説文解字私註 嘼部
嘼部
嘼
- 説文解字
㹌也。象耳、頭、足厹地之形。古文嘼、下从厹。凡嘼之屬皆从嘼。
- 康煕字典
- 口部十二劃
『玉篇』古文畜字。註詳田部五畫。『說文』㹌也、象耳頭足厹地之形。『玉篇』六畜養之曰牲、用之曰嘼。『揚子・方言』嘼之初生、謂之鼻。又𨻰楚之閒、凡人嘼乳而雙產、謂之釐孳。○按周禮天官獸醫註疏、在山曰嘼、在家曰畜。則嘼畜二字、又微有別。
- 音
- キウ。ク。シウ。
- 訓
- けもの。やしなふ。
- 解字(白川)
- 狩獵用の盾の象。羽飾りのついた楯を臺座の上に置き、祝禱を收めた器を前に置いて、狩獵の成功を祈る。金文の字形は明らかに圓い盾の形を主としてゐる。金文に、「執嘼」のやうに、酋、虜酋の意に用ゐる。軍行のときにも盾祭をしたので、その軍獲を嘼といつたのであらう。獸は嘼に獵犬を添へたもので、狩獵の狩の初文。獸の字形によつていへば、嘼は獸の初文。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 單に從ふ。單は武器あるいは狩獵の道具を象り、嘼の本義は狩獵に關係があり、恐らく獸の初文。本義は狩獵。
- 金文は單と丙と口に從ひ、あるいは單と口に從ふ。一説に單の繁文。また一説に獸の省文で、嘼と獸は一字。
- 金文は用ゐて獸となし、狩獵を表す。また、夷邦の首領を表し、典籍に酋につくる。
獸
- 説文解字
守備者。从嘼从犬。
- 康煕字典
- 犬部十五劃
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤舒救切、音狩。『說文』守備者。从嘼从犬。『爾雅・釋鳥』四足而毛謂之獸。『書・益稷』百獸率舞、庶尹允諧。『周禮・天官』獸人掌罟田獸、辨其名物。又『天官・庖人』六獸。《註》鄭司農云、六獸、麋、鹿、熊、麕、野豕、兔也。
『儀禮・特牲饋食禮』棜在其南、南順。實獸于其上、東首。《註》獸、腊也。
- 音
- ジウ
- 訓
- かり。けもの。ほじし。
- 解字(白川)
- 嘼は狩獵に先立つて收穫を祈る儀禮。それに獵犬を加へて狩獵の意を示したもので、狩の初文。卜文、金文には狩獵の狩を獸としるす。後に獸は獸畜の意となり、狩が狩獵の字となつた。
- 解字(藤堂)
- 單(はたき)と口(かこひ)と犬の會意。圍ひの中に追ひ詰めて捕らへる動物を表す。もと狩りの獲物のこと。轉じて、けだものの意。
- 解字(落合)
- 甲骨文は單と犬に從ひ、狩の初文。後に單を聲符の守に替へ、狩の形となる。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 甲骨文、金文は、單と犬に從ふ。單は狩獵の道具。獵犬を連れ道具を以て狩獵に行くことを表す。本義は狩獵。獸字は本來狩獵を表し、後に禽獣を表すのに用ゐるため、別に狩字をつくつて狩獵を表す。
- 甲骨文や早期の金文は同じ形で、單と犬に從ふ。甲骨文に單に從はず干に從ふ字もある。金文では後に口を加へる。
- 甲骨文、金文では本義に用ゐ、田獵を表す。金文ではまた人名に用ゐる。
- 表
- 當用漢字・常用漢字
- 《漢字表字體》獣
- 《人名用許容字體》獸