气 - 漢字私註
説文解字
雲气也。象形。凡气之屬皆从气。
- 一・气部
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『唐韻』去旣切『集韻』丘旣切、𠀤音炁。『說文』雲气也。象形。一曰息也。或作氣、炁。又與人物也。今作乞。
又『玉篇』去乙切『廣韻』去訖切『集韻』『類篇』欺訖切、𠀤音乞。『博雅』求也。一曰取也。或省文作乞。『徐官・古今印史』氣、小篆本作气。氣爲火所化、其出必炎上、故象炎上之形。凡求乞者必於上、因借爲求乞字。气、乞本同一字也。後世隷楷以二字易混、乃省一筆以別之。
又『六書正譌』气、俗用氣、乃稟氣之氣。雲气必用气。○按天地人物之氣雖別、而气、氣字義實同、分屬則泥矣、『正譌』之說非是。
音訓
- 音
- キ(漢) ケ(呉) 〈『廣韻・去聲・未・氣』去旣切〉
- 訓
- いき
解字
白川
象形。雲氣が空に流れ、その一方が垂れてゐる形に象る。
説文解字に雲气なり
とあり、氣の初文とされる字。
卜文に乞につくり、祈求、 匄求の意に用ゐるのは、古く雲氣を望んで、それに祈つたからである。
藤堂
象形。乙形に屈曲しつつ息や雲氣の上つてくるさまを描いたもの。氣や汽の原字。
また、語尾が詰まれば、乞となる。
落合
甲骨文は橫劃を三つ竝べた形。
字を後代に空氣、雲氣の意に用ゐるので、その象形とする説が有力だが、甲骨文にその用法はなく、字源は確實ではない。甲骨文字では貢納物が至ることを意味する用法が多く、物資を積み重ねたさまを抽象的に表した字とする説もある。
气、乞、迄は同源の字。
甲骨文での用義は次のとほり。(補註: 落合は釋字に迄に當てる。)
- いたる。占卜に用ゐる牛骨などが齎されること。また人や降雨などが到來すること。
- 《合集補編》184・貢納記錄
甲申、迄自雩十屯。
- 《合集》12532・後半驗辭
…貞…。王占曰、疑、茲迄雨。之日、允雨。三月。
- 《合集補編》184・貢納記錄
- いたす。貢納物を納入すること。
- 《合集補編》10890・貢納記錄
乙丑、[⿻矢口]迄骨三。
[⿻矢口]は矢が口を貫く形。 - 《甲骨拼合集》42
甲午卜賓貞、令周迄牛、多…。
- 《合集補編》10890・貢納記錄
- いたる。日附が至ること。迄至ともいふ。《甲骨拼合集》295・驗辭
迄至七日己丑、允有來㛸。自西微戈…告曰、𢀛方征于我奠…。
- 動詞。軍隊を率ゐることであらう。迄以ともいふ。《合集》795
辛未卜㱿貞、我廾人迄、在黍不[冊曰]、受…。
後に借りて請ふことを表す(補註: 乞に當たる)。古文で意符に辵を加へて迄につくり、至るの意を表す。
漢字多功能字庫
甲骨文は三横劃に從ひ、天上の雲氣に象る。气は氣の古字で、本義は雲氣。今、氣の簡化字を气につくるが、古字を採用したものである。
三と字形が近いため、後に上劃や下劃を彎曲した形につくつて區別する。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 副詞に多用し、結局、最後の意を表す。《合集》12532正
王占曰、疑茲气雨。之日允雨。
は、王は卜兆に向かひ、この卜兆は最終的に雨になることを示すと豫測したが、この日やはり雨が降つた、の意。 - 介詞に用ゐ、至、到を表す。《屯南》2366
气日酒
の日、酒はどちらも祭名。日祭の時候に到つてすでに酒祭を進行してゐるの意。
金文での用義は次のとほり。
- 乞求を表す。
- 洹子孟姜壺
用气(乞)嘉命
は、嘉い命令を祈求することを表す。 - 鄀公緘鼎
用气(乞)沬(彌)壽、萬年無彊(疆)
は、萬年無疆の天壽を全うすることを祈求するの意。
- 洹子孟姜壺
- 讀んで訖(をへる、いたる)となし、終止を表す。天亡簋
丕克气(訖)衣(殷)王祀
は、殷王の祭祀を終止すること、つまり商朝の滅亡をいふ。『尚書・西伯戡黎』天既訖我殷命。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 讀んで汽となし、幾乎(ほとんど、あやふく)、將要(まもなく)を表す。
- 《上博竹書三・周易》簡44
气(汽)至、亦母(毋)繘井、羸丌(其)缾、凶
は、王弼本『周易・井卦』に汽至、亦未繘井、羸其瓶、凶。
につくる。 - 讀んで迄となし、至於、達到を表す。《清華簡一・皇門》簡2
气(迄)又(有)寶(孚)
を、『逸周書・皇門』は訖亦有孚
につくる。大意は、民に於いて信を取る、の意。
- 《上博竹書三・周易》簡44
後に假借して乞求、祈求を表し、この意の气を後に省いて乞につくる。
屬性
- 气
- U+6C14
- JIS: 1-61-67
関聯字
- 乞
- もと同じ字。
- 氣
- 气を氣の簡体字として用ゐる。
气に從ふ字
- 氛
气聲/乞聲の字
- 芞
- 𠯏
- 䞘
- 迄
- 𪗟
- 訖
- 刉
- 𧆦
- 麧
- 杚
- 𥝖
- 氣
- 㐹
- 𣢆
- 𩑔
- 忥
- 汽
- 𥾨
- 釳