0015 丘梨衣菜
サイクル
歩道橋のてっぺんで夕日に背を向けて 暗くなるまで車が流れるのを見ていても 大丈夫
病んでない べつに まだ飛び込んだりしない 冷蔵庫にはプリン
派手にころんだ 乾ききらないアスファルト 保護色のコートはどろどろ でも心配いらない 冷蔵庫には
留守電のライト 点滅と一緒に脈打つ心臓 一件録音 「今日も私は一人ぼっち?」 ピーッ 冷蔵庫にはプリンが
スプーンをさがす手が震える 歩き疲れた足は根もはえている 樹齢35年もうすぐ枯れる ダムは決壊し 洪水でマスカラは流される
買い込んでしまう 賞味期限の切れたプリン 目を凝らしにぎり締めて 襲い来る冷気の前で想像する 苦いカラメルの味
夜に浮かぶ白い影と息 青信号から赤信号から青信号から赤信号 横断歩道の端っこ じっと立って車のスピード何度確かめても
大丈夫
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