肘 - 漢字私註

説文解字

肘
臂節也。从。寸、手寸口也。
肉部

康煕字典

部・劃數
肉部三劃

『唐韻』『集韻』陟柳切『韻會』陟肘切『正韻』止酉切、𠀤音帚。『說文』臂節也。从𠕎从寸。寸、手寸口也。《徐曰》寸口、手腕動脈處也。『詩・小雅〔斯干〕如矢斯棘箋』如人挾弓矢、戟其肘。『禮・玉藻』袂可以回肘。又『深衣』袼之高下、可以運肘。『左傳・成二年』張侯曰、自始合、而矢貫余手及肘。

又『釋名』肘、注也。可隱注也。

又『正字通』爲人捉其肘而留之、亦曰肘。『後漢・孔融傳』欲命駕、數數被肘。『杜甫・遭田家泥飮美嚴中丞詩』久客惜人情、如何拒鄰叟。高聲索果栗、欲起時被肘。

又書名。『前漢・藝文志』彊弩將軍王圍肘法五卷。『抱朴子・地眞卷』崔文子肘後經。

又『韻會』一曰一肘二尺、一曰一尺五寸爲一肘、四肘爲一弓、三百弓爲一里。

『集韻』或作䏔。通作𦡴。

音訓

チウ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・有・肘』陟柳切〉[zhǒu]{zau2/zaau2}
ひぢ

解字

白川

形聲。聲符は。寸に紂の聲があるが、恐らく丑の省形に從ふものであらう。丑は指先に力を入れて物を持ち、引き締める意を持つ字。

『説文解字』に臂の節なり。〜。寸は手の寸口なり。とするが、寸口は手首の脈どころの名で、肘とは關係がない。

指先に力を入れるのは丑、ひぢに力を加へるのが肘。

藤堂

(手)の會意。もと丑が腕を曲げたさまを示す字であつたが、十二支の名に轉用されたため䏔字がつくられた。䏔と肘は全く同じ。

【補註】 『説文解字』に䏔を錄し、食肉也。とする。『集韻』のやうに䏔を肘と同じと説くものもある。

落合

指示。甲骨文は腕の部分に指示記號を附けて部位を表示した字。即ち初文はで、點は指示記號。指示記號のない字形もあり、象形字に當たる。

【補註】 漢字多功能字庫は指示記號のない象形字のみを肘の甲骨文として擧げ、指示記號を加へる形はの甲骨文として擧げる。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. ひぢ。人體の腕の部分。《合集》13677貞、疾肘、𦝠。
  2. 地名。《合集》10419辛亥卜爭貞、王不其獲肘射兕。

後に長さの單位に轉用され、原義は篆文以降、を加へた繁文で表す。字音も分化してをり、陰聲の肘が本來の發音、陽聲の寸が轉用されたものであらう。

分化して指示記號が𠃋となつたものは、繁文は肱。

漢字多功能字庫

肘と數字の九は同じ形で、もとは腕のひぢの形を象る。後に數字の九に假借し、九の初文(李孝定)。數字の九に借りた後、九の下に點を加へ、字となつた。また意符のを加へて、肘字となつた。

甲骨文では本義に用ゐる。《合集》13677正疾九(肘)(上揭)は、肘に疾あることをいふ。趙誠は甲骨文の肘は現代漢語の手腕に相當し、手臂の前部を指すとする。

屬性

U+8098
JIS: 1-41-10
常用漢字(平成22年追加)