草木張り月…kisaragi
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九鬼ゑ女
月はおぼろで
うさぎがみえない
今夜も逢いびきはおながれか
星もあっという間に飛び散って
願い事が言えなかった
だから明日も明後日も
あたしは ひとり
あんまり辛くて鼻水垂れた
白く濁ったつららができた
舌を這わせば あの人の味
長く垂れた雫のさきっちょ
草木張り月が
春を抱えてちょこんと止まった
凍える指で暦をなぞって
試しすがめつ言葉を放つ
ひいふうみいよおいつむうななやあ…
いくら数えても モノタリナイ
おかしいなぁと首傾げ
梅の花一輪もぎ取って
恋占いでもしてみよか
すききらいすききらいすききらい…
と、春が頭を持ち上げる
春は立てども
ひとりぼっちじゃ モノタリナイ
立春のユウウツ
ナツノ
どうして やってくるの
午後4時の ユウウツ
空の色 オレンジ色を 帯びてきて
あたりは 湿り気 帯びてきて
ユウウツ
梅の枝のシジュウカラ
短い羽を ひるがえす 朝
つきまとう シミのような 不安
一日は きっと 萎えゆくだろう
食卓には 4チャンネルの 明るい声
星座の順位に 大声で笑う
アーリースプリング
刺繍の文字に ココロはずんだ
午前10時の キラキラな 光は
いま 重く 肩に
早々に 雨戸を閉めて
外界に さようなら
ひとつ ふたつ 立春のユウウツを
刺繍針で つつく
夜風が少し まるくなる
同じような明日は また やってくる
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あとどれくらい
ひあみ珠子
明け方
眠りこけている私の布団に
いつの間にかもぐりこんできてる
肉まん
眠ったままでも
つぶさないように寝返りをうつのは
もうほとんど特技
カーテンから
朝日の予兆が漂い出したころ
両手でそっと
肉まんを包み込む
もう少し寝られたはずなのに
目を覚まされて
コイツメッ コイツメッ
と、思いつつ
優しく優しく包み込む
気づいたらしい肉まんが
すっと手を伸ばし
私の頬に触れる
その小ささと存在の確かさ
家の外で手をつなぐことはほとんどしなくなったね
歩き疲れても「抱っこ」と言わなくなったね
ひらがなで手紙を書いてくれたね
自分のことを名前じゃなくて「オレ」と言ったりするね
私の知らないお友達たくさんつくったね
持久走大会10位だったね
毎朝
手のひらで包みながら
この手を離れていく君を想う
あとどれくらい私の肉まんでいてくれるの?
どんな恋が待ってるだろうね
私はくり返しくり返し
君を恋しく想うだろうな
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足
ふをひなせ
私の足は亀の甲
私の足をうかがいみれば未来のことがわかります
手に取るようにわかります
私の足にはひびがある
傷つき歩いたひびがある
私の足をうかがいみれば私のことがわかります
火を見るよりも明らかに
私の足は亀の甲
私の足をうかがいみれば未来の私がわかります
嘘をついてもわかります
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B型、蟹座
宮前のん
もし彼を振り向かせたいと願うならラッキーカラーは黄緑色よ
お守りにこのペンダント買いなさい明日交通事故に遭うから
献血でB型ですよと教えられ数年来の思い込みを知る
7月の終わりが誕生日の私、普段蟹座で時々獅子座
教室に右の足から入ります、それでイイ事あるかもしれぬ
デート中別れますよと占われ数年後の今日ハズレだと知る
占い師養成所にて習うのは心理学とか経営学とか
今週の運勢最高ラッキーと書かれたページ三角に折る
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星と占い
赤月るい
だれにでもある孤独を
さみしさを 落胆を 苦い過去を
ぼくだけ悲しいかのように
ぶらさげて憂いている
よわむし
そんなぼくにも何かできるの
だれかを いつか
ちゃんと守ってゆけるの
こわい こわいから
まだ、まだって
甘えるようにすがりながら
ぼくは日々を歩かない
歩けない
歩いてはいない
それは嘘なの?
演じているの 待っているの
ふるえる目
夜空の星は
泣いてるみたいに小さく流れた
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2009.2.15 発行/蘭の会
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(CGI 遠野青嵐 編集 佐々宝砂)