レヴュー: 『プログラミング言語C++ 第3版』
諸元
- 著者
- Bjarne Stroustrup
- 飜譯
- 株式會社ロングテール / 長尾高弘
- 發行
- アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン 1998年
評
ISO/IECの標準C++について、言語の原作者であるProf. Bjarne Stroustrupにより著された網羅的な解説書である。C++言語を、その場凌ぎで利用してゐる者にまで必讀とは言はないが、一端のC++プログラマを氣取る積りがあるのなら、目を通したことがないなど論外であり、必攜と言へる書物である。
分量は相當な分厚さである。C++が、場合によつては酷評される程に、大きな仕樣である爲と言へる。しかし、それもやむを得ない。C++の持つ強みの一つは、その仕樣の大きさにこそあるのだから。それを甘受できないのであれば、C++プログラマの看板を下ろして、別の言語に轉向する方が良い。
本書だけを用ゐて、C++言語について初歩から學ぶことはなかなか困難だと思ふが、一旦概略を掴んだ後は、本書はかなり役に立つ。本書は、リファレンスとしてはなかなか良質である。親切なことに、本書では、相當な分量を、新たに導入されたSTLのコンテナやアルゴリズムを紹介する爲に充ててゐる。これは大變大きい。專門の參考書類がいくつか出版されてゐるが、本書の該當部分を讀めば、相當程度に使へるやうになると個人的には思ふ。
2010年までに、恐らく更に大量の標準ライブラリを引つ提げて、新たなC++標準がお目見えすることであらう。しかし、言語の根幹は、本書に書かれたものから、さうドラスティックに變はりはすまい。新たな標準ライブラリについて、追加で勉強すれば事足りる、と踏んでゐる。勿論責任は取らないが、まづは本書でじつくり、今の標準C++について確實に押さへておくのが、賢明ではなからうか。
C++言語は、全てを網羅しなければ利用できない言語ではない。同樣に、本書も、角から角まで讀み通さなければ意味を成さないものではない。各々の必要に應じて、關心のある部分から目を通し、プログラミングに反映させて行くのが賢明であると思ふ。實際、評者も、よく參照する部分と、殆ど目を通した憶えのない部分が存在する。
最後に、かくも大きく、それでゐて機能不全に陥らずに活躍する言語を練り上げたProf. Bjarne Stroustrupに、敬意を表して締めとしておきたい。
註
本文書は平成20年3月28日作成。