説文解字私註 舁部
舁部
- 文四 重三
舁
- 説文解字
- 舁𦥠
共舉也。从𦥑从廾。凡舁之屬皆从舁。讀若余。
- 康煕字典
- 臼部四劃
- 《古文》𦥠
『廣韻』以諸切『集韻』『韻會』羊諸切『正韻』雲俱切、𠀤音余。『說文』共舉也。『徐曰』用力也。兩手及爪皆用也。
『正韻』轝車也。又『集韻』苟許切、音舉。
『正韻』羊茹切、音豫。義𠀤同。
『集韻』或作𢌱。○按字彙譌入五畫、非。今改正。
- 音
- ヨ。キョ。
- 解字(白川)
- 會意。上下左右より手を加へて、ものを持ち上げる形。擔いで運ぶことをいふ。
- 解字(藤堂)
- 會意。四本の手で同時に擔ぎ上げること。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 小篆は四手が竝んで擧がる形。一説に、上側の兩手と下側の兩手の間で物を渡す形、給與の與の初文といふ。
- 訓
- かく。かつぎあげる。
䙴
- 説文解字
- 𢍱
升高也。从舁囟聲。
- 𠨧
𢍱或从卩。
- 𢍹
古文𢍱。
- 康煕字典
- 襾部五劃
- 《古文》𦧂
『集韻』相然切、音仙。『類篇』本䙲字、或从㔾。升高也。
親然切、音遷。義同。
『廣韻』作𠨧。
- 康煕字典・𢍱
- 廾部十三劃
『玉篇』且然切『唐韻』七然切、𠀤音千。『說文』升高也。从舁、囟聲。
- 康煕字典・𠨧
- 卩部十六劃
『唐韻』『集韻』𠀤與𦦉同。
『正字通』同遷。『前漢・律歷志』周人𠨧其行序。《註》鄧展曰、𠨧、去也。
- 康煕字典・𦦉
- 臼部九劃
『玉篇』䙴本字。
- 音
- セン
- 訓
- うつる。のぼる。
- 解字(白川)
- 死屍の形と𠬞の會意。囟は死者の鬼面。鬼頭の坐する(㔾)人を、前後の人が兩手で輿にして他に遷す意で、恐らく一時殯屋に收めるのであらう。その風化を待つて葬る再葬の俗があつた。死を僊化といひ、神僊の思想より羽化登仙の意を生じて、「高きに升る」といふ。もと葬法に關する字。僊、遷の初文。
- 解字(藤堂)
- 兩手と㔾(人の屈んだ形)と西または囟(穴の空いた頭の泉門)の會意、西または囟は亦た音符。人が拔け去る動作を示す。
與
- 説文解字
黨與也。从舁从与。
- 𢌱
古文與。
- 康煕字典
- 臼部八劃
- 《古文》𢌱𦦲𠔔
『廣韻』弋諸切『正韻』弋渚切『集韻』『韻會』演女切、𠀤音予。『說文』黨與也。『戰國策』是君以合齊與强楚。《註》與、黨與也。『管子・八觀篇』請謁得于上、則黨與成于下。
『廣韻』善也。『禮・禮運』諸侯以禮相與。
『增韻』及也。『易・說卦』是以立天之道、曰隂與陽。立地之道、曰柔與剛。立人之道、曰仁與義。
許也、從也。『論語』吾與點也。『管子・形勢解』鬼神助之、天地與之。
待也。『論語』歲不我與。
『博雅』如也。『前漢・韓信傳』大王自料、勇悍仁彊孰與項王。《註》師古曰、與、如也。『司馬相如・子虛賦』楚王之獵、孰與寡人。
施予也。『禮・曲禮』與人者、不問其所欲。『周禮・春官・大卜』以邦事作龜之八命、一曰征、二曰象、三曰與。《註》與、謂予人物也。
助也。『戰國策』吾將深入吳軍、若扑一人、若捽一人、以與大心者也。《註》與、猶助也。
類也。『周語』夫禮之立、成者爲飫、昭明大節而已、少曲與焉。《註》與、類也、威儀少比類也。
以也。『詩・召南』之子歸、不我與。『朱註』與、猶以也、以謂挾己而偕行也。
和也。『戰國策』內𡨥不與、外敵不可拒。《註》𡨥猶亂、與猶和也。
用也。『詩・唐風』人之爲言、苟亦無與。《傳》無與、弗用也。
數也。『禮・曲禮』生與來日。《註》與、猶數也。
語辭。『禮・表記』君子與其有諾責也、寧有已怨。
容與、閑適貌。『莊子・人閒世』因案人之所感、以求容與其心。《註》以求從容自放、而遂其侈心也。『史記・司馬相如傳』楚王乃弭節、裴回翱翔容與。《註》索隱曰、言自得。
『正字通』大與、官名、主爵祿之官。
不與、國名。『山海經』有不與之國、烈姓黍食。
姓。
『廣韻』羊洳切『集韻』『韻會』『正韻』羊茹切、𠀤音豫。參與也。『正韻』干也。『中庸』夫婦之愚、可以與知焉。『周禮・冬官考工記』國有六職、百工與居一焉。
縣名。『史記・曹相國世家』參以中涓從、將擊胡陵方與。《註》索隱曰、地理志、二縣皆屬山陽。正義曰、與、音預。
『正字通』疑慮未決也。通作豫。『前漢・昌邑王傳』楊敞猶與無決。又『陳湯傳』士卒猶與。通作豫。
『集韻』『韻會』羊諸切『正韻』雲俱切、𠀤音余。語辭。『論語』其爲仁之本與。『禮・檀弓』曾子曰、微與。其嗟也可去、其謝也可食。《疏》微、無也。與、語助。
『詩・小雅』我黍與與、我稷翼翼。《箋》與與、翼翼、蕃廡貌。
『論語』與與如也。《註》威儀中適貌。
舒也。『前漢・禮樂志』朱明盛長、旉與萬物。《註》師古曰、敷與、言開舒也。與、弋於反。
人名。『書・舜典』垂拜稽首、讓于殳斨曁伯與。《傳》殳斨、伯與、二臣名。『釋文』與、音餘。
山名。同輿。『山海經』敦與之山。《註》按名勝志作敦輿山。『又』苦山之首、曰休與之山。《註》與或作輿。
『集韻』倚亥切、音欸。与也。
○按說文与訓賜予也、一勺爲与。與訓黨與也。今俗與字通作与。
- 訓
- ともにする。くみする。あづかる。あたへる。
- 解字(白川)
- 与を四手を以て捧げてゐる形の會意字。更に下に手を加へると、擧げる意となり、擧げ運ぶ意となる。与は象牙二本を組み合はせた形と見られ、そのやうに貴重なものを共同して奉じて運ぶ意であらう。共同の作業であるから、ともにする意となり、運んで他に移すので、賜與の意となる。
- 解字(藤堂)
- 四手と牙の會意、牙は亦た音符。与は牙の原字と同形で、嚙み合つた姿を現す。與は更に四手を添へて、二人が兩手で一緒に物を持ち上げるさまを示す。嚙み合はす、力を合はせるなどの意を含む。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 金文は舁と牙に從ふ。舁も牙も聲符。上側の兩手と下側の兩手の間で牙を受け渡す形を象る。本義は賜予、給與。古人に牙を贈る習俗があり、今でも「贈牙締婿」の俗の遺る部族がある。
- 一説に四手が竝んで擧がるを象り、舁と一字から分化した字といふ。一説に二人が手を用ゐて牙を引つ掛ける形、古代牙を拔くのは地位の象徴で、榮譽の標であつたといふ。一説に牙はただ聲符であるといふ。
- 金文では連詞に用ゐ、和、同を表す。
- 戰國竹簡では説文解字の古文に同じく𢌱につくる。
- 表
- 當用漢字・常用漢字
- 《漢字表字體》与
- 《人名用許容字體》與
第十四勺部に与字を錄す。
興
- 説文解字
起也。从舁从同。同力也。
- 康煕字典
- 臼部九劃
『唐韻』『韻會』『正韻』𠀤虛陵切、音𨞾。『爾雅・釋言』興、起也。『詩・小雅』夙興夜寐。『禮・中庸』國有道、其言足以興。《註》興、謂起在位也。
『廣韻』盛也。『詩・小雅』天保定爾、以莫不興。《箋》興、盛也。
『五音集韻』舉也。『周禮・夏官・大司馬』進賢興功、以作邦國。《註》興、猶舉也。
動也。『周禮・冬官考工記・弓人』下柎之功、末應將興。《註》興、猶動也。
『詩・大雅』興迷亂于政。《箋》興、猶尊尚也。
『周禮・地官・旅師』頒其興積。《註》縣官徵聚物曰興。今云軍興是也。又『司稼』平其興。《註》所徵賦。
州名。『五音集韻』漢置武都郡、魏立東西州。梁爲興州、因武興山而名。
縣名。『李顒・涉湖詩』旋經義興境。
殿名。『張衡・西京賦』龍興含章。《註》龍興、殿名。
姓。『姓譜』漢濟陰王、謁者興渠。
『廣韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤許應切、音嬹。『集韻』象也。
『韻會』比興。『增韻』興、况意思也。『周禮・春官・大師』敎六詩、曰風曰賦曰比曰興曰雅曰頌。『詩詁』興者、感物而發、如倉庚于飛、熠燿其羽、昔我往矣、楊柳依依之類。
『正韻』悅也。『禮・學記』不興其藝、不能樂學。《註》興之言喜也。『殷仲文詩』獨有淸秋日、能使高興盡。
『正韻』許刃切、音釁。『禮・文王世子』旣興器用幣。『釋文』音同釁。
『韻補』叶火宮切、音凶。『馬融・長笛賦』曲終闋盡、餘弦更興。繁手累發、密櫛𤴁重。重平聲。
叶虛良切、音香。『徐幹・雜詩』沈隂增憂愁、憂愁爲誰興。念與君相別、乃在天一方。『潘乾𥓓』實天生德、有漢將興。子子孫孫、俾爾熾昌。
叶丘侵切、音欽。『詩・大雅』殷商之旅、其會如林。矢于牧野、維予侯興。
- 訓
- おきる。おこる。おこす。おこなふ。おもむき。
- 音
- コウ。キョウ。
- 解字(白川)
- 同と𦥑と廾の會意。𦥑と廾は四手。酒器である同を上下より持つ形。儀禮のとき、地に酒を灌いで、地靈を慰撫することが行はれた。上帝には降、地靈には興といふ。地靈に酒を灌いで祀るとき、恐らく呪詞が唱へられたと思はれるが、その語はのち『詩』の發想法として一の定型をなし、これを興といふ。酒を人に灌ぐことを釁といひ、新しい建造物や器物の制作の際にも用ゐる。地靈をよび興すのが字の原義である。興趣の意は、發想としての興の派生義であらう。
- 解字(藤堂)
- 會意。四手を同じく動かして一齊に持ち上げ起こすことを示す。
- 解字(落合)
- 甲骨文は四又と凡の會意。凡は中空の容器の一般形。二人が容器を持ち上げてゐるさまであらう。後に、持ち上げることからの派生義で「おこす」の意となつた。
- 口を加へ、四又と同に從ふ字體もある。
- 解字(漢字多功能字庫)
- 甲骨文は舁と同に從ひ、四手が共に筒や桶の類を擧げるさまを象る。本義は、起きること。
- 甲骨文では人名や方國名に用ゐる。興は同に從ひ、甲骨文では省いて同とすることがある。
- 金文では人名、族氏名に用ゐる。
- 簡帛文字では興は興起を表す。また興兵を表す。また徵發を表す。
- 表
- 當用漢字・常用漢字