耑 - 漢字私註
説文解字
- 耑
物初生之題也。上象生形、下象其根也。凡耑之屬皆从耑。
- 七・耑部
康煕字典
- 部・劃數
- 而部三劃
『廣韻』『集韻』𠀤多官切、音端。『說文』物初生之題也。上象生形、下象其根也。《註》臣鉉等曰、中一地也。『增韻』物之首也。『周禮・冬官考工記・磬氏』已下則摩其耑。『釋文』耑、本或作端。『集韻』端、通作耑。
又『集韻』昌緣切、音穿。罄穿也。『周禮・冬官考工記・釋文』耑、劉又音穿。
○按『說文』耑自爲部、今从『正字通』倂入。『玉篇』古文端字。註見立部九畫。
音訓・用義
- 音
- (1) タン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・桓・端』多官切〉
- (2) セン 〈『集韻』昌緣切、音穿〉
- 訓
- (1) はし。こぐち。
また專と通用する。
解字
白川
象形。若い巫女が端然と坐する形に象る。
説文解字に物初めて生ずるの題なり
とし、草木初生の象とする。
字は而に從ひ、而は髮を髡にした巫女の正面形。上部は髮飾りをつけてゐる形。共感呪術として、巫祝の徒を毆つことがあり、微、徵はその側身形に從ふ。微は敵の呪詛を「微くする」、徵は懲らす意。
耑に從ふ字は、若い巫女の姿と解するとき、概ねその聲義を説くことができる。
耑の字形は、列國期の《義楚耑》《徐王耑》の耑(觶)に見える。
藤堂
象形。一の兩側に布端が垂れたさまを描いたもの。
落合
甲骨文は、沚あるいは止と、不のやうな形の會意。植物が生える樣子とする説が有力視されてゐるが、上部は明らかに足の形を描いてをり、誤り。甲骨文には地名の用例しかなく、成り立ちを明らかにできる記述がないが、字形通りに解釋すれば足首を切つた狀態といふことになる。不や(沚を構成する)小點は、切つた足から出た血液の表現であらう。甲骨文にまた耑の上下逆向きと戌に從ふ字がある。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 地名またはその長。攻撃對象になることもある。《合集》6843
貞、𢧀其大敦耑。
- 祭祀名。《合集》13390
貞、茲耑雲、其雨。
字形は古文で顏の象形と解釋されたやうであり、上部が頭髮の形、下部が髭の象形である而に變形した。
漢字多功能字庫
甲骨文は上部の之(止と一に從ふ)と、下部の不と、數點に從ふ。構形初義に二説ある。一つには、上部は植物の初生の枝葉を象り、下部は植物の根の部分を象る、とする(許慎、李孝定)。本義は植物の根の端。羅振玉は、數點は植物を養ふ水を象るとする。もう一つには、人體の倒置で、上部は最下端の足、下部は人體の最上端の頭髮を象るとする(陳世輝)。本義は兩端、末端。
金文の上部は之に從はず、下部は而に從ひ、字形は小篆に近い。
甲骨文では方國名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 用ゐて𦓚となし、觶と同じ字(參・王國維)。酒器の一種である。義楚觶
義楚之祭耑(觶)
。 - 人名に用ゐる。
耑は端の初文で、戰國楚簡では讀んで端となす。
- 《郭店楚簡.語叢一》簡98
喪、仁之耑(端)也。
- 短の通假字となす。《郭店楚簡・老子甲》簡16
長耑(短)之相型(形)也。
耑の開端(發端、始まり、絲口の意)の義は後に端により取つて代はられ、今日では多く書簡において、末尾の「耑此」の如く、專の別の書き方とされる。
屬性
- 耑
- U+8011
- JIS: 2-85-6
関聯字
耑に從ふ字
- 瑞
耑聲の字
- 喘
- 遄
- 諯
- 腨
- 剬
- 𧤗
- 篅
- 椯
- 𥠄
- 褍
- 歂
- 顓
- 𦓝
- 貒
- 端
- 惴
- 湍
- 揣
- 䵎