漢字私註 凡例
漢字私註の凡例。
構成
字毎に文書を作成する。同字異體は一文書に纏めようと思ふが、同字とする基準を嚴密に決めるのは難しいので、臨機應變、融通無碍に判斷する。
次の事項を揭示する。
- 『説文解字』の字釋
- 『康煕字典』の字釋
- 『廣韻』『集韻』の字釋
- 異體字
- 典籍
- 音訓義
- 解字
- 屬性
- 關聯字
各項目に於いて、資料の引用中の〔〕内は、文書作成者による註記である。出典などの補足を單に追記するか、別途の記述への參照情報を示す。
『説文解字』の字釋
本字、重文は、篆文を畫像で示すか、單に該當する字のうち一つを揭げる。
- 篆文の畫像は各資料を參考に作成する。
- 該當字が複數ある場合、篆文の畫像を示すにせよ、一字で代表するにせよ、その後に該當する字を列記する場合がある。
『説文解字』の字釋は、一往、説文解字@Wikisourceに據るが、適宜修正する。
徐氏の註、反切、重文及びその字釋は、一往、http://www.shuowen.org/に據る。
本字の釋の後に、配屬の篇・部を示す。
- 重文を本字とは別の文書に揭げる場合、重文を扱ふ文書では、重文の釋の前に本字、釋の後に屬する篇・部を示す。
- 新附字については、篇・部と倂せて新附字である旨を記す。
重出の字については、いづれの字釋も揭示する。
その他適宜註記を施す。
『説文解字注』の字釋及び註記
續けて『説文解字注』の釋及び註を揭示する。
- 揭げる篆文は必ずしも『説文解字注』にある形と同一ではない。とはいへ、字釋註記の文言を理解するために必要な場合には、なるべく『説文解字注』にある形を示すやう努める。
- 字釋に『説文解字』(大徐本)との異同がなく、註記が反切と『六書音均表』の部の表示に限られる場合は、その旨を記して省略する。
- 刪去字はその旨を記す。
- ほか、『説文解字』(大徐本)との異同を適宜記す。
- 『説文解字注』が增補した字については、篇・部を示す。
- 新附字は扱はない。そもそも『説文解字注』で扱はれてゐない。
『康煕字典』の字釋
最初にGlyphWikiから字の形を示し、部、劃數、古文を示す。
『康煕字典』の字釋は、中國哲學書電子化計劃に據るが、適宜修正する。
別文書に分けるまでもない異體字の字釋は、同じ文書に倂せて揭示する。
避諱のための玄字の缺劃(𤣥)を再現する必要はないので、見附けたものは訂正する。
其の他適宜註記を施す。
『廣韻』『集韻』の字釋
當分の間、次の二形態が混在する。
- 『廣韻』『集韻』の字釋の項目を獨立して立てるもの。所載の卷、韻、小韻と反切を示し、見出し字を揭げ、字釋を引用する。
- 字釋を音訓義の項目に引用する。見出し字が『康煕字典』で見出し字に採らざる形の場合、異體字の項に出所を附して示す。
『廣韻』のテキストは中國哲學書電子化計劃に據るが、適宜修正する。
『集韻』のテキストは、文書作成者が早稻田大學古典籍綜合データベース所藏本(川東官舎、光緒2(1876)年)を底とし、あるいは他の版本を倂せて參照しつつ記述したものと、中國哲學書電子化計劃に據るものとが混在する。いづれにせよ適宜修正する。
異體字
字書の引用に伴ひ示した見出し字の外の字形を、適宜擧げる。
典籍
特に取り上げるべき場合、典籍を引用し、適宜註記する。音訓義の項で引用する場合もある。
音訓義
字音、字訓、字義を示す。音義の使ひ分けを示すべく、異音を分けることとし、各音ごとに、以下を示す。
- 反切及びその出典。簡略的に〈〉内に示すこともある。
- 聲母。從前は『五音集韻』に據る。今後は以下の何れか。
- 幫滂並明 非敷奉微
- 端透定泥 知徹澄孃
- 見溪羣疑
- 精清從心從 莊初崇生俟 章昌船書常
- 影曉匣云羊
- 來 日
- 開合。
- 等呼。從前は『五音集韻』に據る。今後は以下のとほり記す。
- 一等韻 → 一
- 二等韻 → 二
- 四等韻 → 四
- 三等韻
- 假二等(莊組): 假二
- 假四等(精組、端組、羊母): 假四
- 重紐韻三等(唇牙音、影母、曉母): 重紐三
- 重紐韻四等(唇牙音、影母、曉母): 重紐四
- 其れ以外: 三
- 推定中古音。平山久雄『中古音講義』に從ひ文書作成者が導出。
- 官話拼音。『学研新漢和大辞典』、汉典、古今文字集成に據る。簡略的に[]内に示すこともある。
- 粤語拼音。粵音資料集叢を基本資料とし、漢語多功能字庫を倂せて參照する。簡略的に{}内に示すこともある。粤語を示すのは、參照できる資料があり、官話では消失した入聲が殘存するため。
- 日本語音。『学研新漢和大字典』に據るが、參照できない場合は、他の資料に據る。
- 後置の(漢)は漢音、(呉)は呉音、(唐)は唐音、(慣)は慣用音をそれぞれ表す。資料にそれらの別が示されてゐない場合には附記しない。
- (推)を後置するものは、資料に見える音ではなく、文書作成者が同音字や反切から推定する漢音を便宜的に示すものである。素人の仕業なので當てにされても困る。
- 訓。原則的には複數の資料で確認できる訓を示す。古訓を採る場合もある。國訓は他と分けて示す。
- 義。訓を揭げるだけでは示し難い用義などを記す。固有名詞、音譯語、通用の表示なども含み、用例を引く場合もある。
- 釋。『廣韻』、『集韻』、場合により其の他の字書を引用する。また『康煕字典』引用の該當箇所へのリンクを張る。
其の他適宜註記を施す。
解字
漢字の成り立ち及び周邊情報について、諸説を倂記する。ある程度纏める場合もあれば、主意取り難くともかく寫す場合もある。
場合により、諸説を纏めたり、私見を示したりする。
漢語文獻を基にした部分については、文書作成者の漢語讀解能力の拙劣なるによる過誤が含まれる虞を排除し難く、當てにされても困る。
日本語文獻を基にした部分についても(くどいので以下省略、察せよ)。
屬性
取り上げた字について、文字コードや漢字表揭載の狀況を示す。單にJISとして示してゐるのは、JIS X 0213の面區點コードである。
關聯字
関聯する字を示したり、關連性について述べたりする。
また、似た形の別字についても、示したり述べたりする。
部別一覽の構成
分類方針に基づいて漢字を類部枝に分類し、一覽を作る。部毎に、次を示す。
- 分枝
- 枝の分かれ方をリスト形式で示す。別部に配した枝についてはその部も示す。
- 枝とはせず、別に部を立てたものについても、上に準ずる。
- 關聯部
- 關聯のある部を示す。
- 概説
- 部や部首字について簡單に説明する。
- 一覽
- 屬する字を枝毎に示す。
枝毎に次を示す。
- 概説
- 枝やその代表字について簡單に説明する。
- 一覽
- 屬する字を示し、字毎の文書へのリンクを張る。
- 一つの字について複數の字體を示すときは、間隔を置かずに羅列する。
- 子となるべき部や枝があるときは、その代表字に*を後置し、その部や枝の一覽へのリンクを張る。
用字
CJK互換漢字は、字形の區別のために特に必要な場合に限つて用ゐる。
JIS X 0213:2004に採錄されてゐない字は、JIS X 0213:2004に採錄されてゐる異體字で代替する場合がある。
閲覽環境によつて表示されない字があるかも知れないが、環境が惡いことにしておく。(PCなら)花園明朝を入れたらまあまあどうにかなる筈。
小書きのヰ、ヱ(𛅤、𛅥)及びCJK統合漢字擴張G(𰀁など)、同H(𱍑など)は、GlyphWikiで生成したフォントをいはゆるウェブフォントとしてぶち込むやうにしたので、對應してゐる環境なら見られるやうになつてゐる筈。目の前のPCでは、MS Edge、Chrome、Firefoxのいづれも意圖通り表示してゐる。
文字コードの振られてゐない字は、次のいづれかの方法で示すこととする。
- 單に偏旁などを[]内に列記する。
- Unicodeの漢字構成記述文字(Ideographic Description Character; jawp:漢字記述言語を參照のこと)を用ゐる。[]で括る場合もある。
- Glyphwikiに登錄されたグリフを用ゐて示す。
- 字形の説明のために字の一部の形を抽出して示してゐる場合などは、CJKの筆劃を用ゐるか、形の類似する記號で代用する。
- 畫像を作成して示す。
品質
この私註はあくまで素人が個人的な興味を充足するために作成するものであるから、正確性、完全性は保證しない。
參考文獻・參照資料
全般
- 早稻田大學古典籍綜合データベース
- 中國哲學書電子化計劃
- 漢典
- 古今文字集成
- KO字源
- 白川静『字通』(平凡社、1996年)
- 藤堂明保外編『漢字源』改訂新版 (学習研究社、2002年)
- 藤堂明保、加納喜光編『学研新漢和大辞典』(学習研究社、2005年)
字形表示關係
『説文解字』
- Wikisource
- http://www.shuowen.org/
- 漢典各字條
- 『説文解字』@早稻田大DB
- 『説文解字注』@早稻田大DB
- 説文解字注データ@漢字データベースプロジェクト
- 森賀一惠『訓讀説文解字注(四)』、富山大學人文學部紀要第70號、pp. 155-173、2019年2月
音韻關係
中古音總論
- 音韻学入門~中古音篇~(PDF)(中村雅之著、1998年初出の由)
- 平山久雄『中古音講義』(汲古書店、2022年)
- 太田斎『韻書と等韻図I』(神戸市外国語大学研究叢書、第52號、 pp. 1-258、2013年、web)
- 太田斎『韻書と等韻図II(完)』(神戸市外国語大学外国学研究、第92卷、pp. 145-246、2016年、web)
『廣韻』
『集韻』
- 中國哲學書電子化計劃(所據『欽定四庫全書』本)
- 早稻田大DB所藏本(川東官舎、光緒2年(1876年)版)
- 方成珪『集韻考正』早稻田大DB所藏本(光緒5年(1879年)跋)
『韻鏡』
- 早稻田大DB所藏本
- 龍宇純『韻鏡校注』(藝文印書館、中華民國65年、第五版)
- 陳廣忠『韻鏡通釋』(上海辭書出版社、2003年)
- 文雄『磨光韻鏡』延享元年版
- 早稻田大DB所藏本
- 文雄著・林史典解説『磨光韻鏡』(勉誠社文庫90、昭和56年、底本は國立國會圖書館藏)
現代漢語音及び拼音表記
- 漢典各字條
- 古今文字集成各字條
- 粵音資料集叢
- 藤堂外『学研新漢和大字典』
解字關係
- 白川『字通』: 解字項に「白川」として參照。
- 藤堂外『漢字源』『学研新漢和大辞典』: 解字項に「藤堂」として參照。
- 以下を解字項に「落合」として參照。
- 落合淳思『甲骨文字小辞典』(筑摩選書、2011年)
- 落合淳思『漢字の成り立ち』(筑摩選書、2014年)
- 落合淳思『甲骨文字辞典』(朋友書店、2016年)
- 落合淳思『漢字字形史小字典』(東方書店、2019年)
- 落合淳思『漢字の構造』(中公選書、2020年)
- 落合淳思『漢字字形史字典【教育漢字対応版】』(東方書店、2022年)
- 漢語多功能字庫
- 季旭昇撰『說文新證』(藝文印書館、中華民國103年、二版): 解字項に「季旭昇」として參照。
- 徐超『古漢字通解500例』(中華書局、2022年、第1版第2次印刷): 解字項に「徐超」として參照。
以上の外、各文書で個別に參照し、當該文書で出所を示すものがある。