猋 - 漢字私註
説文解字
- 猋
犬走皃。从三犬。
- 十・犬部
康煕字典
- 部・劃數
- 犬部八劃
『唐韻』甫遙切『集韻』『韻會』『正韻』𤰞遙切、𠀤音標。『說文』犬走貌。从三犬。
又『爾雅・釋天』扶搖謂之猋。《註》暴風从下上。《疏》李巡曰:猋、上也。『釋文』猋、必遙反。
又『爾雅・釋草』猋、藨芀。《註》皆芀荼之別名。《疏》芀、一名猋。又名藨萑、茅之屬。
又『集韻』紕招切、音漂。回風也。『禮・月令』猋、風暴雨總至。《註》回風爲猋。『釋文』本又作飄。徐音方遙反。
音訓・用義
- 音
- ヘウ(漢、呉)
- 訓
- つむじかぜ
犬の走るさま、疾走するさま、速いさまをいふ。
解字
白川
三犬の會意。三匹の犬の走る形。疾走するさまをいふ。
犇、羴、驫など、みな同じ造字法。
猋はまた飆の意に用ゐる。
藤堂
三犬の會意。犬がさつと走り拔けることを表す。
漢字多功能字庫
金文は三犬に從ふ。小篆と同じ。多くの犬が疾走するさまを象る。後に走る意を派生する。
後にまた迅速、疾速の意を派生する。
- 張舜徽『說文解字約注』
犬走謂之猋、猶眾馬謂之驫。犬走本疾、三犬相從、則競奔如飛、故引申有疾速義。
- 『禮記・月令』
猋風暴雨總至。
- 『楚辭・九歌・雲中君』
靈皇皇兮既降、猋遠舉兮雲中。
王逸注猋、去疾皃。
全句で、天上より降下する靈光あり、また迅速に雲中に戻る、の意。
また疾風、暴風の意に解ける。
- 『漢書・刑法志』
猋起雲合、果共軋之。
顏師古注猋、疾風也。如猋之起、言其快。如雲之合、言其盛也。
全句で、(歸順しない軍や仇敵が)狂風のやうに迅速に興り、雲のやうに集まり、最後に(彼を)顚覆した、の意。
後に字義を明確にするために、猋字に風を加へて飆となし、疾風、暴風の意を表す。しかし、飆は完全には猋に取つて代はつてはゐない。
- 『爾雅』
扶搖謂之猋。
陸德明釋文猋、必遙反、『字林』作飆。
下より上に吹く風を猋と稱してゐる。 - 『史記・司馬相如列傳』
陵驚風、歷駭飆
を『漢書・司馬相如傳上』は陵驚風、歷駭猋
につくる。この句は、疾風が越えてゆき、暴風が過ぎてゆくことをいふ。
金文に獨立の猋字は見えず、他字の要素としてのみ用ゐられる。猋は二耒と猋に從ふ協字の要素として用ゐられ、二耒が上にあり、猋が下にあり、地名に用ゐる。ただ『金文編』が誤つて一字を二字に分けてゐる(『金文詁林補』)。[耒耒]と猋を字としてゐるが、二つの字は實際には合はせて一字である。
屬性
- 猋
- U+730B
- JIS X 0212: 43-6
関聯字
猋聲の字
- 𣄠
- 飆