望 - 漢字私註

説文解字

𡈼部朢字條

朢

月滿與日相朢、以朝君也。从𡈼。𡈼、朝廷也。無放切。

𡈼部
𦣠

古文朢省。

説文解字注

朢

月滿也。此與望各字。望从朢省聲。今則望專行而朢廢矣。與日相望。以曡韵爲訓。原象曰、日兆月、而月乃有光。人自地視之。惟於朢得見其光之盈。朔則日之兆月、其光嚮日下。民不可得見。餘以側見而闕。佀朝君。似各本譌以。今正。『韵會』作月望日。如臣朝君於廷。此釋从臣、从壬之意也。

从月从臣从𡈼。合三字會意。不入《月部》者、古文以从臣𡈼見尊君之義。故箸之。無放切。十部。𡈼、朝廷也。說此𡈼爲之叚借字。與𡈼本義別。

𦣠

古文朢省。『大玄』𧭅作⿰言𦣠。亦古文也。

亡部望字條

望

出亡在外、望其還也。从、朢省聲。巫放切。

十二亡部

説文解字注

望

出亡在外。望其還也。還者、復也。本義。引申之爲令聞令望之望。

从亡、朢省聲。按望以朢爲聲。朢以望爲義。其爲二字較然也。而今多亂之。巫放切。十部。亦平聲。

康煕字典

部・劃數
月部・七劃
古文
𦣠

『唐韻』『正韻』巫放切『集韻』『韻會』無放切、𠀤音𧧄。『說文』出亡在外、望其還也。从亡、朢省聲。『釋名』望、惘也、視遠惘惘也。『詩・邶風』瞻望弗及。

又『詩・大雅』令聞令望。《疏》爲人所觀望。

又『孟子』望望然去之。《趙岐註》慚愧之貌也。《朱傳》去而不顧之貌。

又『博雅』覗也。『韻會』爲人所仰曰望。又責望。又怨望。

又祭名。『書・舜典』望于山川。《傳》皆一時望祭之。『公羊傳・僖三十一年』望者何、望祭也。

又『廣韻』『集韻』『韻會』武方切『正韻』無方切、𠀤音亡。義同。『詩・小雅』萬夫所望。『釋文』協韻音亡。

又『釋名』月滿之名也。月大十六日、小十五日。日在東、月在西、遙在望也。『易・小畜』月幾望。『左傳・桓三年疏』月體無光、待日照而光生、半照卽爲弦、全照乃成望。

『韻會』从𡈼、譌从王。『說文』日月之望作、瞻望之望作望。今通作望、而古文制字之義遂亡。

部・劃數
月部・十劃

『廣韻』『正韻』巫放切『集韻』『韻會』無放切、𠀤音𧧄。『說文』月滿與日相朢、以朝君也。从月从臣从𡈼。○按經典通作。詳望字註。

部・劃數
立部・七劃

『類篇』巫放切『篇海』音望。『說文』出亡在外、望其還也。『字彙』同

又『海篇』祭名。

又姓。『何氏姓苑』魏興人。又音亡。

部・劃數
臣部・四劃

『玉篇』古文字。註詳月部七畫。

集韻

卷・韻・小韻
集韻・平聲三・陽第十・亡
反切
武方切音2

在外望其還也。

卷・韻・小韻
集韻・平聲三・陽第十・亡
反切
武方切音2

月滿與日相朢也。

或省。

卷・韻・小韻
去聲下漾第四十一
反切
無放切音1

『說文』出亡在外望其還也。

或从立。

卷・韻・小韻
去聲下漾第四十一
反切
無放切音1

『說文』月滿與日相望以朝君。从月从臣从𡈼。𡈼朝廷也。

古省、或作𡔞。

音訓義

バウ(漢) マウ(呉)⦅一⦆
バウ(推)⦅二⦆
のぞむ⦅一⦆⦅二⦆
もち⦅一⦆⦅二⦆
官話
wàng⦅一⦆
粤語
mong6⦅一⦆
mong4⦅二⦆

⦅一⦆

反切
廣韻・去聲』巫放切
集韻・去聲下漾第四十一』無放切集韻3集韻4
『五音集韻・去聲卷第十二・漾第一・微・三妄』巫放切
聲母
微(輕脣音・次濁)
等呼
官話
wàng
粤語
mong6
日本語音
バウ(漢)
マウ(呉)
のぞむ
もち
見る。遠方を見る。望み見る。望見、望遠など。
待ち望む。願ふ。希望など。
ながめ、樣子。
ほまれ。人望、德望など。
うらむ。怨望など。
滿月。もちづき。

⦅二⦆

反切
廣韻・下平聲・陽・亡』武方切
集韻・平聲三・陽第十・亡』武方切集韻1集韻2
『五音集韻・下平聲卷第五・陽第一・微・三亡』武方切
聲母
微(輕脣音・次濁)
等呼
粤語
mong4: 當音を示す資料はあるが對應する字義は未確認。
日本語音
バウ(推)
訓義
⦅一⦆に同じ

解字

初文は𡈼に從ひ𦣠に作る。

後にを加へて朢に作り、あるいは朔望の望を表す。

更に後に、臣を聲符のに替へ、望に作る。

白川

形聲。聲符は

卜文は、大きな目をあげて遠くを望み、挺立する人の形に象る。の初文が、大きな耳の下に挺立する人の形であるのと同じく、特定の行爲を示す字。朢の重文𦣠が卜文に見える望で、望の初文。眼の呪力によつて敵を壓服し、或は望氣を行ふ意の字であつた。卜辭に媚人三千をして、苦方を𦣠ましむることなからんかのやうに卜するものがあり、媚飾を加へた三千の巫女が、一齊に山西北方の異族である苦方に、その呪儀を行つた。

のち金文の字形にはを加へて月相の關係の字、朔望の望となり、また目の形(臣)が亡の形に書かれて形聲となる。

日月相望む異によつて月を加へ、朔望の望となり、望より一週の月相を既望といふ。

藤堂

望の原字は、(目の形)と人が伸び上がつて立つさまの會意字。望はそれにと聲符のを加へたもので、遠くの月を待ち望むさまを示す。無い物を求め、見えない所を見ようとする意を含む。

落合

甲骨文はと目を縱にしたから成り、と同樣に見ることを意味する會意字。土盛りの形のに乘つて遠くを望み見ることを表す字形が多い。人と土を合はせた形は𡈼に當たり、初文は𦣠の形。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. のぞむ。望み見る。偵察する。《合補》1781貞、勿呼望𢀛方。
  2. 地名。殷の支配地だが、第三期(康丁武乙代)に一時的に敵對してゐる。《合集》35661癸酉卜在望貞、王旬亡禍。
望乘
人名。第一期(武丁代)乃至一二間期(祖己代)。望の領主であらう。《合補》1885貞、王從望乘伐下危。
望洋
人名。第一期(武丁代)。望の領主であらう。出現時期から見て望乘の先代と思はれる。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》156甲午卜爭貞、叀雀呼從望洋…戉。

西周代には滿月を意味する字となつたため、を加へて朢の形となつた。

更に篆文で臣を聲符のに換へた形聲の字體の望が出現した。

漢字多功能字庫

甲骨文は𡈼に從ふ(補註: 𦣠の形)。 臣は縱向きの目の形に象り、𡈼は土の上に挺立する人に象る。朢は土の上に立ち遠望するさまに象り、本義は高きに登り遠望すること。臣を人の上におき、目の形を縱に起こして、目の屆く限り遠くを望む動作を強調してゐる。あるいは人の下に(腳趾)を加へ、企の形につくる。卜辭では動詞に用ゐ、觀察、監視の義(派生義)を有す。朢はまた祭名、人名、地名、方國名に用ゐる。

早期金文は臣と𡈼に從ひ、甲骨文に同じ。本義は看望。銘文では人名のほか、借りて朔望となし、月相名、月の滿ちることを指す。故にを加へる。臣辰盉才五月既朢辛酉『釋名・釋天』望、月滿之名也。

またなどの形を加へるものがあり、あるいは臣をに變へるものがある。また臣に從はずを聲符に加へ、望字をつくる。望は朢の後起の字と見ることができる。望が行はれて朢が廢れた。古代文獻では朢は望字に同じ。《馬王堆帛書・老子乙本・德經》31行(鄰)國相朢。音が同じことから、金文では朢字を忘れる意のに借用する。

また、朢との甲骨文は形が近く、どちらも目が強調され、目が特に大きい人の形につくる。見は普通に視ることで、目は橫向き。朢は遠くを視ることで、目は縱向き。

金文はと月と𡈼に從ひ、亡は聲符。望と朢は一字の異體で、朢の本義は高きに登り遠くを望むこと。後に縱向きにした目を象るを聲符の亡に替へた。

金文では朢で月の滿ちることを表し、月の滿ち缺けで時間を記錄する。それゆゑに朢は月を意符とする。『説文解字』は、朢は滿月を表し、望は希望を表すとするが、二字は本來一字である。

に從ふのは𡈼の省。李孝定は曾て臣為豎目形、絕不可省、作字者任意為之耳、形聲之字、例屬後起、故知作「望」者必較「朢」為晚出。と言ふ。考へるに望字が初めて見えるのは西周中期以後の金文で、多く月相名に用ゐる。

屬性

U+671B
JIS: 1-43-30
當用漢字・常用漢字
U+FA93 (CJK互換漢字)
望︀
U+671B U+FE00
CJK COMPATIBILITY IDEOGRAPH-FA93
望󠄀
U+671B U+E0100
CID+3692
望󠄁
U+671B U+E0101
CID+14036
望󠄂
U+671B U+E0102
CID+14037
望󠄃
U+671B U+E0103
MJ013550
望󠄄
U+671B U+E0104
MJ013554
望󠄅
U+671B U+E0105
MJ013553
望󠄆
U+671B U+E0106
MJ013552
望󠄇
U+671B U+E0107
MJ013549
望󠄊
U+671B U+E010A
MJ013551
U+6722
JIS X 0212: 34-85
𥩿
U+25A7F
𦣠
U+268E0
𡔞
U+2151E

関聯字

朢聲の字