠のことならば元服。
『説文解字』に絭なり
と疊韻を以て訓じ、髮を絭む所以なり。弁冕の總名なり。冂に從ひ元に從ふ。元は亦聲なり。冠に法制有り。寸に從ふ。
と、寸を法制の意に解するが、加冠の形。また字を冂に從ふとするが、完、寇の字形との関聯からみても、廟屋の象に從ふべし。
字は養育の儀禮で字養の意、冠は加冠元服の意で、その儀禮はすべて廟中で行はれた。
藤堂
冖(被る)と寸(手)と音符元(丸い頭)の會意兼形聲。頭の周りをまるく取り圍む冠のこと。まるい冠を手で被ることを示す。
落合
【補註】以下、漢字多功能字庫が冠の甲骨文とする字についての落合の解説。
會意。今、丁、人に從ふ(補註: ⿱亼兄に作る)。四角形の丁と人とを合はせて兄と隸定されるが、親族呼稱の兄とは別字。地名としてのみ用ゐられてをり、字源は明らかではない。
今を省いた字形も地方領主としての用法であり、恐らく略體。(補註: 漢字多功能字庫は、この字を元の甲骨文とする。)
甲骨文では地名またはその長を表す。領主は⿱亼兄伯とも言ふ。《合集》6947己未卜㱿、勿令⿱亼兄往沚。
漢字多功能字庫
甲骨文は冃と元に從ひ、元亦聲。冃は帽子に象る。元は人の形に象り、頭部を強調する。全字で人が帽子を戴くの意と解く。戰國竹簡ではあるいは元に從はず兀に從ふ。元と兀は古くは一字であつた(林義光)。小篆は冖と元と寸に從ふ。寸は手の形に象り、冖は帽子に象る。(全字で)手で帽子を人の頭上に被せる形に象る(林義光)。『孟子・滕文公上』許子冠乎、曰、冠。
【補註】漢字多功能字庫が冠の甲骨文とする字を、落合は亡失字とする。
冠の本義は帽子。雞冠、花冠、樹冠のやうに形狀が帽子に似るものをまた冠といふ。帽子を戴くことをまた冠といふ。古くは男子は二十歲で冠禮を行ひ、加冠は既に成年であることの象徵である。
帽子は頭部を覆ふので、冠にはまた覆ふの意を有する。『文選・張衡・東京賦』冠南山
薛綜注冠、覆也。
帽子は頭上に戴くものであるから、冠にはまた高出(上回る、拔きん出る)の意を有する。「冠軍」は、最初は諸軍の上に超越することを指し、後には廣く首位者をいふ。『漢書・項籍傳』號卿子冠軍
顏師古注冠軍、言其在諸軍之上。
甲骨文では人名に用ゐる。《合集》6947正令冠往洗。
は、冠に命じて洗に行かしむの意。
戰國竹簡では本義に用ゐる。《郭店楚簡・唐虞之道》簡25-26古者聖人廿而冠
。
戰國秦簡では冠字を寇に作る。《睡虎地秦簡・日書乙種》簡189甲乙夢被黑裘衣寇(冠)
。寇は冠の誤字たるべく、帽子を表す。
『説文解字』冠、絭也。所以絭髮、弁冕之總名也。(後略)
《段注》冠以約束髮、故曰絭髮、引伸為凡覆蓋之偁。
徐鍇『說文解字繫傳』冠、取其在首、故從元、故謂冠為元服。
屬性
- 冠
- U+51A0
- JIS: 1-20-7
- 當用漢字・常用漢字