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もらったお皿の くれないは
しんしゃの赤と いうのです
夏の終わりの 病室で
幾日眠りに 落ちていた
あなたは目覚めて 微笑んで
みずから命を 絶つゆえを
ぽつりぽつりと 言いました
わたしは何も たずねずに
静かにそれを 聞きました
幾日部屋に 訪れて
ベッドの脇の 丸いすは
いつしかわたしの 指定席
窓の向こうの 落葉樹
色づく頃も 近づいて
あなたが部屋を 去るときに
お皿を一枚 取り出して
わたしにそれを くれました
しんしゃの赤は 生きてゆく
いのちの健やか なることを
映した色と 言い残し
あなたは部屋を 去りました
もらったお皿の くれないは
しんしゃの赤と いうのです
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