伸ばした手
届け 届け
おんぶ
ちいさな眼
幸せは自らの手でつかみ取るもの
伸ばした手
yoyo
素手でつかんだ雑草も
ドロドロ社会にまみれてさ
冬とは言えない嵐の日
ちゃりんここいで突っ走る
先生が走るからこそ師走であって
こいでもこいでも
向かい風
働けと占いにあったのをそのままに
生い茂る草木と枯葉をつかんでは
人間違いと気づかずに
決断となりうる日がやってくる
笑うも泣くも口あけて
手を結んだら
未来をつかんだ気になるのかと
宿る嬰児が手をたたく
届け 届け
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九鬼ゑ女
届け 届け 天まで届け
熱きおもひの 行く末を
いまも見果てぬままの 岸の向かふ
…わたくしは
委ねる この手の先に
届け 届け 星まで届け
惑ふまぶたの 闇の淵
そっと抱き寄せくちずけて うすら笑ひ
…わたくしは
手繰る この手の平で
届け 届け けふという日に
浸るカナシミ 消し去るすべ
喉から噴き出す嗚咽の 夥しさ
…わたくしは
憂える この胸の内で
届け 届け どこまでも届け
熱きおもひの 行く末を
あすも見果てぬだらふ 岸のこちら
…わたくしは
委ねる この手の先に
おんぶ
宮前のん
おんぶおんぶって
次男にせがまれて
腰の痛さも
足の辛さも
お前は考えた事もなく
どぉんといっぺんに
全体重を乗せてくる
ぴったりと隙間なく
肩口に頬を擦り寄せる
どうしてそんなに
無防備に
私の背中を信頼するの
ひょっとして急に
落とされるとは
露ほども思わないの
ひょっとして不意に
居なくなるとは
塵ほども疑わないの
背負ったものの重さを
ひしひしと感じながら
私が本当はいつも
何を思っているのか
お前は考えた事もなく
耳元でくすくす笑い
私の頬に
手を伸ばして
ちいさな眼
佐々宝砂
その双眼鏡ではみえないほどの遠く
みえないほどのちいさな
崩れたじゃがいもみたいな土塊に
手を伸ばしたこともあったのだよ
大きな眼で見つめれば
そうその眼よりはるか大きな
ばかみたいに大きな眼で見つめれば
遠い遠い土塊も見ることができた
そう見ることならば
見るだけならば
ひとは何百万光年の先まで見ることができた
でも見るだけで
それだけでかまわないと
傲慢なわたしたちが満足するわけはなかった
薪をちょっとまんなかに寄せて
見上げる夜空は薄曇りで
そのむこうの星を
わたしたちはいまや想像することしかできないけれど
双眼鏡はきちんと磨いておこうよ
それはちいさな眼に過ぎないとしても
大切なものだから
もう作れないかもしれないものだから
手が届かないとしても
見ることだけは失いたくないから
幸せは自らの手でつかみ取るもの
伊藤透雪
夜が明ける
蒼い空間、雲上に一閃輝き
伸ばした手のひらをピンク色に縁取っていく陽よ
命は儚くも強くたくましい
生まれた命は炎より確かに
鼓動を打ちながら激しく
何気ない一日にも
体の内側で燃え続ける
時が刻む世界に
機械仕掛けで動くロボットじゃない
生きて死ぬまでの短すぎる時間に
幸せを待っている暇などない
熱い手でつかみ取るまで
走り続けろ
縁取られた手のひらの色は命の色
たちたちと
燃える命の彩り
鼓動は自ら時を刻む
振り返る暇などない
喜びも悲しみも愛も偽りも
生きていく燃料にして
その手を伸ばせ
幸せは自らの手でつかみ取るもの
2010.12.15発行
(C)蘭の会
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CGI編集/遠野青嵐・佐々宝砂