臣 - 漢字私註
説文解字
牽也。事君也。象屈服之形。凡臣之屬皆从臣。植鄰切。
- 三・臣部
説文解字注
牽也。以曡韵釋之。『春秋說』『廣雅』皆曰、臣、堅也。『白虎通』曰、臣者、繵也。屬志自堅固也。事君者。者各本作也。今正。象屈服之形。植鄰切。十二部。按『論語音義』𢘑、植鄰切。古臣字。陸時武后字未出也。武后埊𢘑二字見『戰國策』。六朝俗字也。凡臣之屬皆从臣。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』植鄰切『集韻』『韻會』丞眞切、𠀤音辰。事人之稱。『說文』臣、牽也、事君也。象屈服之形。『白虎通』臣者、纏也、勵志自堅固也。『廣韻』伏也。仕於公曰臣、任於家曰僕。『易・序卦』有父子、然後有君臣、有君臣、然後有上下。『詩・小雅』率土之濱、莫非王臣。
又『前漢・王陵傳』陳平謝曰、主臣。《註》文穎曰、惶恐之辭、猶今言死罪。晉灼曰、主、擊也。臣、服也。言其擊服。惶恐之辭。『通雅』發語敬謝之辭、猶主在上、臣在下、自然敬恐也。
又姓。『奇姓通』唐臣悅、著平陳紀。
又『韻補』叶音禪。『道藏歌』躋景西那東、肆覲善因緣。常融無地官、皆是聖皇臣。
- 部・劃數
- 心部五劃
『字彙補』古文臣字。註詳部首。武后所造、忠心如一之义。
いはゆる則天文字。
音訓
- 音
- シン(漢) 〈『廣韻・上平聲・眞・辰』植鄰切〉[chén]{san4}
- 訓
- おみ
解字
目を縱にした字。後には目も縱向きにつくる。
臣下の意が、目に關はりあるものか、假借義かは判斷不能。
白川
象形。目をあげて上を見る形を象る。大きな瞳を示す。
『説文解字』は牽かるるなり
と、臣、牽の音の關係を以て解するが、兩者の間に聲義の關係はない。また字形について君に事ふる者なり。屈服する形に象る。
(段注本)とするが、字は卜文の望に含まれる形と同じく、上方を見る目の形。
金文に見える小臣は王族出自の者で、聖職に從ひ、臣を統轄する。臣は多く神事に從ひ、もと異族犧牲や神の徒隸たる者を意味した。宮廟に仕へる者を臣工といひ、『詩・周頌』に『臣工』の一篇がある。金文の賜與に臣三品
のやうにいふのは、出自の異なる者三種をいふ。また臣十家
のやうにいふのは、一般の徒隸とは異なるものであらう。
のち出自や身分に關することなく、他に服事するものをいふ。
藤堂
象形。下に伏せて俯いた目を描いたもので、身を固く強張らせて平伏する奴隸。
落合
象形。目を縱向きにした形。
臣下の意に用ゐられてゐるが、その意義については、𦣠(望の初文)などに含まれることから、「見張る人」が起源と考へられてゐる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 臣下。家臣。小臣は殷王に從ふ臣下。殷金文の圖象記號としても使はれてゐる。《合補》1828
貞、呼多臣伐𢀛方。
- 祭祀名。《殷墟小屯中村南甲骨》478
癸亥卜、在子、禦、服于乙母、臣于祖庚、卯羊二䝅二。
- 舊[⿸疒米]臣
- 神名。詳細不明。
- 帝臣
- 神話上の帝の臣下。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、目を縱にした形。人が大きく目を開き、目を怒らせて視るさまを象り、中間の瞳の形が特に大きく、目の縁から突出してゐる。瞋の本字(吳秋輝、汪寧生)。臣字の本義は目を瞋らせて直視すること。後に借りて奴隸を指し、また奴隸から轉じて君主に侍奉ずる官僚を指す。假借義の通用により本義が失はれ、別に形聲字の瞋をつくつて臣の本義を表す。
甲骨文、金文はあるいは瞳孔の中に點を加へて飾筆とする。戰國文字にも瞳孔を貫く縱劃のあるものがあり、瞳孔の上下に縱劃を加へるものもある。小篆はこれらの形のいづれも繼承してゐない。
甲骨文、金文では奴隸を指す。
- 《合集》849正
州臣㞢(有)逃
は州地の奴隸の逃亡をいふ。『書・費誓』臣妾逋逃。
孔安國傳役人賤者、男曰臣、女曰妾。
- 令簋
姜商(賞)令貝十朋、臣十家
の、朋は貝の單位。全句で姜は十朋の貝幣と十家の奴僕を賞賜したことをいふ。
また奴隸の義から屈服した者の意を派生し、更に君に仕へる臣僚の意を派生する。甲骨文、金文でまた臣僚を指す。
- 《合集》12
小臣令眾黍
は、小臣が群衆に耕作を命ずることをいふ。 - 中山王方壺
述(遂)定君臣之位。
また金文では氏族名や人名となす。
屬性
- 臣
- U+81E3
- JIS: 1-31-35
- 當用漢字・常用漢字
- 𢘑
- U+22611
関聯字
臣に從ふ字を漢字私註部別一覽・目部・臣枝に蒐める。