史 - 漢字私註

説文解字

史
記事者也。从。中、正也。凡史之屬皆从史。疏士切。
史部

説文解字注

史
記事者也。〔禮記〕玉藻』動則左史書之、言則右史書之。不云記言者、以記事包之也。从又持中。中、正也。君舉必書。良史書法不隱。疏士切。一部。凡㕜之屬皆从㕜。

康煕字典

部・劃數
口部二劃
古文

『唐韻』疎士切『集韻』『韻會』爽士切『正韻』師止切、𠀤音使。『說文』記事者也。『玉篇』掌書之官也。『世本』黃帝始立史官、倉頡沮誦居其職。『書・立政』周公若曰、太史司𡨥蘇公、式敬爾繇獄、以長我王國。『詩・小雅』旣立之監、或佐之史。『禮・曲禮』史載筆、士載言。又『玉藻』動則左史書之、言則右史書之。

又『周禮・天官・宰夫』八職、五曰府、掌官契以治藏、六曰史、掌官書以贊治。○按『周禮』凡官屬皆有府史。

又『周禮・天官』女史掌王后之禮職。『春官』大史掌建邦之六典、小史掌邦國之志、內史掌王之八枋之灋、外史掌書外令。

又御史、長史、刺史、𠀤漢官名。

又太史、九河之一。『爾雅・釋水』太史。《疏》李巡云、禹大使徒衆、通其水道、故曰太史。

又姓。『廣韻』周卿、史佚之後、出建康。又『廣韻』漢複姓、五氏、【世本】衞有史朝朱駒、【漢書・藝文志】有靑史氏著書、又有新豐令王史音、吳有東萊太守太史慈、晉有東萊侯史光。

又叶疎土切。『易林』重黎祖後、司馬大史。陵氏之災、罹宮悲苦。

『說文』本作。从又持中。中、正也。

部・劃數
又部四劃

『正韻』、古作㕜。註見口部二畫。『說文』記事者也。从又、持中。中、正也。《徐曰》記事當主于中正也。

音訓

シ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲』踈士切〉[shǐ]{si2}
ふびと。ふみ。

解字

白川

の會意。中は祝禱の器を木に著けて捧げ、神に祝告して祭る意で、卜辭に見える史は内祭をいふ。卜辭に「又史」といふ語として見える。外に出て祀ることをといひ、その字はまた使の意にも用ゐる。事は史に吹き流しをつけた形で、史が内祭であるのに對して、外祭であることを示す。王使が祭の使者として行ふことが王事であり、その王事に服することが祭政的支配の古い形態であつた。

史、使、事はもと一系の字。祝詞を扱ふ者を巫史といひ、その文章を史といひ、文の實に過ぎることをまた史といふ。巫史の文には史に過ぎることが多かつたのである。祭祀の記錄が、その祭政的支配の記錄でもあつた。

『説文解字』に、史官が事を記すのにその中正を守る意であるとするが、中正のやうな抽象的觀念を手に執ることは不可能。それで江永は中を簿書にして簿書を奉ずる形とし、また王國維や内藤湖南は中を矢の容器の形とし、鄕射禮などにおける的中の數を記錄するものが史であるとする。

卜辭に史を内祭とし、また史、使、事の系列字の用義から考へると、史が祭祀を意味する字であつたことは疑ひがない。

藤堂

(竹札を入れる筒)と(手)の會意。記錄を記した竹札を筒に入れて立ててゐる記錄役の姿を示し、特定の役目の責任を守りあづかる意を含む。

落合

使史吏は同源。甲骨文は使者を表してをり、使の初文で、字形は吏に相當。

後に用義、字形が分化し、史は記錄官の意。

漢字多功能字庫

史、吏、、使はもと一字から分化した。甲骨文は手に從ひ、手に何かを所持するさまに象る。所持するものが何であるかは諸説ある。吳其昌は旗幟を手に執る形に象るとし、そこから執事の義を派生するといふ。王國維は盛筴(簡冊)の器に象るとする。馬敍倫は手に筆を執る形に象り、事を記すの會意とする。陳夢家は田獵の道具に象るとする。徐中舒は上端に叉のある野獸を捕獲するための道具に象るとする。

『説文解字』は史字の本義を事を記す者とする。古文字材料と傳世文獻を見るに、先秦の史字の性質はかなり廣範圍に該當する(季旭昇)。王國維『釋史』に、史字の本義は書を持する人、轉じて大官や庶官の稱、また轉じて職事の稱。その後三者は各々專字を需め、史、吏、事の三字は小篆で截然(はつきり)と區別される。書を持する者を史といひ、人を治める者を吏といひ、職事(ここでは職務の意か)を事といふ。この區別は秦漢の際に現はれたもので、『詩』、『書』ではあまり區別しない。といふ。

甲骨文の用義は次のとほり。

金文での用義は次のとほり。

傳世文獻では多く官名を表し、主に祭祀、卜筮、記事などの職を擔當する。

また歷史や史書を表す。

屬性

U+53F2
JIS: 1-27-43
當用漢字・常用漢字
U+355C