豦 - 漢字私註
説文解字
鬬相丮不解也。从豕、虍。豕、虍之鬬、不解也。讀若蘮蒘草之蘮。司馬相如說、豦、封豕之屬。一曰虎兩足舉。
- 九・豕部
康煕字典
- 部・劃數
- 豕部六劃
『唐韻』强魚切『集韻』求於切、𠀤音渠。『說文』𩰚相丮不解也。从豕虍會意。豕虍之𩰚不相捨。司馬相如說、豦、封豕之屬。一曰虎兩足舉。
又『集韻』臼許切、渠上聲。封豕也。
又『廣韻』『集韻』𠀤居御切、音據。獸名。『爾雅・釋獸』豦、迅頭。《註》今建平山中有豦、大如狗、似獮猴、黃黑色、多髥鬣、好奮迅其頭、能舉石摘人、貜類也。
『六書故』虎諧聲、豕虎無𩰚理。相如說是。
音訓・用義
- 音
- キョ(漢) 〈『廣韻・去聲・御・據』居御切〉
- 訓
- おほゐのこ
はげしいさま、猛々しいさま。あるいは大きな豬。あるいは猿に似た黃黑色の毛深い獸の名。
解字
白川
象形。虎頭を持つ獸の形を象る。
『爾雅・釋獸』に豦、迅頭。
とあり、《郭璞注》に、猿に似て毛多く、好んで頭を奮迅するものであるといふ。
『説文解字』に字を會意に解し、また司馬相如説として豦は封豕の屬なり。一に曰く、虎の兩足舉ぐるなり。
といふ。『玉篇』に封豕、豕の屬なり
とするが、實態は知られない。《上林賦》に封豕、蜚遽(豦)の名が見え、兩者は別のもの。
『説文解字・虍部』に𧇽字があり、重文として鐻を錄する。𧇽は鐘鼓を掛ける器の、柎足の飾りとされる奇獸の姿を寫したもので、虎の距躍奮迅する形に近い。
藤堂
漢字多功能字庫
豕に從ひ虍聲。本義は獸名。一説に虎と豕の鬪ふ意の會意で、劇烈の意を表し、劇の初文といふ(李經諱)。豦字は古代にゐた大豕を反映してゐるやうで、その獰猛なること虎と鬪ふに足る。清・王筠『說文句讀』に、豦はきこと豕、虎の如く猛きことをいふ、とする。戴侗、朱芳圃は、豕、虎が鬪ふといふ説に理はなく、司馬相如のいふ獸名といふ説が正確とする。『爾雅・釋獸』豦、迅頭。
郭璞注今建平山中有豦、大如狗、似獮猴、黃黑色、多髯鬣、好奮迅其頭、能舉石摘人、貜類也。
豦字は後に多くの漢字の要素とされる。意義に関聯のある字もあれば、ただ聲符として用ゐる字もある。
金文では人名に用ゐる。
- 豦𣪕
豦拜𩒨首。
- 盠駒尊
王乎(呼)師豦。
戰國文字でも人名に用ゐる。《古陶文彙編》3.794曹豦。
漢帛書での用義は次のとほり。
- 字を用ゐて遽となし、急忙を表す。《馬王堆・五十二病方》第403行
豦(遽)斬乘車䰍槨
は、急速に車の漆槨の一部分を斷ち斬るの意。 - 用ゐて劇となし、劇烈を指す。《馬王堆・五十二病方》第52行
噴者豦(劇)噴。
屬性
- 豦
- U+8C66
- JIS X 0212: 62-85
関聯字
豦聲の字
- 璩
- 𦼫
- 噱
- 臄
- 劇
- 𥴧
- 鐻
- 據
- 勮
- 𧇿
- 醵