事 - 漢字私註
説文解字
- 事
職也。从史、之省聲。
- 三・史部
- 𠭆
古文事。
康煕字典
- 部・劃數
- 亅部七劃
- 古文
- 叓
- 𠭏
『唐韻』鉏吏切『集韻』『韻會』仕吏切、𠀤音示。大曰政、小曰事。『廣韻』使也、立也、由也。『釋名』事、偉也。偉立也。凡所立之功也。『書・大禹謨』六府三事允治。
又『詩・小雅』三事大夫、莫肯夙夜。《註》三公也。
又『詩・大雅』三事就緒。《註》三農之事也。
又奉也。『禮・曲禮』年長以倍。則父事之。又營也、治也。『史記・曹參世家』卿大夫以下吏及賓客、見參不事事。
又『廣韻』『類篇』𠀤側吏切。事刃、與倳剚同。別見人部倳字註。
又『韻補』叶逝支切、音時。『蔡邕詞』帝曰休哉、命公三事。乃耀柔嘉、是式百司。
又叶詩紙切、音始。『詩・召南』于以用之、公侯之事。叶沚。
又叶疎語切、書上聲。『韓非子・揚權篇』使雞司夜、令狸執鼠。皆用其能、上乃無事。
又叶常御切、音樹。『易林』雖慍不去、復職內事。
- 部・劃數
- 又部五劃
『玉篇』古文事字。註見亅部七畫。
- 部・劃數
- 又部八劃
『說文長箋』古文事字。註詳亅部七畫。
中國哲學書電子化計劃の版は「註詳丨部七畫」とするが、直した。
異體字
説文解字の重文。古文。
康煕字典は使の古文に擧げるが、見出しには採らず、また篆文を事の古文に擧げる。
簡体字。
音訓
- 音
- ジ(呉) シ(漢) 〈『廣韻・去聲・志・事』鉏吏切〉
- 訓
- こと。こととする。つかへる。さす。さしはさむ。つかふ。
解字
白川
史と吹き流しの形の會意。史は木の枝に祝詞の器をつけて捧げる形。廟中の神に告げ祈る意で、史とは古くは内祭をいふ語であつた。外に使して祭るときには、大きな木の枝にして偃游(吹き流し)をつけて使し、その祭事は外祭といふ。それを王事といひ、王事を奉行することは政治的從屬、すなはち「事へる」ことを意味した。
史、使、事は一系の字。卜辭には「人を河に事せしめんか」「人を嶽に事せしめんか」のやうにいひ、河嶽の祭祀はいはゆる外祭。
金文に「〜史しむ」のやうに、史を使役に用ゐる。
藤堂
計算に用ゐる竹の籤と手の形の會意。役人が竹棒を筒の中に立てるさまを示す。
原義の立てる、立つの意は、倳字に保存され、事は人の掌る所定の仕事や役目の意に轉じた。また、仕(傍に立つて仕へる)に當てる。
落合
使史吏事は同源。甲骨文は使者を表してをり、使の初文で、字形は吏に相當。
後に用義、字形が分化し、事はつかへるの意。
漢字多功能字庫
甲骨文は手に從ふ。後に史、吏、事、使に分化した。金文は多く縱劃の上端の分かれない形が史、分かれる形が吏、事である(參・《金文形義通解》、《金文常用字典》、《新金文編》、陳英傑)。
金文での用義は次のとほり。
- 職事(ここでは職務の意か?)を表す。
- 麥鼎
用從井(邢)侯征事。
- 克鼎
敬[夕丮](夙)夜用事、勿灋(廢)朕令。
- 麥鼎
- 事件を表す。
- 琱生簋
隹(唯)五年正月己丑、琱生又(有)事。
- 琱生簋
- 官名を表す。
- 小盂鼎
三事大夫入服酉(酒)。
- 小盂鼎
- 使役を表す。
- 小臣守簋
王事(使)小臣守事于夷、賓馬兩、金十鈞。
一つ目の事は使で、使役の意、二つ目の事は事奉(ここではつかへるの意か?)。王が小臣守をして東方夷地で事奉せしむることをいふ。
- 小臣守簋
史、吏、事、使が分化した後、事は職事を表す。
- 『尚書・立政』
任人、準夫、牧、作三事。
王引之『經義述聞・尚書上』三事、三職也。為任人、準夫、牧夫之職、故曰作三事。
- 『國語・魯語上』
諸侯祀先王、先公、卿大夫佐之受事焉。
韋昭注事、職事也。
事は事情、事件を表す。
- 『論語・為政』
有事、弟子服其勞。有酒食、先生饌。
- 《睡虎地秦簡・日書乙種》簡89壹
五月、東井、百事兇(凶)。
また特に、祭祀、盟會、兵革などを含む、君侯の重要な事情を指す。
- 『左傳・成公十三年』
國之大事、在祀與戎。
- 『儀禮・聘禮』
久無事、則聘焉。
鄭玄注事謂盟會之屬。
長い間盟會の事がなく、使者を派することについて聘問する、の意。 - 『春秋穀梁傳・隱公十一年』
天子無事、諸侯相朝、正也。
范甯注事謂巡守、崩葬、兵革之事。
轉じて事故、變故を表す。
- 『韓非子・五蠹』
是故無事則國富、有事則兵強、此之謂王資。
- 『新書・過秦下』
天下多事、吏不能紀、百姓困窮而主不收䘏。
從事、實行を表す。
- 『論語・顏回』
回雖不敏、請事斯語矣。
- 『戰國策・秦策五』
今子聽吾計事、求歸、可以有秦國。
任用を表す。
- 『墨子・尚賢上』
是在王公大人為政於國家者、不能以尚賢事能為政也。
- 『韓非子・亡徵』
境內之傑不事、而求封外之士。
事奉を表す。
- 『荀子・非相』
幼而不肯事長、賤而不肯事貴、不肖而不肯事賢、是人之三不祥也。
- 《上博竹書一・緇衣》簡4
臣事君、言丌(其)所不能、不[言𠃌一](詒)丌(其)所能、則君不[炏衣](勞)。
典故(典據となる故事)を表す。
- 南朝梁・鍾嶸『詩品・總論』
至乎吟詠情性、亦何貴於用事。
- 『顏氏家訓・文章』
自古宏才博學、用事誤者有矣。
屬性
- 事
- U+4E8B
- JIS: 1-27-86
- 當用漢字・常用漢字
- 叓
- U+53D3
- JIS X 0212: 20-59
- 𠭏
- U+20B4F
- 亊
- U+4E8A
- JIS: 1-48-15