壴 - 漢字私註
説文解字
陳樂立而上見也。从屮从豆。凡壴之屬皆从壴。
- 五・壴部
康煕字典
- 部・劃數
- 士部・六劃
『廣韻』中句切『集韻』冢庾切、𠀤音紵。𨻰樂也。又借作豎立之豎。見『韻寶』。
『正字通』豈字之譌。『說文』豈𨻰樂立而上見也。从屮从豆。附士部、非。
音訓
- 音
- チュウ(漢) チュ シュ 〈『廣韻・去聲・遇・註』中句切〉[zhù]{zyu3}
解字
白川
壴は鼓の象形。
藤堂
象形。太鼓または豆(高坏)を眞つ直ぐ立てた姿を描いた字。
落合
太鼓の象形。上部は吊すための構造を表す。異體字には太鼓の音を表す小點を加へるものもある。
鼓と共通する用法もあり、殷代には未分化であつたかも知れない。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 祭祀名。太鼓を叩く儀禮であらう。《合補》10717
戊辰貞、其延壴、有諾。
- 地名またはその長。當初は殷に敵對したが、後に服從した。第一期(武丁代)には領主が宁壴とも呼ばれてゐる。また第三期(康丁武乙代)には貞人(何組)としても見える。用例が鼓に近く、同一地かも知れない。《殷墟花園莊東地甲骨》264
己未卜貞、宁壴有疾、亡延。
- 女性の名。第一期(武丁代)。婦壴と呼ばれる。壴の出身かも知れない。《合補》6822
戊子貞、婦壴有子。
上古音は尌(樹)に近いが、甲骨文では尌は壴に從つてをらず、後代の字形によつて變化した一種の慣用音と思はれる。甲骨文での用法は鼓に近いので、本來の發音はそれに近いものだつたのだらう。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は鼓を立てる形を象り、上部の屮は裝飾、中間の圓形は鼓の膜、下部は鼓の身を載せる脚架。學者は多く鼓の初文とする(徐灝、戴侗、郭沫若、唐蘭、馬叙倫、高鴻縉など)。
卜辭では壴と鼓は同じ字で、通用し區別がない(姚孝遂)。
金文での用義は次のとほり。
- たたくことを指す。王孫鐘
枼(世)萬孫子、永保壴之。
- 音名に用ゐる。曾侯乙鐘
姑洗之壴
を曾憲通は壴をまた鼓につくり、羽の高音域の異名とする。 - 氏族名に用ゐる。壴生鼎に見える。
屬性
- 壴
- U+58F4
- JIS: 2-5-23
関聯字
壴に從ふ字を漢字私註部別一覽・壴部に蒐める。