震 - 漢字私註
説文解字
劈歴、振物者。从雨辰聲。『春秋傳』曰、震夷伯之廟。
- 註に
臣鉉等曰、今俗別作霹靂,非是。
といふ。 - 十一・雨部
籒文震。
説文解字注
劈歷振物者。劈歷、疾雷之名。『〔爾雅〕釋天』曰、疾靁爲霆。『倉頡篇』曰、霆、霹靂也。然則古謂之霆。許謂之震。『詩〔小雅〕十月之交』『春秋・隱九年』『僖十五年』皆言震。振與震曡韵。『春秋正義』引作震物爲長。以能震物而謂之震也。引申之、凡動謂之震。辰下曰、震也。『春秋傳』曰、震夷伯之廟。『左氏・僖十五年』經、傳皆有之。必引此者、以爲劈歷震物之證也。『史記〔殷本紀〕』殷武乙暴靁震死。神道設敎之至顯者也。
籒文震。
康煕字典
- 部・劃數
- 雨部・七劃
- 古文
- 𩆉
『唐韻』章刃切『集韻』『韻會』『正韻』之刃切、𠀤音振。『說文』劈歷振物者。从雨辰聲。《註》徐鉉曰、今俗別作霹靂、非是。『易・說卦』震爲雷。『詩・小雅』㷸㷸震電。《傳》震、雷也。『春秋・僖十五年』震夷伯之廟。《疏》雷之甚者爲震。『釋名』震、戰也。所擊輒破、若攻戰也。
又卦名。『易・說卦』萬物出乎震。震、東方也。
又『易・說卦』震、動也。『書・舜典』震驚朕師。『盤庚』爾謂朕、曷震動萬民以遷。『詩・周頌』薄言震之。莫不震𤴁。『春秋・文九年』地震。《疏》【公羊傳】曰、震者何、動地也。『周語』伯陽父曰陽伏而不能出、隂迫而不能𤇏、於是有地震。
又『爾雅・釋詁』震、懼也。『易・震卦』洊雷震、君子以恐懼修省。
又『廣韻』威也。『易・未濟』震用伐鬼方。『詩・大雅』王奮厥武、如震如怒。
又『廣韻』起也。『易・雜卦傳』震、起也。
又『公羊傳・僖九年』葵丘之會、桓公震而驚之、叛者九國。震之者何、猶曰振振然。
又『爾雅・釋詁』娠、震動也。《註》娠、猶震也。《疏》【大雅・生民】云、載震載夙。【昭元年・左傳】曰、邑姜方震大叔。【哀元年・左傳】曰、后緡方震。皆謂有身爲震、故云娠猶震也。
又『書・禹貢』震澤底定。《傳》震澤、吳南太湖名。
又『集韻』升人切、音申。與娠同。女姙身動也。『左傳・震動釋文』震又音申、懷姙也。『集韻』通作㑗。
又『集韻』一曰官婢女隷謂之娠。
又『韻會』『正韻』𠀤之人切、音眞。怒也。『班固・東都賦』赫然發憤、應者雲興。霆擊昆陽、憑怒雷震。『前漢・敘傳』票騎冠軍、猋勇紛紜。長驅六舉、電擊雷震。《註》師古曰、震音之人反。
又『字彙補』震旦、中國也。『梁書』盤盤國稱梁主爲震旦天子。从之人切。
- 部・劃數
- 雨部・十三劃
『字彙補』古文震字。註詳七畫。
- 部・劃數
- 備考・雨部
『篇海類編』籀文震字。
音訓・用義
- 音
- シン(漢、呉) 〈『廣韻・去聲・震・震』章刃切〉[zhèn]{zan3}
- 訓
- ふるへる。ふるはす。いかづち(震雷、震霆)。
解字
白川
形聲。聲符は辰。辰に振動の意がある。
『説文解字』に劈歴、物を振はす者なり。
とあり、劈歴は霹靂、本邦でいふ「はたたかみ」に當たる。重文として錄する籀文の字形には、兩火を加へてをり、『春秋經・僖十五年』震夷伯之廟
(夷伯の廟に震す)は雷火に擊たれることをいふ。
『詩・大雅・常武』如雷如霆、徐方震驚
(雷の如し霆の如し、徐方、震驚す)と武威に喩へる。
卜文に「茲の邑に𬅾すること亡きか」「今夕、𠂤(師)は𬅾すること亡きか」とは、軍の震驚することをいふ。夜間に、故なく軍衆が震驚することがあつたのであらう。
辰は蜃。蜃肉を豫兆に用ゐることがあつた。
藤堂
雨(天の現象)と音符辰の會意兼形聲。辰は、蜃(二枚貝)の原字で、びりびりと震へる肉が見えるさまを描いた象形字。震は、びりびりと震へる雷のこと。
振と同系の言葉。しかし、振は主に他動詞に用ゐる。
落合
形聲。甲骨文は、足の形の止または濡れた足を表す沚を意符、辰を聲符とし、初文は𬅾の形。意符に止や沚を用ゐた理由は明らかではないが、甲骨文では震動(パニック)を意味して用ゐられてをり、人々の慌てふためく樣子を象徵してゐるのかも知れない。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 震動。人々のパニックを意味し、師(軍事駐屯地)や邑(都市)における災害として占はれてゐる。《合補》1847
乙丑卜㱿貞、茲邑亡震。
- 人名。第一期(武丁代)。《合集》5766
辛未卜貞、令震以射、從祈山…方我…。
後に震雷や地震の意味で用ゐられ、字形も篆文で止の部分が天候に關係することを表す意符の雨に置換された。
漢字多功能字庫
雨に從ひ辰聲。本義は雷。『説文解字』震劈歴振物者。(後略)
《段注》霹靂、疾雷之名。
- 『詩・小雅・十月之交』
燁燁震電、不寧不令。
毛傳震、雷也。
震は雷擊を表す。『易・震』震不于其躬于其鄰、無咎。
高亨注巨雷不擊其人之身、擊其鄰人。
また震動(震へる、搖れる、心理的な衝擊を與へる、心を動かす)を表す。『詩・魯頌・閟宮』不虧不崩、不震不騰。
毛傳震、動也。
威勢、威嚴を表す。『詩・商頌・長髮』昔在中葉、有震且業。
鄭玄箋震、猶威也。
また驚懼を指す。『逸周書・作雒』二年、又作師旅、臨衛政殷、殷大震潰。
朱右曾校釋震、懼。
震は八卦の一。雷震を象徵する。また六十四卦の一。卦形は震下震上。『易・震』『象』曰、洊雷、震。
孔穎達疏洊者、重也、因仍也。雷相因仍、乃為威震也。
また東方を指す。『易・說卦』萬物出乎震。震、東方也。
屬性
- 震
- U+9707
- JIS: 1-31-44
- 當用漢字・常用漢字
- 𩆉
- U+29189
- 𩇒
- U+291D2