説文解字私註 𠧪部
𠧪部
- 文三 重三
𠧪
- 説文解字
艸木實垂𠧪𠧪然。象形。凡𠧪之屬皆从𠧪。讀若調。
- 𠨋
籒文三𠧪爲𠧪。
- 康煕字典
- 卜部七劃
『唐韻』徒聊切『集韻』『類篇』田聊切、𠀤音迢。草木實垂、𠧪𠧪然也。
多嘯切、音弔。義同。
『韻會』古文卣字。註詳五畫。
- 音
- テウ
- 解字(白川)
- 字は説文解字の音義を以て用ゐることはなく、『古今韻會擧要』に字を卣の古文とし、『説文解字注』にその説を採り、𠧪の隸變を卣であるとする。『群經正字』にも、𠧪を由の初文とする説がある。説文解字には卣、由を收めないが、𠧪は卣と最も字形が近い。酒器として用ゐる卣の卜文、金文の字形は、𠧪と殆ど異なるところがなく、その形は壺瓢の實に近い。酒器の卣はその形から出たもので、壺瓢の實が熟して油化したものが由、その外殼を存して器となつたものが卣である。即ち𠧪、卣、由はもと一系を成すもので、聲義ともに同系に屬するものと見て良い。
- 解字(藤堂)
- 卣の篆文。
栗
- 説文解字
- 㮚
木也。从木、其實下垂、故从𠧪。
- 𣡷
古文㮚从西从二𠧪。徐巡說、木至西方戰㮚。
- 康煕字典
- 木部
- 《古文》𣡼𣡷
- 音
- リツ
- 訓
- くり
- 表
- 人名用漢字
粟
- 説文解字
- 𥻆
嘉穀實也。从𠧪从米。孔子曰、𥻆之爲言續也。
- 𥾄
籒文𥻆。
- 康煕字典
- 米部
- 音
- ゾク
- 訓
- あは
- 表
- 人名用漢字
補遺
卣
- 説文解字注
- 𠧪の字釋に
𠧪之隸變爲卣。
と註する。 - 康煕字典
- 卜部五劃
- 《古文》𠧪
『唐韻』與九切『集韻』『韻會』以九切『正韻』云九切、𠀤音酉。『玉篇』中尊器也。『爾雅・釋器』卣、器也。《註》盛酒尊。『疏』卣、中尊也。孫炎云、尊彝爲上、罍爲下、卣居中。郭云、不大不小、在罍彝之閒。『詩・大雅』秬鬯一卣。
作脩。『周禮・春官・鬯人』廟用脩。《註》鄭曰、脩、讀曰卣。
『唐韻』以周切『集韻』夷周切『正韻』于求切、𠀤音由。義同。
- 音
- イウ
- 訓
- たる。さかだる。
- 解字(白川)
- 瓠型の酒器の象。
- 解字(藤堂)
- 抽出する口のついた壺の象。篆文は𠧪。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 樹上になつた果實の形を象る。本義は果實。小篆は𠧪につくる。
- 栗の甲骨文は三卣に從ひ、樹上に栗のなる形を象り、卣の字形の本義が樹上の果實、栗の實である證とならう。
- 一説に、卣は酒器の形を象るといふ。按ずるに古文字は往々にして一つの形を多用するので、卣字が果實を象り、また酒器を象ることは排除されない。
- 甲骨文、金文では、假借して𠧴となし、酒器を表す。戰國竹簡では攸の通假字となし、助詞の所に相當する。
𠧪と同じ字とみる資料もあるが、一往分けた。