迺 - 漢字私註
康煕字典
- 部・劃數
- 辵部六劃
『玉篇』與乃同。語辭也。『詩・大雅』迺立臯門、迺立應門。
又汝也。『前漢・項籍傳』必欲烹迺翁。又『𨻰餘傳』豈少迺女乎。
又始也。『前漢・贾誼傳』太子迺生。《註》言始生也。
異體字
或體。
音訓
- 音
- ダイ(漢) ナイ(呉) 〈『廣韻・上聲・海・乃』奴亥切〉
- 訓
- すなはち。なんぢ。
解字
古い字形は、西あるいは鹵と凵に從ふ。意義不詳。
白川
象形。字の初形は、卣形のものを、その下部を包んでおく形。卣は酒器。もと瓠瓢の形で、古くは自然に醱酵したものを、神酒として供へたのであらう。のち秬鬯(香をつけた酒)を用ゐて、金文には「秬鬯一卣」のやうにいふ。
金文にまた「廼ち」といふ副詞に用ゐ、「廼ち賜ふ」「廼ち許す」のやうに用ゐる。
『説文解字』に𠧟を錄し、驚く聲なり。乃の省に從ひ、西聲。
とし、或は曰く、𠧟は往くなり。讀みて仍の若くす
といふ。
『唐寫本玉篇』に廼は說文古文の𠧴なり
とあり、『説文解字』に𠧴を錄して气の行く皃なり
とし、讀みて攸の若くす
と見える。
廼、迺は『説文解字』に見えないが、卜文、金文に𠧟字があり、早くから副詞に用ゐられてゐる。
藤堂
西(遷。遷つてゆく。)と辵(進む)の會意。間を置いて、または曲折を經て話がうつることを表す接續詞。乃の古字。
落合
甲骨文は、袋の象形の西または鹽を入れた袋の鹵を、穴(凵)の中に入れたさまの會意字。器(口)の上に置いた狀態を表す異體もある。甲骨文には原義での用例がなく、どのやうな行爲かは不明。
甲骨文での用義は次のとほり。
- すなはち。先後關係を表す助辭。假借の用法。《殷墟花園莊東地甲骨》154
辛酉卜、丁其先侑伐、迺出狩。
- 地名またはその長。《合集》33159
王往于迺。
- 祭祀名。《合集》27404
父己迺。
字形は金文で上部が卣に近い形になつたが、隸書で卣が西に近い形に變はつたため、結果として甲骨文と同形に戻つた。字の下部は篆文で乚になり、更に後に辶(あるいは廴)に變はつた。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、凵と西に從ふ。甲骨文はあるいは西の外邊に小點を加へ、あるいは西には從はず鹵に從ふ。鹵は鹽粒を象り、疑ふらくは凵は器の省形、全字で鹽を器の中に貯める形に象る(參・高鴻縉、王國維)。鹵、覃と構形本義が相近い。
甲骨文、金文では副詞に用ゐ、「於是」(そこで、それで)に相當し、因果あるいは相承關係を表し、乃に同じ。五祀衛鼎吏(使)厲誓,迺令(命)參有𤔲。
金文ではまた語氣の助詞に用ゐる。曾伯陭壺隹(唯)曾白(伯)陭迺用吉金鐈鋚、用自乍(作)醴壺。」『爾雅・釋詁』「「迺、乃也。
邢昺疏乃、語辭也。迺、乃音義同。
迺の小篆を𠧟に作る。
屬性
- 迺
- U+8FFA
- JIS: 1-77-82
- 人名用漢字
- 廼
- U+5EFC
- JIS: 1-39-22