蘭の会11月詩集「誕生」 Copylight(c)蘭の会
「鳥の飛ぶ空に花は咲かない」 記憶 桃色雲の上で 生まれない リバース いのち 誕生 誕生日 生まれ変わる さかなのはなし 現 象 なゆた うぶごえ 神田駿河台 |
0007 愛萌
「鳥の飛ぶ空に花は咲かない」
|
0023 ナツノ
http://www5.plala.or.jp/natuno/brunette/brunette_top.htm 記憶
ほんのわずかの時間旅行なのかもしれない。
|
0036 野中ひまり
http://hccweb1.bai.ne.jp/natural/ 桃色雲の上で
解き放たれた
|
0038 純理愛。
http://koukotu.tripod.co.jp/ 生まれない
あたしはきっと生まれていない
|
0059 汐見ハル
http://www3.to/moonshine-world リバース
人生はいくらでもやりなおしがきく、
|
0064 紺
いのち
渦巻くトンネルで
|
0077 ちほ
誕生
|
0079 鈴木倫子
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1714 誕生日
誕生日は年に一度
|
0082 英水
生まれ変わる
夜の海 深く沈んだ泳げない魚
|
0083 栗田小雪
さかなのはなし
パパが投げたおほしさまをその子供がひろって
|
0085 朱雀
http://homepage3.nifty.com/complass/index.htm 現 象
払暁 脳裡にする声は
|
000a 宮前のん
http://plaza5.mbn.or.jp/~mae_nobuko/ なゆた
|
000b 佐々宝砂
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sasah/ うぶごえ
今回わたくし佐々宝砂は全く詩が書けないのである。だのに、締め切りはとっくに過ぎている、どーしろってのだあ。こまった。まことに困った。ああ。と嘆きながらも実のところこれは計算づくで書いているレトリックなのであって、もうここまで書けばこの詩は完成したよーなもんなのだ、と威張って言えたらいいのだが、もちろん嘘である。こんなこと書いてて詩になるんか。おーい。誰か詩になってると言ってくれ。ところでこの詩のタイトルが「うぶごえ」なのは、その昔SFマガジンで読んだ今日泊亜蘭の『うぶごえ』っていうSF短編が記憶に残ってて、ああいうの書けたらいいなあと思ってつけたからなんだよね。この調子じゃどう足掻いても「うぶごえ」のタイトルにふさわしい詩になりそうにないのは承知だがそれはそれでおいといて、はや九十の齢を越えてなお意気盛んなドラキュラ的作家である今日泊氏の『うぶごえ』は、宇宙船内の無重力を利用した無痛分娩で一儲けしようとたくらんだチンピラを描いて、思いがけず感動的な結末に至る、ほかに類をみない傑作SFだった。遠い未来、地球から遠く離れた宇宙のどこかで、でもやっぱりそこに人間がいるかぎり、出産があり誕生があり、ドラマがあり、ついでに言えばチンピラやくざも存在しているだろう。でもそれは、人間ってな未来永劫かわらないものだということじゃない。人間は変わる。人類は変わる。きっと変わる。宇宙船のなかで響く赤ん坊のうぶごえと、きょう地球で響き渡った赤ん坊のうぶごえが、全く同じに響くわけがないじゃないか。違うんだ。昨日と今日とじゃ違うんだ。とは思うものの実感がわかない。というのも、私はうぶごえなるものをいちども耳にしたことがないのだ。私は助産婦ではないし、他人の出産に立ち会わせてもらえる機会もないし、うぶごえなんて特殊なもの、いったいどこでどうやって聞きゃいいのだ。いったいうぶごえとはどんなものなのだ。そこらへんで赤ん坊が泣いている、あの泣き声と、どこがどう違うのだろうか、わからない、いくら考えてもわからない。ひとつだったものがふたつになったから、それで泣くのか。それともふたりでいたのがひとりになってしまったから泣くのか。そうではなくてただ単純にはじめての呼吸が苦しいのか。なぜだ。なぜ泣くんだよ赤ん坊よ。なぜだよ。わからないよ。教えてくれよ。疑問符の大群が浮かぶ私の脳裏に、遠い遠い声が聞こえる。それはほんとうに遠い遠い声だ。遠い遠いうぶごえだ。耳を澄ましても、聞こえるはずのない声だ、しかし私はそれを確かに聞いたはずだ。だってそれは私の声なのだから。この私が発した、この私自身のうぶごえなのだから。私は私に尋ねなくてはならない。おまえはなぜ泣くのだ。苦しいのか。さびしいのか。嬉しいのか。なぜだ。なぜ泣くのだ。わからない。わからない。遠い遠い声が、遠くで泣いている。まるで自分自身よりも大きな声で。身も世もないみたいに、この世の中で、この身体で。
|
000c 芳賀 梨花子
http://rikako.vivian.jp/hej+truelove/ 神田駿河台
大きなお腹を抱えて
|
[ご注意]
著作権は作者に帰属する
無断転載お断り
詳細は蘭の会にお問い合わせください
⇒蘭の会へ連絡する
(編集 遠野青嵐/佐々宝砂)
(ページデザイン/CG加工 芳賀梨花子)