説文解字私註 𤉡部
𤉡部
- 文一 重一
兕
- 説文解字
- 𤉡𧰽
如野牛而青。象形。與禽、离頭同。凡𤉡之屬皆从𤉡。
段注は如野牛。靑色。其皮堅厚可制鎧。象形。
とする。 - 兕𠒅
古文从几。
- 康煕字典
- 儿部六劃
- 《古文》𠒅𧰽
『唐韻』徐姊切『集韻』『韻會』序姊切、𠀤音祀。『說文』狀如野牛而靑。象形。本作𤉡。『爾雅・釋獸』兕似牛。《註》一角、靑色、重千斤。《疏》其皮堅厚、可制甲。交州記、角長三尺餘、形如馬鞭柄。『儀禮・鄕射禮』大夫兕中各以其物獲。《註》兕、獸名。『周禮・冬官考工記』兕甲六屬。又、兕甲壽二百年。『韻會』陸佃云、兕善抵觸、故先王制罰爵以爲酒戒。『詩・周南』我姑酌彼兕觥。《傳》兕觥、角爵也。
- 康煕字典・𤉡
- 火部八劃
『字彙』徐姊切、詞上聲。如野牛而靑。『集韻』兕本字。『正字通』俗兕字。○按『說文』篆本作𧰽。古文从几作兕。其云凡𤉡之類、皆从𤉡。攺[勹彡]爲[勹灬]者、傳寫之誤也。『玉篇』『廣韻』作兕。又作𧱃、俱無𤉡字、益可証𤉡爲譌。
- 音
- ジ
- 解字(白川)
- 象形。上部は角の形。『周禮・考工・函人』に兕甲六屬の名が見え、武具の材とした。また角は酒器に用ゐて「兕觥」といふ。『詩・周南・卷耳』に上揭の句がある。いま青銅器の兕觥と呼ばれるものには、兕觥といふ器名をしるすものはなく、巵の上に獸形の蓋のあるものを、その名で呼んでゐる。
- 解字(藤堂)
- 象形。野牛に似た一角の獸。犀の一種ともいふ。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 甲骨文は象形字で、犀の一種を象る。頭上に角がある。後に角の形が凹に變はり、身體は四條の斜筆に變はり、字形を𤉡につくる。『山海經・海內南經』に
兕其狀如牛、蒼黑一角。
とするが、『爾雅・釋獸』、『左傳・宣公二年』、『周禮・冬官・函人』などの文獻は犀と兕を竝べて擧げてゐるので、恐らく犀に良く似た獸であり、一説に雌犀といふ。また『論語・季氏』に虎兕出於柙、龜玉毀於櫝中。
とあり、『老子・第五十章』に陸行不遇兕虎
兕無所投其角
の句がある。兕は角を帶ぶるを指し、虎に匹敵する猛獸たるとの意が明らかである。『詩・周頌・絲衣』兕觥其觩、旨酒思柔
や『詩・豳風・七月』稱彼兕觥、萬壽無疆
などの句にいふ「兕觥」は、兕の角で造つた酒器である。 - 甲骨文では本義に用ゐる。
『西遊記』の獨角兕大王は、太上老君の青牛の化けた姿。