豆 - 漢字私註
説文解字
古食肉器也。从口、象形。凡豆之屬皆从豆。徒候切。
- 五・豆部
古文豆。
説文解字注
古食肉器也。『〔周禮〕考工記』曰、食一豆肉。中人之食也。『左傳』曰、四𦫵爲豆。『周禮〔天官〕醢人』掌四豆之食。从囗。音圍。象器之容也。象形。上一象幎也。『〔儀禮〕特牲』籩巾以綌纁裏。『〔同〕士昏』醯醬二豆、菹醢四豆、兼巾之。『〔同〕士喪』籩豆用布巾。是也。下一象⿱一八也。『〔禮記〕祭統』注曰、鐙豆下跗。是也。⿰丨丨象骹也。『祭統』曰、夫人薦豆執校。校者、骹之假借字。注云、豆中央直者。是也。豆柄一而巳。㒳之者、望之則㒳也。畫繪之法也。『考工記』曰、豆中縣。《注》縣繩正豆之柄。是也。豆柄直立。故豎侸豈字皆从豆。徒𠋫切。四部。凡豆之屬皆从豆。
古文豆。鍇本如此作。『玉篇』亦曰、𣅋、古文。當近是。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𣅋
- 𤽋
- 𣅣
『唐韻』徒𠋫切『集韻』『韻會』『正韻』大透切、𠀤音竇。『說文』古食肉器也。『爾雅・釋器』木豆謂之豆。『書・武成』執豆籩。『詩・小雅』爲豆孔庶。『公羊傳・桓四年』諸侯曷爲必田狩。一曰乾豆。《註》豆、祭器、狀如鐙。『禮・明堂位』夏后氏以楬豆、殷玉豆、周獻豆。《註》楬、無異物之飾也。獻音娑、疏刻之也。又『禮器』天子之豆二十有六、諸公十有六、諸侯十有二、上大夫八、下大夫六。又『鄕飮酒義』六十者三豆、七十者四豆、八十者五豆、九十者六豆、所以明養老也。『周禮・冬官考工記』旊人爲豆、實三而成觳、崇尺。《註》崇、高也。豆實四升。『史記・樂書』簠簋俎豆、禮之器也。
又『揚子・方言』𨻰、楚、宋、衞謂桮𥯛爲豆籠。《註》盛桮器籠也。『集韻』或作梪、䇺。
又『韻略』穀也。『博雅』大豆、菽也。小豆、荅也。『周禮・天官・大宰・三農生九穀註』黍、稷、秫、稻、麻、大小豆、大小麥爲九穀。『禮・投壷』壷中實小豆焉、爲其矢之躍而出也。『干寶・晉書』駑馬戀棧豆。又『博雅』天豆、雲實也。又巴豆、海紅豆、皆藥名、出巴蜀。又相思子一名紅豆。又土芋一名土豆。皆菽豆別一種也。俗作荳、非。
又『說苑・辨物篇』十六黍爲一豆、六豆爲一銖、二十四銖爲一兩。
又官名。『南齊書・魏虜傳』北魏置九豆和官。
又地名。『北史・周文帝紀』文帝伐魏、至盤豆、拔之。
又州名。『唐書・地理志』隴右道有白豆州。
又姓。漢光武時、關內侯豆如意、後魏長廣王豆代田。又複姓。北周豆盧寧、本姓慕容氏、歸魏、賜姓豆盧氏。又三字姓。北魏次南有紇豆陵氏。
又『正韻』當口切、音斗。『玉篇』量名。『周禮・冬官考工記・梓人』食一豆肉、飮一豆酒。《註》豆、當爲斗。毛居正曰、豆、古斗字。如『左傳・昭三年』豆、區、釜、鍾之類、當音斗。後人誤讀爲俎豆之豆。斗斛之斗又作㪷、蓋譌倂耳。
又『字彙補』思留切、讀作羞。『周禮・天官・腊人』凡祭祀共豆脯。《註》脯非豆實、豆當爲羞、聲之誤也。『釋文』豆、音羞。
又『韻補』叶動五切、音杜。『柳宗元・牛賦』皮角見用、肩尻莫保。或穿緘縢、或實俎豆。豆叶保、保音補。又叶田故切、讀作渡。『詩・小雅』儐爾籩豆、飮酒之飫。兄弟旣具、和樂且孺。『音學五書』豆叶孺。
又山名。『後漢・郡國志』唐縣有都山。一名豆山。今關中人讀豆爲渡。『說文』豎、侸、裋皆以豆得聲。樹字从壴、亦以豆得聲。
- 部・劃數
- 日部三劃
『玉篇』古文豆字。註詳部首。
- 部・劃數
- 日部・四劃
『說文』古文豆字。註詳部首。
- 部・劃數
- 白部四劃
『集韻』豆古作𤽋。註詳部首。
『字彙』作𤽔、非。
音訓・用義
- 音
- トウ(漢) ヅ(呉) 〈『廣韻・去聲・𠋫・豆』田候切〉[dòu]{dau6}
- 訓
- たかつき。まめ。
計量単位に用ゐる。
- 春秋時代の枡の單位。一豆は四掬で、約0.8L。(『漢字源』)
- 補註: 掬、豆は後の升、斗に當たる。(『左傳・昭三年』
豆區釜鍾、四升為豆、各自其四以登於釜、釜十則鍾。
、Wikipedia:ja:升)
- 補註: 掬、豆は後の升、斗に當たる。(『左傳・昭三年』
- 目方の單位。十六黍を一豆、六豆を一銖、二十四銖を一兩とする。(上揭『說苑・辨物篇』)
- 一銖は約0.590g。(Wikipedia:ja:銖)
解字
白川
象形。足の高い食器の形に象る。
『説文解字』に古、肉を食する器なり
とあり、『國語・吳語』に觴酒、豆肉
の語がある。
儀禮のときには數十豆を用ゐることがあつた。
いま存するものには春秋期以後のものが多く、《蒸𬯚豆》《善簠》と銘するものがあり、簠系統の器とされたのであらう。簠は黍稷を入れる器であつた。
儀禮の際に鹽物、浸し物、飲物に用ゐ、古い儀禮が失はれた後には、豆は祭器としてのみ用ゐられた。
また荅に通じ、豆菽をいふ。
藤堂
象形。高坏を描いたもので、じつと一所に立つの意を含む。
のち、高坏の形をした「まめ」の意に轉用された。
落合
食物(主に穀物)を盛る器である豆の象形。
甲骨文では單獨では原義の用法は見られない。地名またはその長を表す例が見える。《合補》6615乙巳卜、叀豆令。
後代には轉じて植物の實の意でも使はれるやうになつたが、殷代にその用例はない。
漢字多功能字庫
古代、當初は醃菜(漬物)、肉醬(肉などの鹽漬け)などの食品の器を指し、本義は高くて丸い足の食器。後に假借して豆麥の豆とする。按ずるに上の橫劃は蓋に象り、中間は豆の體に象り、下は柱足と底に象る。豆は商代に出現し、春秋戰國に盛んとなり、陶製、また木製、青銅製のものがあつた。構成あるいは禮器に用ゐる。『爾雅・釋器』木豆謂之豆、竹豆謂之籩、瓦豆謂之登。
郭璞注豆、禮器也。
豆に盛られた食物は醃菜や肉醬である。『周禮・天官冢宰・醢人』朝事之豆、其實韭菹、醓醢、昌本、麋臡、菁菹、鹿臡、茆菹、麋臡
は、朝事の禮を行ふときに進獻する豆には、韮の漬物や汁の多い肉醬などを盛るといふ。
甲骨文、金文での用義は次のとほり。
- 地名に用ゐ、讀んで郖となす。
- 《合集》24713
才(在)豆。
- 散盤
豆人虞。
- 宰甫卣
王來獸(狩)自豆彔(麓)
は王が郖地の山麓から來て狩獵をすることをいふ。『說文解字』郖、弘農縣庾地。从邑、豆聲。
- 《合集》24713
- 金文では本義に用ゐ、高く丸い足の食器を指す。周生豆
周生乍(作)尊豆。
齊陶では量詞に用ゐる。古代の重量の單位。《古陶文彙編》3.46毫豆。
『左傳・昭三年』四升為豆。
(補註: 四升を豆とするのは重量より寧ろ體積の單位。)
傳世文獻ではまた假借して豆麥の豆となす。
- 『廣雅』
大豆、茮也。小豆、荅也。
- 『戰國策・韓策一』
韓地險惡、山居、五穀所生、非麥而豆
は、戰國の頃、韓は地理環境が劣惡で、百姓は山の中に住み、生産する食糧は、麥ではなくて豆であつた、の意。(王引之『經傳釋詞』而、猶則也。
)。
後に荳字が分化した。しかし、荳字が出現した後も、豆をまめの意に用ゐる。
屬性
- 豆
- U+8C46
- JIS: 1-38-6
- 當用漢字・常用漢字
- 𣅋
- U+2314B
- 𣅣
- U+23163
- 𤽋
- U+24F4B
関聯字
豆に從ふ字を漢字私註部別一覽・豆部に蒐める。