漢字に關する論考

序

本稿は、「當用漢字表」ないし「常用漢字表」に由つて如何に漢字表現が歪められたかを示し、漢字制限が甚だ不當であり不合理であることを知らしむることを目的とするものである。

前提

以下、論者の立場を記しておく。

「正字」と唱ふるは、正統な文字のことである。ここでは漢字について扱ふから、正統な漢字を以て「正字」と唱ふ。

本稿で扱ふのは、主に活字の字體についてである。傳統的な書に於ける字體については、どうやら論者の手に負へるものではないらしいと知つた。書に於いては其の傳統に則つて書くべきであると述べるに留めておく。

論者は、略字俗字の類を一掃し絕滅せしめることを主張するものに非ず。ただ、略字俗字の類を「正」とし、正字を「舊」として排除することに反對するだけである。

活字の書體と筆記の書體には差異があつて當然と考へるので、常用漢字表の前身である當用漢字表のまへがきに揭げられた印刷字体と筆写字体とをできるだけ一致させることをたてまえとしたといふ文言には斷固反對する旨、ここで宣言しておく。

文字單體

ここでは、常用漢字表に於いて略體・俗體・筆寫體が採用された文字、及び二以上の文字が一に統一された文字を掲ぐ。先づ常用漢字表の字體を示し、後に正字體を示し、字によつては解説を續ける。以下、「表」は常用漢字表の意。

なほ、字の音義などの解説を示すのは、論者の便利の爲でもある。

別字を侵害

かういふことをした結果が「正しい」と思つてゐるのは、極めて頭の惡いことであると思ふ。

医
醫
医: 「エイ」(漢音)「アイ」(呉音)と讀み、うつぼ(矢入れ)を意味す。醫とは別字。
缶
罐
缶: 「フ」(呉音)「フウ」(漢音)と讀み、土器のほとぎを意味す。罐とは別字。
芸
藝
芸: 「ウン」と讀み、ヘンルーダ(芸香)を意味す。栞として除蟲に用ゐたことより芸齋、芸館など書に關はりを持つ。亦、耘と通じて、くさぎることを意味す。藝とは別字。
欠
缺
欠: 「ケン」と讀む。欠伸、かけて足らざることを意味す。缺とは別字。
補註: 間歇を間欠と書き換へる。
県
縣
県: 「キョウ」と讀む。さらし首にするの意。縣とは別字。
蚕
蠶
蚕: 「テン」と讀み、みみずの意。蠶とは別字。
糸
絲
糸: 「ベキ」(漢音)「ミャク」(呉音)と讀み、細い原絲の意。糸を寄り合はせて絲と成す。卽ち絲とは別字。
証
證
証: 「セイ」(漢音)「ショウ」(呉音)と讀み、いさめてただす意。證とは別字。
体
體
体: 「ホン」と讀む別字。體の俗體として用ゐらる。
台
臺
台: 「イ」「タイ」「ダイ」と讀む。以に通用す。台位、台槐など、三公を意味す。亦、音が予、余に通じるので一人稱(われ)として用ゐる。臺とは別字。
虫
蟲
虫: 「キ」(漢音)「ケ」(呉音)と讀み、まむしを表す。蟲とは別字。
灯
燈
灯: 「チョウ」(呉音)「テイ」(漢音)「チン」(唐音)と讀み、火、烈火を意味す。燈とは別字。
豊
豐の節參照のこと。
予
豫: 原義は大きな象。よろこぶ、あらかじめの意。
予: あたふ、たまふ、ゆるすの意。余(≠餘)と通じ、一人稱(われ)の意にも用ゐる。豫とは別字。
余
餘
余: 一人稱(われ)の意。餘とは別字。

別字を一字に統合

かういふことをするのも甚だ頭が惡いことであると思ふ。

弁
弁: 「ベン」(呉音)「ヘン」(漢音)と讀む。冠の意。
辯: 「ベン」(呉音)「ヘン」(漢音)と讀む。理窟めいた議論をする、物言ひが上手であるさまを意味す。亦、本邦では言ひぶり、方言を意味す。
辨: 「ベン」(呉音)「ヘン」(漢音)と讀む。わかつ、わきまへる、けじめをつけるの意。
瓣: 「ベン」(呉音)「ハン」(漢音)と讀み、花びらの意。亦、本邦では開閉することで氣體、液體の出入りの量を調整する花瓣狀のものの意。
補註: 「弁髪」は、本來、辮髮と記す。
欲
欲: ほつす。ねがふ。のぞむ。
慾: このみ。もとむ。人慾の意。欲に對して名詞として用ゐること多し。漢字制限の下では「欲」で代用さる。

一部を缺落

圧
壓
応
應
価
價
畳
疊

一部を抽出

号
號: 原義は虎の嘯き。
号: 悲しみ叫ぶ聲の意。元は號と別字。今は略體として通用。
処
處
触
觸
声
聲
補註: 声[磬(ケイ)]を鼓つ形を殸とつくり、その鼓つ音を聲といふ。声とは石を吊るした樂器(磬)の象形。
団
團
独
獨
与
與: 与を四手で捧ぐる形。与は牙の原字と同形といふ。くみす、あづかるの意。予(≠豫)と音が通じてゐた爲、あたふの意にも用ゐる。

亞

亜
亞
悪
惡

爲

為
爲
偽
僞

食偏

飲
飮
餅
餠

𤇾冠

栄
榮
営
營
蛍
螢
労
勞

睪→尺

睪: 「エキ」(漢音)「ヤク」(呉音); 『説文解字』ではうかがひ見るとするが、『字通』では獸屍の象形とす。

尺: 手の拇指と中指を開いた形。長さの單位、ものさし、わづかの意。

駅
驛
釈
釋
択
擇
沢
澤
訳
譯
補註: 「わけ」の訓は別字の訣(「ケツ」(漢音)「ケチ」(呉音); わかれる、祕訣の意)に當てるのが妥當か。

曷

謁
謁
喝
喝
渇
渴
褐
褐
掲
揭

補註: 平成22年「表」採錄の「葛」の脚部は曷とつくる。それなら上記のものも舊に復するのが妥當であらう。それをしない審議會の中の人は莫迦だと思ふ。

豐→豊

豐: 「ホウ」; 豆(たかつき)に多くの禾穀を盛つた形。ゆたか、さかん、おほきいことを意味す。

豊: 「レイ」; 豆(たかつき)の象形。醴(あまざけ)の初文。亦、禮と通用す。

艶
艷
豊
豐
豊: 上記參照。豐とは別字。

彔

縁
緣
緑
綠
録
錄

補註: JIS X 0208は「剝」を「剥」の形で採錄。

區

欧
歐
殴
毆
区
區
駆
驅
枢
樞

黃

横
橫
黄
黃

叚→反

叚: 「カ」; かりの意。

反: 「ハン」; そむく、かへる、そる、くりかへすの意。

仮
假

補註: 昄(「ハン」「ヘン」; おほきいの意)といふ字があるからか、「表」では暇を昄につくらず。他では別字を侵して平然としてゐる癖に。訣が分らない。

示偏

示の形を採るかネの形を採るかはデザイン差、或は筆記體と活字體の差でしかないと思ふが、一往揭げておく。

禍
禍
祈
祈
祉
祉
視
視
社
社
祝
祝
祥
祥
神
神
禅
禪
祖
祖
秘
祕: この字だけ禾になつてゐる。
福
福
礼
禮
礼: 古文にこの形がみえるといふ。

聿

聿: 「イツ」; 筆の形と又(手)。筆の初文。

画
畫: 「ガ」「カク」; ゑがく。
劃: 「カク」; くぎる。わける。畫とは別字。「表」に揭示はないが、專ら画で代用さる。
昼
晝

會

会
會
絵
繪

每

悔
悔
海
海
梅
梅
繁
繁
敏
敏
侮
侮
毎
每

褱

壊
壞
懐
懷

皀

慨
慨
概
槪
既
旣
郷
鄕
響
響
節
節
即
卽

產・彥

顔
顏: 「表」には揭示なし。
産
產: 「表」には揭示なし。

廣

拡
擴
広
廣
補註: 弘報を広報と書き換へる。
鉱
鑛

𦥯冠

覚
覺
学
學

樂

楽
樂
薬
藥

臼→旧

旧は臼の俗體。しかしながら、「表」では舊を旧につくり、臼は元の形のままである。

陥
陷
旧
舊: 脚部の臼のみ採り、更に旧の形につくる。
児
兒
稲
稻

雚

勧
勸
歓
歡
観
觀
権
權

𦰩

漢
漢
嘆
嘆
補註: 歎の代用にも用ゐる。
難
難

卷

巻
卷
圏
圈

犬→大

犬: いぬ。

大: おほきい。

器
器
臭
臭
突
突
涙
淚
類
類
戻
戾

羲→義

羲は犧の初文。亦、伏羲のこと。

義は羊+我。我は鋸の象形。犧牲に缺陷なく神意に適ふことをいふ。宜と通用。

犠
犧

豦→処

処は處の略體であり、虎+几(『字通』)。或は夂+几とも(『説文解字』)。豦(「キョ」; おほゐのこ)は虎頭の獸のことで、處とは別。

拠
據

與

挙
擧
誉
譽
与
與: 「一部を抽出」で既出

夾

峡
峽
挟
挾
狭
狹

補註: 平成22年「表」採錄の「頰」は頬につくらず。それなら(以下略)

堯

暁
曉
焼
燒

堇

勤
勤
謹
謹

補註: 平成22年「表」採錄の「僅」の旁は堇につくる。それなら(以下略)

熏

勲
勳
薫
薰

巠

径
徑
茎
莖
経
經
軽
輕

叀

恵
惠
穂
穗
専
專
転
轉
伝
傳
団
團: 「一部を抽出」で既出

奚

渓
溪
鶏
鷄

毄 (擊の冠部)

撃
擊

僉

倹
儉
剣
劍
険
險
検
檢
験
驗

攵

効
效
収
收
条
條
勅
敕
勅: 元は敕と別字。字義知れず。今は敕・勅を同字として扱ふ。

黑

黒
黑
墨
墨
黙
默

卒→卆

卆は卒の異體。しかしながら、「表」は卆を採らず卒を採る。

砕
碎
粋
粹
酔
醉

補註: 枠は國字(和製漢字)で元よりこの形。本字は篗であるといふ。

齊

済
濟
剤
劑
斉
齊

齋

斎
齋

參

参
參
惨
慘

戔

桟
棧
残
殘
浅
淺
践
踐
銭
錢

齒

歯
齒
齢
齢

舍

舎
舍: 「表」には揭示なし。
舗
舖: 「表」には揭示なし。

者

者
者
煮
煮
暑
暑
署
署
緒
緖
諸
諸
著
著
都
都

補註: 平成22年「表」採錄の「賭」「箸」は者を者につくらず。それなら(以下略)

壽

寿
壽
鋳
鑄

從

従
從
縦
縱

步

一畫增やした珍例。

渉
涉
頻
頻
歩
步

補註: 平成22年「表」採錄の「捗」の旁は歩ではなく步につくる。それなら(以下略)

爿

将
將
奨
獎
状
狀
寝
寢
壮
壯
荘
莊

乘

乗
乘
剰
剩

襄

壌
壤
嬢
孃
譲
讓
醸
釀

爭

浄
淨
静
靜
争
爭

屬

属
屬
嘱
囑

眞

真
眞
慎
愼
鎮
鎭

遀

随
隨
髄
髓

婁

数
數
楼
樓

賴

瀬
瀨
頼
賴

單

戦
戰
禅
禪
補註: 示偏で旣出
単
單
弾
彈

叟

捜
搜
痩
瘦

曾

曽
曾
僧
僧
層
層
増
增
憎
憎
贈
贈

悤

総
總
補註: 綜の代用にも用ゐる。

藏

蔵
藏
臓
臟

𧶠→売

𧶠: 「イク」; つぐなふ。うる。うりあるく。

売(賣): 「バイ」「マイ」; うる。

続
續
読
讀

帶

帯
帶
滞
滯

龍

滝
瀧
竜
龍

補註: 「襲」の冠部や、平成22年「表」採錄の「籠」の脚部は略さず。それなら(以下略)

詹→旦

詹: 「セン」「タン」; くどくどしい。たる。おほい。

旦: 「タン」; よあけ。

担
擔
胆
膽

發

廃
廢
補註: 癈の代用にも用ゐる。
発
發

來

麦
麥
麺
麵
来
來

犮→友

犮: 「ハツ」; はらふ。ころす。犧牲として殺された犬の形。祓の初文。

友: 「ユウ」; とも。したしむ。

髪
髮
抜
拔

䜌→亦

䜌: 「ラン」「バン」; みだる。おさむ。

亦: 「エキ」「ヤク」; また。わき。腋の初文。

蛮
蠻
変
變
恋
戀
湾
灣

卑

卑
卑
碑
碑

弗

払
拂
仏
佛

補註: 「表」では沸の旁をムの形につくらず。それなら(以下略)

幷

併
倂
塀
塀
餅
餠: 食偏で既出。
瓶
甁

萬→万

萬: さそりの象形。

万: 卍の變形。萬の通用字として用ゐらる。

万
萬
励
勵

兩

満
滿
両
兩
補註: 輛の代用にも用ゐる。

柬→東

柬: 「ケン」「カン」; えらぶ。書簡。名札、名刺。

東: 「トウ」; ひがし

欄
欄
練
練
錬
鍊

良

郎
郞
朗
朗
廊
廊

其の他

囲
圍
壱
壹
逸
逸
隠
隱
衛
衞
円
圓
塩
鹽
桜
櫻
奧
奥
温
溫
穏
穩
殻
殼
岳
嶽
寛
寬
関
關
気
氣
帰
歸
亀
龜
戯
戲
虚
虛
教
敎: 「表」には揭示なし。
継
繼
研
硏
献
獻
顕
顯
厳
嚴
恒
恆
補註: 亘(セン; めぐる)と亙(コウ; わたる)は元々別字。
国
國
穀
穀
冊
册: 「表」には揭示なし。
殺
殺
雑
雜
賛
贊
補註: 讚の代用にも用ゐる。
辞
辭
湿
濕
実
實
渋
澁: 澀あるいは歰が本來で、澁は澀の略體。
獣
獸
粛
肅
称
稱
縄
繩
尽
盡
図
圖
青
靑: 「表」には揭示なし。
窃
竊
摂
攝
絶
絕: 「表」には揭示なし。『説文解字』では斷絲。糸に從ひ刀に從ひ卩に從ふとするが、『字通』ではこれを採らず、色絲と解してゐる。
潜
潛
繊
纖
双
雙
挿
插
巣
巢
騒
騷
堕
墮
対
對
断
斷
遅
遲
痴
癡
庁
廳
徴
徵
聴
聽
懲
懲
塚
塚
逓
遞
鉄
鐵
點
点
当
當
党
黨
盗
盜
闘
鬪
徳
德
届
屆
弐
貳
悩
惱
脳
腦
覇
霸
拝
拜
売
賣
晩
晚
氷
冰: 「表」には揭示なし。原字は仌で、これが冫となり、水のこほるを冰につくる。
浜
濱
賓
賓
並
竝
辺
邊
勉
勉
宝
寶
褒
襃
没
沒
翻
飜
翻: 飜と同字兩形。ひらひらするものに翻、反覆するものに飜を當てると謂ふ。
免
免
弥
彌
揺
搖
様
樣
謡
謠
乱
亂
覧
覽
隆
隆
虜
虜
猟
獵
塁
壘
霊
靈
隷
隸: 「表」には揭示なし。
暦
曆
歴
曆
炉
爐

上記を踏まへての論

ここまで書いただけで、「表」の頭の惡さにうんざりした。閲覽した人も呆れたことだと思ふ。呆れて貰ふ爲に拔き書きしたのだから、「表」は出來が良いなどと感心して貰つては論者の目的が達成出來ないのではあるが。

そもそも漢字の字形といふものは、字義を表したり、字音を表したりするものである。かくも無秩序に弄つたのでは、字義も讀み方も判らなくなつて、學習に支障を來して却つて非效率である。

尤も、「表」をつくつた莫迦どもは漢字を廢止することを狙つてゐたといふから、其の目的には適ふのかも知れない。しかし、「表」の字體なら讀み書きに不自由しない國民が多數であるから、結果としては目的も達し得ず、餘計な混亂を招いただけである。間拔けにも程がある愚行と言へよう。

最初の目的が間違つてゐる「表」は、本質的に誤つた存在であるから、字の增減をするなどしたところでどうにもならない。一旦廢棄すべきである。もし國語の正書法を整へる上で必要なら、改めて眞つ當に檢討して新たに表なりなんなりつくれば良い。

熟語の書き換へ

漢字を制限した爲に、「表」にない漢字を用ゐた熟語の書き換へが爲されてゐる。甚だ愚かと言はざるを得ず。熟語は構成する字義に由るものであつて、其れを換へて了へば語義を損ねる。或は、語義を解す障礙となる。こんな間拔けなことは間違ひなく誤りである。

亦、書き換へにより、元々異なる語が混同されてゐる例も多く見られる。これは更に問題である。國が國語を頓珍漢なものに變へようとしたり、報道機關、殊に新聞社が率先して更に酷い書き換へをするのだから、目も當てられない。莫迦ばつか(CV: 南央美)である。一遍ルリルリに罵倒されてきたらいいと思ふ。

以下、例を示すが、あくまで一部である。書き換へた後を揭げ、後に從前の形を記し、更に説明を加へる。

安逸
安逸: 用例有り。所苦者身不得安逸(荘子・至樂)
安佚
暗影
暗翳: 翳はかざす、ものにおほはれてできたかげの意。
暗唱
暗誦、諳誦、闇誦: 誦はそらんずるの意。
案分
按分: 按はおさへる、しらべるの意。
意向
意向: 『字通』に南齊書・庾杲之傳を引く。
意嚮: 嚮は饗の初文。むかふ、さき、などの意。向に通ず。
慰謝
慰藉: なぐさめ、いたはるの意。元々は謝罪の意を含まない。
英知
叡智: 叡はさとい、あきらか、かしこいの意。知と智は通ずるが、知は動詞的、智は名詞的な語といふ。叡知も可。
英才
穎才: 穎はほさき、尖つたものの先、すぐれてゐること、拔きんでてゐることををいふ。
恩義
恩義: 用例有り。吾已失恩義(古樂府・焦仲卿妻; 『漢字源』から孫引き)
恩誼
格好
恰好: 恰は心に合ふ意。恰好とは恰度好いことをいひ、日本語では姿形が恰度いいことを恰好良いといひ、姿形を恰好といふ。
活発
活潑: 潑は水が勢ひよく散るをいひ、勢ひがよい意に轉ず。活潑はそれに適ふ。潑剌を思へば良い。
肝心
肝腎: そもそも「肝心」は「カンシン」と讀み、こころの意。
決起
蹶起: 蹶はつまづくこと。そこからはね起きることを蹶起、そのさまを蹶然(決然とは別義)といふ。
決別
訣別: 訣はわかれるの意。決別ではわかれるの意味を成さない。
汚職
瀆職: 汚職は新たにつくつた語。其の癖、冒瀆は冒瀆のままであるから訣が分らない。
関数
函數: functionの支那音譯といふのは俗説らしい。
薫製
燻製、熏製: いぶしてつくるものであるから燻製が妥當。
交差
交叉: 叉は、はさむ、さすまた、わかれるの意。差は、すすめる、えらぶ、たがふの意。
興奮
亢奮、昂奮: 亢、昂はたかぶるの意。
広報
弘報: 弘は弓を引きしぼつた形。ひろめる、おほきい、はなはだの意あり。廣は四壁のない建物を表し、轉じてひろいことの意となる。
広野
廣野: ひろい野。
曠野: あらの。
辭書により語義にぶれがあるので判じがたい部分もあるが、當座上の通りとしておく。
講和
媾和: 媾は(男女が)あふ、したしむ、仲直りするの意。男女の交合を媾合とも記す。尤も、帝國憲法第13條和ヲ講シなど、從前から講和の用例あり。
枯渇
涸渴: 涸は水がかれる意で、枯は草木がかれる意である。
混迷
昏迷: 昏はくらいの意。道理が分らなくなり心が迷ふこと。目がくらんで分別がつかぬこと。醫學用語で、外部からの刺戟に反應せざる状態。
混迷: 物事がいりまじつて先の見通しがつかなくなること。
集荷
蒐荷
収集
收集: あつめること。
蒐集: 趣味研究などのためにあつめまとめること。コレクション。
消夏
銷夏
消却
銷却
消沈
銷沈
侵略
侵掠
生息
生息: 生きること。生きながらへること。
棲息・栖息: 動物が生活してゐること。
選考
銓衡: 銓ははかりの分銅、衡ははかりざをのこと。銓衡とは重量をはかる意。また、人をえらぶ意。
扇情
煽情: 煽はあふるの意。
先端
先端: 物の一番先。
尖端: とがつた物の先。轉じて時代や流行のさきがけ。
扇動
煽動: 煽はあふるの意。
台形
梯形: 台形は新たにつくつた語。
奪略
奪掠
暖房
煖房
暖炉
煖爐
知恵
智慧: 慧はさといの意。惠では語義が崩れる。
丁度
恰度: 恰は心に合ふ、ちようどの意。丁では意味が通らない。
丁寧
叮嚀: 人にものを依囑するを叮嚀といふ。丁寧とは鐘に類する樂器の名で、慇懃の意には叮嚀を用ゐるといふ。
転倒
顚倒: 顚にたふれる、さかさになるの意がある。転倒では本末顚倒の意味が取れない。
動転
動顚: 顚にあわてる、うれふ、こころくるふの意がある。氣が動顚するのはその意に適ふ。なほ、移り變はる意を「動轉」といふらしい。
日食
日蝕: 蝕はむしばむの意。
破棄
破棄: やぶりすてること。取り決めや約束事などを取り消すこと。
破毀: 法律用語。上級裁判所が原判決を取り消すこと。
反発
反撥: 撥ははねるの意。發では意味が通らない。
腐乱
腐爛: 爛はただれるの意。
編集
編輯
包帯
繃帶: 繃はまく、まきつけるの意。言はずもがな、繃帶は包むものではなく卷き附けるものである。
放棄
放棄: 許して放つこと。
抛棄: 投げすてること。抛はなげうつの意。
膨張
膨脹: 書き換へによつて潰された典型例。「膨張」を蔓延らせて「脹」の字は常用されないといふことにして、遂に常用漢字表から削つたのだから、自作自演もここに窮まる。「脹」については、「当用漢字表審議報告」(昭和29年3月・国語審議会)で削除する方針が立てられてゐる。
補佐
輔佐: 輔はたすけるの意。
溶解
溶解: ものを水(或は他の液體)にとくこと。
鎔解: 鑛物や金屬などを熱でとかすこと。溶解と一緒くたにしてはいけない。一般に固體が液體になることを融解と呼び、鑛物金屬の融解を鎔解と呼ぶ。
溶岩
鎔巖(熔巖): 水にとけてゐるわけではないので溶は不適當。昭和31年の「同音の漢字による書きかえ」では熔岩を元の形とするが、熔は近代になつて作られた字といふ。
理屈
理窟: 窟はいはや、ほら、あなの意。屈むでは訣が分らない。平成22年の改正常用漢字表で窟を採錄したにも拘らず、屈の項に「理屈」が錄されてゐるのは、狂氣の沙汰である。
利口
利巧、悧巧: 頭がよい。利發。
利巧: 小賢しい(禮記・表記)。
利口: 口達者(論語・陽貨)。
略取
掠取
連係
連繫/聯繋: 繫はつなぐ、つながる、かかる、かけるの意。
連合
聯合
連想
聯想
連珠
聯珠
連邦
聯邦
連盟
聯盟
連絡
聯絡
連立
聯立
湾曲
彎曲: 彎はまがるの意。彎曲してゐる水邊の地形を灣といふのに、灣曲と書いたのではあべこべである。
湾入
彎入: 彎はまがるの意。弓なりにまがつた海岸線の陸地に入りたるを彎入といふ。

參考文獻

履歴