戎 - 漢字私註
説文解字
兵也。从戈从甲。
- 十二・戈部
康煕字典
- 部・劃數
- 戈部・二劃
『唐韻』如融切『集韻』『韻會』而融切『正韻』而中切、𠀤音絨。『說文』兵也。『禮・月令』以習五戎。《註》五戎、弓殳矛戈戟也。『周禮・秋官・掌交』九戎之威。《註》九戎、九伐之戎也。
又兵車名。大曰元戎、小曰小戎。『詩・秦風』小戎俴收。又『小雅』元戎十乗。
又『禮・王制』西方曰戎。
又大也。『詩・周頌』念兹戎功。《箋》戎功、大功也。『書・盤庚』乃不畏戎毒于遠邇。《註》戎毒、大毒也。『揚子・方言』宋魯𨻰衞謂大曰戎。
又汝也。『詩・大雅』戎有良翰。『又』戎雖小子。《註》汝也。
又相也。『詩・小雅』烝也無戎。《傳》戎、相也。
又拔也。『揚子・方言』江淮南楚之閒謂拔曰戎。
又姓。春秋戎律、漢戎賜、明戎廉。
又『集韻』如蒸切、音仍。與扔通。『前漢・古今人表』有扔君。或作𢫨。亦省作戎。
又『韻補』叶而主切、音汝。『詩・大雅』南仲太祖、太師皇父、整我六師、以脩我戎。
本作𢦦。俗作[⿰牛戎]。
- 部・劃數
- 戈部・五劃
『說文』戎本字。兵也。
音訓
- 音
- ジュウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・東・戎』如融切〉
- 訓
- つはもの。いくさぐるま。いくさ。えびす。なんぢ。
解字
白川
戈(ほこ)と干(たて)の會意。干戈を組み合はせた字で、兵器をいひ、また軍事をいふ。
説文解字に兵なり。戈甲に從ふ。
とするが、金文の字形は甲ではなく、干(盾)の形。
金文に戎工、戎攻、戎𬆢、戎兵などの語がある。また西戎、戎狄のやうに夷狄の意に用ゐる。『詩』にも戎功、戎醜のやうな用例がある。
藤堂
戈と甲(鎧)の會意で、樣々な兵器を表す。黏り強くて、壞れない意を含む。
落合
甲骨文は武器の戈と盾の象形の毌の略體の會意。武器と楯で軍備を表してをり、軍事行動を象徵してゐる。毌の略體を更に甲(十字形)に簡略化した字體がある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 軍事行動の意。《合集》27997
系方叀𠭯方作戎。
- 地名。《合集》22043
丁未卜、其征戎、翌庚戌。
後代には蔑稱的に蠻族の汎稱として用ゐられたが、甲骨文にその用法は見えない。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は戈と盾の初文に從ふ。戈も盾も武器であり、故に戎の本義は武器である。轉じて戰爭、軍事を表す。
盾字は後に線條化して十形になり、古文字の甲の形に近く、ゆゑに小篆は甲に從ふ。
甲骨文では地名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 軍事を表す。大盂鼎
迺詔夾死(尸)𤔲戎
。 - 外族を表す。[冬戈]鼎
率虎臣御(禦)淮戎
。古く外族と周王朝は常時戰爭をしてゐたので、軍事の戎で以て之を稱する。 - 人名を用ゐる。
- 叔尸鐘
戎兵
は兵器を指す。 - 禹鼎
戎車
は兵車を指す。
屬性
- 戎
- U+620E
- JIS: 1-29-31
- 𢦦
- U+229A6
関聯字
戎聲の字
- 駥
- 娀