豕 - 漢字私註
説文解字
彘也。竭其尾、故謂之豕。象毛足而後有尾。讀與豨同。桉今丗字誤以豕爲彘、以彘爲豕。何以明之。爲啄琢从豕、蟸从彘、皆取其聲、以是明之。臣鉉等曰「此語未詳。或後人所加。」凡豕之屬皆从豕。式視切。
- 九・豕部
古文。
- 亥の古文と同形。
説文解字注
彘也。《彑部》彘、豕也。是二篆爲轉注。『小雅・傳』曰、豕、豬也。毛渾言之。許分別言名豕、名彘、名豬之故。竭其尾、故謂之豕。此與後蹏廢故謂之彘、相對成文。於其音求其義也。《立部》曰、竭者、負舉也。豕怒而豎其尾則謂之豕。
象毛足而後有尾。「毛」當作「頭四」二字。轉寫之誤。馬篆下曰、象馬頭髦尾四足之形。象篆下曰、象耳牙四足之形。⺸篆下曰、从𦫳、象四足尾之形。豕首畫象其頭。次象其四足。末象其尾。
讀與豨同。『左傳』「封豕長蛇」、『淮南書』作「封豨脩蛇」。式視切。十五部。『廣韵』施是切。
按今世字誤㠯豖爲豕、以彖爲彖。何㠯朙之。爲从豖、从𧰲、皆取其聲。㠯是朙之。此三十三字未必爲許語。而各本譌舛特甚。今正之。用「豕絆足行」之豖爲聲。俗乃作。是豖誤爲豕也。、从《彑部》訓豕之𧰲爲聲。俗乃作。是𧰲誤爲彖也。故皆爲今世字誤。《彑部》曰、𧰲讀若弛。許書《䖵部》之蠡、《心部》之㥟皆从𧰲爲聲。在古音十六部。各本譌云「今世字誤以豕爲彘、以彘爲豕。何以明之。爲啄琢从豕、蟸从彘皆取其聲。」、不可讀。或正之。又不知蠡之本𧰲聲、而非从彖也。
古文。古文與亥同字。說詳《亥部》。按此下當有「象髦足」三字。猶㣇下云「象髦足也」。丿象髦、象足。象爪字也。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𢁓
- 𧰧
- 𡰯
『廣韻』施是切『集韻』『韻會』賞是切『正韻』詩止切、𠀤音始。『說文』彘也。竭其尾、故謂之豕、象毛足而後有尾。《徐曰》竭、舉也。『玉篇』豬豨之總名。『揚子・方言』豬、關東西或謂之彘、或謂之豕。『林氏小說』以其食不絜、故名之豕。『大戴禮・易本命』四主時、時主豕、故豕四月而生。『本草綱目』李時珍曰、在畜屬水、在卦屬坎、在禽應室星。『易・說卦』坎爲豕。『埤雅』坎性趨下、豕能俯其首、又喜𤰞穢、亦水畜也。『詩・小雅』有豕白蹢、烝涉波矣。《傳》犬喜雪、馬喜風、豕喜雨、故天將久雨、則豕進涉水波。『禮・曲禮』豕曰剛鬣。《疏》豕肥則毛鬣剛大也。『周禮・天官・食醫』凡會膳食之宜、豕宜稷。《疏》豭豬味酸、牝豬味苦、稷米味甘、是甘苦相成。
又國名。『左傳・襄二十四年』范宣子曰、昔匄之祖在商爲豕韋氏。《註》豕韋、國名。
又星名。『博雅』營室謂之豕韋。又『史記・天官書』奎曰封豕、爲溝瀆。『前漢・天文志』作封豨。
又藥名。『爾雅・釋草』茢薽、豕首。《疏》豕首、一名彘顱、南人名爲地菘、今江東呼豨首、可以煼蠶蛹。又『莊子・徐無鬼』藥也、豕零也。《註》豕橐一名苓根、似豬屎、其塊零落而下故也。『韓愈・進學解』作豨苓。《註》楚人呼豬爲豨、卽豬苓是也。『本草綱目』一名豭豬屎。
又『集韻』亥古作豕。『正字通』『家語』或讀史云、三豕渡河。子夏曰、己亥渡河。己譌爲三、亥譌爲豕。或曰支干內有五亥、己亥位居三、三豕渡河是隱語。『說文』亥與豕溷。李陽冰曰、古文亥比豕加一畫、『說文』溷亂、不足信。
又叶施智切、施去聲。『司馬相如・上林賦』格蝦蛤、鋋猛氏。羂騕褭、射封豕。『韻會小補』相如賦本文一段俱上聲、『吳棫・韻補』以豕字叶入寘韻、誤。『字彙』凡偏傍从豕者、俗省作豕。
- 部・劃數
- 尸部三劃
『字彙補』古文豕字。註詳部首。
- 部・劃數
- 巾部(零劃)
『集韻』豕古作𧰧。註詳部首。
- 部・劃數
- 巾部二劃
『玉篇』古文豕字。註詳部首。
音訓義
- 音
- シ(漢)(呉)⦅一⦆
- 訓
- ゐ。ゐのこ。ぶた。⦅一⦆
- 官話
- shǐ⦅一⦆
- 粤語
- ci2⦅一⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・上聲・紙・弛』施是切
- 官話
- shǐ
- 粤語
- ci2
- 日本語音
- シ(漢)(呉)
- 訓
- ゐ
- ゐのこ
- ぶた
解字
白川
象形。豕の形。
『説文解字』に彘なり。其の尾を竭す。故に之れを豕と謂ふ。
とするが、「尾を竭す」とは、尾までを加へた意であらう。
彘は矢に從ひ、卜文では豕を矢が貫く形に記されてゐる。
藤堂
象形。豬または豚を描いたもの。身體が直線狀をなして曲がらず、短い形をしてゐる意を含む。
落合
豚の象形。
甲骨文での用義は次のとほり。
- ゐのこ。家畜の豚。また野生の豚(豬)。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》330
其于甲申、改白豕。
- 《合集》10236
貞、呼逐豕、獲。
- 《殷墟花園莊東地甲骨》330
- 祭祀名。豚を犧牲として用ゐること。《殷墟花園莊東地甲骨》3
己卜、叀豕于妣庚。
- 地名またはその長。殷金文の圖象記號にも類似形が見える。《英國所藏甲骨集》1891
癸丑子卜、豕歸。
甲骨文には類似形の犬と混同する例も見える。
漢字多功能字庫
甲骨文は側面から見た縱にした豬の形に象り、特徵としては腹部に線があり尻尾が少し垂れてゐて、たまに頸の上に長くて密な毛を加へる。
甲骨文の豕と犬の形は近い。豕の尾は下に垂れて腹部は比較的肥え、犬の尾は上向きの形で腹部は比較的瘦せてゐるところで區別をする。金文の族氏徽號に比較的象形的な豕字があり、字形はあるいは橫向き、あるいは縱向き、また圖象が線條に變はつた豕がある。小篆は後者を承ける。
古代の豕あるいは豬は、大部分がとても大きく、行動は風の如く、勇猛剽悍で、虎と鬪ふに足る。故に豕は古代支那の重要なトーテムで、豭、彘、豨、豚、貕のやうに地域や種類で異なる呼び方がある(『方言・卷八』參照)。後に漢字の重要な要素となつた。
甲骨文では本義に用ゐ、豬を指す。《合集》390反逐豕、隻(獲)。
金文では本義に用ゐ、豬を指す。圅皇父鼎豕鼎
は豬を煮るための鼎をいふ。
戰國竹簡では本義に用ゐ、豬を指す。《上博竹書三・周易》簡23芬(豶)豕之牙
を帛書本『周易』は哭豨(豕)之牙
につくる。廖名春は哭を𠳵の譌とし、𠳵に隱去の義があり、全句で豬の尖つた牙を隱す意といふ。今本『周易』は豶豕之牙
につくり、王弼注に豕牙橫暴、剛暴難制之物……能豶其牙、柔能制健、禁暴抑盛、豈唯能固其位、乃將有慶也。
といふ。孔穎達の正義の引く褚氏は豶、除也、除其牙也。
とする。
屬性
- 豕
- U+8C55
- JIS: 1-76-21
- 𡰯
- U+21C2F
- 𧰧
- U+27C27
- 𢁓
- U+22053
関聯字
豕に從ふ字を漢字私註部別一覽・豕部に蒐める。