説文解字私註 弟部

弟部

説文解字
韋束之次弟也。从古字之象。凡弟之屬皆从弟。
𠂖 古文弟从古文韋省、丿聲。
康煕字典
弓部四劃
《古文》𠂖𢦢
『廣韻』徒禮切『集韻』『韻會』『正韻』待禮切、𠀤第上聲。『說文』朿韋之次第也。『釋名』弟、第也、相次第而上也。『廣韻』今爲兄弟字。『爾雅・釋親』男子先生爲兄、後生爲弟。『書・君𨻰』惟孝友于兄弟。
通。『廣雅』弟、順也、言順於兄。『禮・曲禮』僚友稱其弟也。
易也。『廣韻』愷悌、一作豈弟。『詩・齊風』齊子豈弟。《傳》豈、樂也。弟、易也。
『廣韻』特計切『集韻』『韻會』『正韻』大計切、𠀤音第。義同。
○按『集韻』以兄弟、豈弟之弟爲上聲、孝弟之弟爲去聲、據『廣韻』薺、霽二韻、弟俱訓兄弟、霽韻悌訓孝悌、又上聲。宋禮部韻、悌訓愷悌、上去二聲通押。則兄弟、豈弟、孝弟、俱可通用上去二聲也。
おとうと。したがふ。やすい。
解字(白川)
なめし革の紐でものを束ねた形を象る。説文解字に韋束の次弟なり。古字の象に从ふ。とあり、次第してものを締結する意。のち兄弟の意に用ゐる。第は後起の字。
解字(藤堂)
指示字。紐の垂れたさまと棒杭で、棒の低い所を/印で指し示し、低い位置を表す。兄弟のうち大きい方を兄、小さい方を弟といふ。また低く穩やかにへりくだる氣持ちを弟、悌といふ。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文、金文は必に從ふ。甲骨文は或はに從ふ。必は柲の初文、戈の柄の形を象る。弟字は繩索が戈柄に纏はりつく形を象る。次第の義があり、また轉じて兄弟の意。
金文には柲ではなく弋に從ふものがある。弋は木橛(木釘、杭)の形を象り、繩索が戈柄や木橛に纏はりつく意は同じ。
甲骨文、金文では兄弟の弟を表す。
當用漢字・常用漢字

𥊽

説文解字
周人謂兄曰𥊽。从从眔。
康煕字典
目部十二劃
『唐韻』古魂切『集韻』『韻會』公渾切、𠀤音崐。『說文』周人謂兄曰𥊽。从弟从眔。『徐鉉曰』眔目相及也。兄弟親比之義。『六書本義』从眔、及也。及在弟上者。兄之義。『精薀』从弟在後、其前眔者、首得父母之氣相連逮也。
『爾雅・釋親』省作。『玉篇』省作。今通作
康煕字典・罤
目部七劃
『玉篇』同𥊽。省文。
補註: 別に网部に字を立てる。
コン
あに
解字(白川)
と𥄳の會意。𥄳は涙の象形。老いて妻なきを鰥といひ、亡妻に𥄳(涙)する意の字であるらしく、𥊽の從ふ眔も、またその意であらう。
『爾雅・釋親』に晜を用ゐ、『詩・王風・葛藟』にを用ゐる。

補遺

説文解字
康煕字典
竹部五劃
『廣韻』特計切『集韻』『韻會』『正韻』大計切、𠀤音弟。次第也。『左傳・哀十六年』子西曰、楚國第我死、令尹、司馬非勝而誰。《註》用士之次第。
但也。『史記・陳丞相世家』陛下第出僞遊雲夢。《註》第、且也、但也。
第宅。『前漢・高帝紀』爲列侯者賜大第。《註》孟康曰、有甲乙次第、故曰第也。『司馬相如・喻巴蜀檄』位爲通侯、居列東第
又複姓。『後漢・第五倫傳』齊諸田徙園陵者多、故以次第爲氏、有第五、第八等氏。
。『說文』第本作弟、韋束之次第也。今爲兄弟字。
『集韻』一曰順也。
『韻會』舊註作苐、非。苐、草也。
ついで。やしき。ただ。
解字(白川)
形聲。聲符はの省文。弟はなめしがはでものを束ねる形。第は竹簡をそのやうに次第して綴ることをいふ。それで序列、品第の意となる。
邸の意に假借する。
副詞の「ただ」に用ゐる。命令的にそれを選擇するとき、また假設の意がある。
解字(藤堂)
は杭につるの卷いたさま。卷いた蔓は一段一段と段階を成す。第は竹と弟の略體の會意、弟は亦た音符。竹の節が一段一段と竝ぶことを示す。
解字(漢字多功能字庫)
竹とに從ふ。もと弟につくり、本義は次第。漢の班固の『白虎通・爵』に侯者百里之正爵、上可有次、下可有第、中央故無二、五十里有兩爵者、所以加勉進人也。といふ。後に科擧の合格順位を表す。
上記より、科擧に合格することを表す。
評定を表す。『管子・度地』「凡一年之事畢矣、擧有功、賞賢、罰有罪、遷有司之吏而第之。
順に竝べて編むことを表す。『隋書・經籍志一』至劉向考校經籍、檢得一百三十篇、向因第而敘之。
府第、官邸を表す。『史記・孟子荀卿列傳』齊王嘉之、自如淳于髡以下、皆命曰列大夫、為開第康莊之衢、高門大屋、尊寵之。
副詞や連詞に用ゐる。漢の劉向の『說苑・正諫』に(子西)曰、臣不敢下車、願得有道、大王肯聽之乎。王曰、第言之。」とあり、第は副詞で、姑且(しばらく、とりあへず)の意を表す。また、『左傳・哀公十六年』に「「楚國、第我死、令尹、司馬、非勝而誰。とあり、楊伯峻の注に第為假設連詞、謂在楚國、若我死、令尹或司馬必勝也。といふ。
當用漢字・常用漢字

康煕字典
网部七劃
『廣韻』杜奚切『集韻』『韻會』田黎切『正韻』杜兮切、𠀤音題。『玉篇』兔網。
補註: 別に目部に罤字(𥊽の省文)を立てる。
孟郊・石淙
戇獸鮮猜懼、羅人巧罝罤。
テイ
解字(藤堂)
形聲。网(あみ)に從ひ聲。うさぎを獲る網、廣く獸を獲る網をいふ。

𥊽の省文と同形異音異義。