於 - 漢字私註
説文解字
- 烏の重文第二。
象古文烏省。
- 四・烏部
説文解字注
象古文烏省。此卽今之於字也。象古文烏而省之。亦𠦶省爲革之類。此字葢古文之後出者。此字旣出。則又于於爲古今字。『〔爾雅〕釋詁』、《毛傳》、《鄭注》經皆云「亏、於也」。凡經多用于、凡傳多用於、而烏鳥不用此字。
康煕字典
- 部・劃數
- 方部・四劃
- 古文
- 𣱏
- 𤕘
『唐韻』哀都切『集韻』『韻會』『正韻』汪胡切、𠀤同烏。『韻會』隷變作於。古文本象烏形、今但以爲歎辭及語辭字、遂無以爲鴉烏字者矣。
又『爾雅・釋詁・註』於乎皆語之韻絕。《疏》歎辭也。『書・堯典』僉曰、於、鯀哉。『詩・周頌』於穆淸廟。又『周頌』於乎不顯。○按或作嗚烏、音義皆同。
又『廣韻』央居切『集韻』『韻會』『正韻』衣虛切、𠀤音淤。語辭也。『博雅』於、于也。○按『說文』于訓於也、蓋于於古通用。凡經典語辭皆作于。
又『廣韻』居也。『韓愈・示兒詩』前榮饌賓親、冠昏之所於。『朱子・考異』所、或作依。○按所於作依於、則是依之以居也。【孔融書】舉杯相於。【曹植樂府】心相於。【杜甫詩】良友幸相於。卽相依以居之意。
又『揚子・太玄經』白舌於於。《註》多難貌。
又『廣韻』代也。『集韻』往也。
又地名。『戰國策』商於之地六百里。
又姓。『姓氏急就篇』黃帝臣於則造履。『前漢・功臣表』涉安侯於單。
- 部・劃數
- 手部四劃
俗於字。
- 部・劃數
- 氏部九劃
『玉篇』古文於字。註詳方部四畫。
- 部・劃數
- 父部九劃
『五音集韻』古文於字。註詳方部四畫。
集韻
- 卷・韻・小韻
- 平聲一・魚第九・於
- 反切
- 衣虛切〔音1〕
衣虛切。
于也。居也。往也。一曰、語辭。
亦姓。
古作。俗作扵、非是。
文九。
異體字
或體。
音訓義
- 音
- オ(呉) ヨ(漢)⦅一⦆
- ウ(呉) ヲ(漢)⦅二⦆
- 訓
- おいて。おける。に。にて。より。⦅一⦆
- ああ⦅二⦆
- 官話
- yú⦅一⦆
- wū⦅二⦆
- 粤語
- jyu1⦅一⦆
- wu1⦅二⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上平聲・魚・於』央居切
- 『集韻・平聲一・魚第九・於』衣虛切〔集韻1〕
- 『五音集韻・上平聲卷第二・魚第七・影・三於』央居切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 官話
- yú
- 粤語
- jyu1
- 日本語音
- オ(呉)
- ヨ(漢)
- 訓
- おいて
- おける
- に
- にて
- より
- 義
- 居る。在る。『史記・司馬相如傳』
麗靡爛漫於前、靡曼美色於後。
(古今文字集成引『漢語大詞典』を參照。) - 往く。『史記・齊太公世家』
晉使郤克於齊、齊使夫人帷中而觀之。
(同上) - 于と通用し、介詞に用ゐる。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・上平聲・模・烏』哀都切
- 『集韻・平聲二・模第十一・烏』汪胡切〔集韻2〕
- 『五音集韻・上平聲卷第二・模第九・影・一烏』哀都切
- 聲母
- 影(喉音・全清)
- 官話
- wū
- 粤語
- wu1
- 日本語音
- ウ(呉)
- ヲ(漢)
- 訓
- ああ
- 義
- 烏と同樣に感歎詞に用ゐる。於乎、於戲は、嗚呼に同じ。『廣韻』に
古作於戲、今作嗚呼。
とある。 - 於菟は春秋楚の方言で虎を謂ふ。(『左傳・宣四年』)
解字
白川
『説文解字』に烏の古文としてこの字形を出してゐるが、字形についての説明はない。
金文の字形は、烏の羽を解いて繩に掛け渡した形。烏も死烏を懸けた形で、いづれも鳥害を避けるためのもの。その鳥追ひの聲を感動詞に用ゐた。金文に「烏虖」や於の初文を感動詞に用ゐる。
藤堂
㫃(旗)と二印(重なつて止まる)の會意。じつとつかへて止まることを示す。
但し、ああと鳴くからすを烏といふのと同じく、於もまたああといふ感嘆詞に當てる。
『説文解字』はからすの形の變形であるとする。
漢字多功能字庫
甲骨文にはただ于があつて於字はない。於は烏から分化した字で、後に音が近いことから借用して于となした。
金文の於は西周晩期に初めて見え、字は鳥の形に象り、烏の省文。高鴻縉は、烏は鳥が橫向きに立つ形に象り、於は鳥に飛ぶさまを象るとする。噩君啓舟節の於字と『説文解字』の烏の古文は相近い。於と烏は同じく、嘆詞に用ゐる。
- 西周早期・效尊
烏(嗚)虖(呼)!
- 戰國・中山王鼎
烏虖! 語不廢哉!
於はまた音が近いことから借用して介詞の于となす。
- 春秋晚期・[刑田]䈪鐘
晉人救戎於楚境
。 - 戰國・鄂君啟舟節
大司馬邵陽敗晉師於襄陵之歲
。
于の上古音は匣母魚部、於は影母魚部。兩者はただ開合口のみが異なる(參・郭錫良)。西周晩期以前の金文は多く于字を用ゐ、春秋以後は多く於字を用ゐる。
このほか、於は人名に用ゐる。越王者旨於賜矛など。
屬性
- 於
- U+65BC
- JIS: 1-17-87
- 人名用漢字
- 扵
- U+6275
- 𣱏
- U+23C4F
- 𤕘
- U+24558
- 𡖗
- U+21597
関聯字
於に從ふ字を漢字私註部別一覽・鳥部・於枝に蒐める。