説文解字私註 補遺

補遺

康煕字典
田部
ユ。イウ。
よる。よし。なほ。
解字(白川)
初形はの初文。由來、由緣の意は、䌛の字義による。
解字(藤堂)
と同源の字。抽出口から出て來るの意から、由來の意になつた。
解字(落合)
會意。器の形()の上に楕圓形がある。
甲骨文には多種の字義が見られるが、抽象的な字形のため、いづれが原義かは不明。甲骨文で既に原義が失はれてゐる可能性もある。
甲骨文での用法は次の如し。
  • 動詞に用ゐ、方向を變へて進むこと、また目的地以外の場所に立ち寄ることをいふ。(補註: 經由の由。)
  • 吉凶語。災厄に關係するが詳細不明。
  • 祭祀名。
  • 地名またはその長。
解字(漢字多功能字庫)
甲骨文、金文は、の上に縱劃あるいは圓形を加へた形。本義に定論なし。今多く原因を指し、また介詞に用ゐ、從に相當する。
甲骨文は唐蘭が最初に釋出した。冑の初文の省略で、古の戰士の戴く頭盔(ヘルメット)を象るといふ。ただ張玉金、陳劍は相前後して冑はただ由を聲符としてゐるだけとし、故にこの説は採用し信ずるには足りない。陳劍は由の甲骨文、金文が口に從ひ聲とする。丨は針の初文で、針と由は古音が近く、そのため由はあるいは針を聲符とするといふ。
甲骨文では疾病を卜問する辭に多用され、讀んで怞となし、良くない意を表す。《合集》2274正乙夕㞢(有)疾、隹㞢(有)由(怞)。、《合集》13656正㞢(有)疾齒、隹㞢(有)由(怞)。また人名に用ゐ、また地名に用ゐる。
金文では人名に用ゐる。由乍旅鼎由乍(作)旅貞(鼎)。
戰國竹簡では原因を解く。《清華簡一・祭公》簡15旣沁(咸)、乃又(有)履宗、不(丕)隹(惟)文武之由。は、もし斯樣であれば、宗室に福佑があり、すべて文王、武王の保祐の縁故を得てこそである、の意。また、辭を讀んで猶となす。《清華簡一.金縢》簡6-7成王由(猶)幼。また讀んで迪となし、道理を指す。《上博竹書一・緇衣》簡15〈呂型(刑)〉播型(刑)之由(迪)。」『尚書・呂刑』「「今爾何監、非時伯夷播刑之迪。鄭玄注言當視伯夷布刑之道而法之。「播刑之迪」は即ち刑法を施行する道理をいふ。
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