漢字

語解

雜説

表意文字であるから、字形を不規則に變へたりしたら意味不明になるべきものであるところ、どこぞの莫迦たれどもが、簡單平易なのが良いに極つてゐる、活字と筆寫文字は同じ形をしてゐるべきといふ幼稚な考へで以て、原理も原則もなく字形を弄るわ、使うて良い漢字惡い漢字を勝手に決めるわで、現狀の混亂は目を覆ふばかり。所謂形聲字は字形を見れば音が分明である筈なのに、それすらままならぬ慘状。眞に「愚民」のためと仰せになるなら、元のままにしておいて呉れた方が餘程原則的で、餘計な例外を覺えずに濟んだといふものである。「愚民」に難儀をさせるための「簡單平易」とは、これなんぞや。

本當のところは、「愚民」が混亂した漢字體系に愛想を盡かすのを狙つたのかも知れないが、「愚民」の方は大人しく與へられた漢字を使ふ。不合理でも、不條理でも、使へないほど愚かな國民ではない。まあ、大人しく與へられたのを使つてゐるのは十分愚昧と言へるかも知れないが。

大體、漢字を使ふことに難儀するやうな愚かな國民が、東亞の一等國を築けた訣があらうか。好い加減、愚民政策は止めて使ひたい樣に使はせて呉れても良ささうなものである。あれも使へない、これも使へない、と文句を言ふ者は後を立たず、例へ漢字表擴大でお茶を濁しても、所詮小手先の誤魔化しもいいところである。