説文解字私註 兔部
兔部
- 文五 文一新附
兔
- 説文解字
獸名。象踞、後其尾形。兔頭與㲋頭同。凡兔之屬皆从兔。
- 康煕字典
- 儿部
『正韻』亦作菟。
- 音
- ト
- 訓
- うさぎ
- 表
- 人名用漢字
- 《漢字表字體》兎
逸
- 説文解字
失也。从辵、兔。兔謾訑善逃也。
- 康煕字典
- 辵部
- 《古文》𤖍
『韻會』通作佚。『孟子』遺佚而不怨。
與軼通。『史記・管晏傳』贊論其軼事。
- 訓
- のがれる。はづれる。はやる。
- 表
- 當用漢字・常用漢字
- 《漢字表字體》逸(U+9038; JIS:1-16-79)
- 《人名用許容字體》逸(U+FA67; JIS:1-92-57)
冤
- 説文解字
屈也。从兔从冂。兔在冂下,不得走,益屈折也。
- 康煕字典
- 冖部
- 音
- ヱン
- 訓
- かがむ。とがめ。ぬれぎぬ。うらみ。
婏
- 説文解字
兔子也。婏、疾也。从女、兔。
- 康煕字典
- 女部
娩は別字。
䞯
- 説文解字
- 𠓗
疾也。从三兔。闕。
(康煕儿部) - 康煕字典
- 走部
- 康煕字典・𠓗
- 儿部二十二劃
『玉篇』芳句切、急疾也。今作䞯。
新附
㕙
- 説文解字
狡兔也。从兔夋聲。
- 康煕字典
- 厶部
説文解字注增補
免
- 説文解字注
兔逸也。从免不見足會意。
註に許書失此字。而形聲多用爲偏旁。不可闕也。今補。
とする。- 康煕字典
- 儿部五劃
『唐韻』亡辨切『集韻』『韻會』美辨切、𠀤音勉。『玉篇』去也、止也、脫也。『增韻』事不相及也。『正譌』从兔而脫其足。『前漢・賈誼傳』免起阡陌之中。《註》師古曰、免者、言免脫徭役也。
『廣韻』黜也。『韻會』縱也。『前漢・文帝紀』遂免丞相勃、遣就國。
姓。『韻會』衞大夫免餘。
『集韻』武遠切、音晚。默也。
『集韻』無販切、音萬。喪冠也。春秋傳、𨻰侯免擁社。徐邈讀。
『正韻』文運切、音問。娩生子也。
喪禮、去冠括髮也。『通雅』禮記云、公儀仲子之喪、檀公免焉。《註》兔音問、別作絻。
物之鮮者爲免。『禮・內則』菫荁枌楡免薧。《註》免新鮮者、薧乾𨻰者。言菫荁枌楡、或用新、或用舊也。
- 音
- ベン。メン。
- 訓
- ぬぐ。のがれる。まぬがれる。ゆるす。しりぞける。はなつ。うむ。
- 解字(白川)
- 字に二系ある。字形近くして一となり、一字兩義となつた。兔とは關係のない字。
- 一つは、冑を脱ぐ形。逸脱の意がある。『國語・周語中』
左右皆免胄而下拜
、『禮記・曲禮上』冠毋免
のやうに用ゐる。(補註: いづれも免をぬぐと訓ず。) - もう一つは、分娩の象。胯間をひらき、子の生まれる象で、娩の初文。俛焉(補註: つとめはげむ)の意がある。奐、弇、夐、㼱の字形と關係がある。奐は渙然として生子の出るさま。弇は生子を取り出す意。夐、㼱はふぐりの象を含む。分娩の免は、俛、娩、勉の系列を成す。
- 解字(藤堂)
- 會意。免の原字は、女性が股を開いてしやがみ、狹い産道からやつと胎兒が拔け出るさまを示す。上は人の形、中は兩股。下の儿は、胎内から出る羊水。分娩の娩の原字で、やつと拔け出る、のがれ出る意を含む。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 甲骨文は、卩(跪坐する人の形)と帽の形に從ひ、人が冠冕を頭に戴く形を象り、冕の初文。本義は帽子、冠冕、或は帽子を被ること。後に免除、避免を表す。金文は卩に從はず、人あるいは大に從ふ。
- 甲骨文では人名に用ゐる。金文では姓氏に用ゐる。また人名に用ゐる。
- 戰國竹簡では勉の通假字となし、はげむことを表す。また、免除を表す。
- 漢帛書では晚の通假字となす。
- 表
- 當用漢字・常用漢字