口 - 漢字私註

説文解字

口
人所以言食也。象形。凡口之屬皆从口。苦后切。
口部

説文解字注

口
人所㠯言食也。言語、飮食者口之㒳大耑。舌下亦曰、口所以言別味也。『〔易〕頤・象傳』曰、君子以愼言語、節飮食。象形。苦厚切。四部。凡口之屬皆从口。

康煕字典

部・劃數
部首
古文
𠮚
𠙵

『唐韻』苦后切『集韻』『韻會』去厚切『正韻』苦厚切、𠀤𡨥上聲。『說文』人所以言食也。象形。『易・頤卦』自求口食。『書・大禹謨』唯口出好興戎。

又戸口。『孟子』數口之家。『前漢・宣帝紀』膠東相成勞來不怠、流民自占八萬餘口。又『李陵傳』捕得生口、言李陵敎單于爲兵、以備漢軍。

又姓。『唐韻』今同州有之。『正字通』明弘治中、宣府通判口祿。又古口、複姓。『正字通』漢有古口引。

又壺口、山名。『書・禹貢』冀州旣載壺口。

又谷口、地名。『史記・范睢傳』北有甘泉谷口。《註》九嵏山中西謂之谷口。

又列口、縣名。『前漢・地理志』樂浪郡、列口縣。

又『史記・倉公傳』切其脉時、右口氣息。《註》右手寸口也。脉經、從魚際至高骨却行一寸、其中名曰寸口、其骨自高。

又『韻補』苦動切、音孔。『釋名』口、空也。空上聲。

又叶康杜切、音苦。『詩・小雅』好言自口、莠言自口。憂心愈愈、是以有侮。『前漢・溝洫志』且漑且糞、長我禾黍。衣食京師、億萬之口。『宋玉・風賦』侵淫谿谷、盛怒於土囊之口、緣泰山之阿、舞於松柏之下。下叶音戸。○按『唐韻』正、口古音苦。引朱子韓文考異云、今建州人謂口爲苦、走爲祖。雖出俚俗、亦由音本相近、故與古暗合也。是直以爲口當讀作苦、非止叶音矣。

又叶恪侯切、音彄。『梁法雲・三洲歌』三洲斷江口、水從窈窕河傍流。

部・劃數
口部(一劃)

『字彙補』古文字。註詳部首。

部・劃數
凵部(一劃)

『玉篇』古文字。註見部首。

音訓・用義

コウ(漢) ク(呉) 〈『廣韻・上聲・厚・口』苦后切〉[kǒu]{hau2}
くち。あな。

解字

白川

象形。口の形に象る。

『説文解字』に人の言食する所以なり。象形。といふ。

ただ、卜文、金文にみえる口を含む字形のうち、口耳の口と解すべきものは殆どなく、概ね祝禱、盟誓を收める器の形に從ふ。即ち祝告に關する字とみてよい。文字は祝告の最も盛んな時期に成立し、その儀禮の必要によつて成立したものである。

藤堂

象形。人の口や穴を描いたもの。

落合

開けた口の象形。

甲骨文の要素としては、口や發聲に關する字に使はれる。

器物の象形も同じ形。器物の一般形として用ゐられてゐる。甲骨文の段階でほぼ同化してをり、字形から區別するのは困難。

その外、同じ形が、祭祀を象徵する意符や、建物の土臺の形、物體の抽象形などとして使用されることもある。

甲骨文での用義は次のとほり。

  1. くち、口腔。《合集》11460貞、疾口、禦于妣甲。
  2. 地名またはその長。《合補》404癸巳卜貞、婦[吅女]亡至口。
  3. 祭祀名。《合集》18992癸卯卜古貞、亡羌口。
口祀
王が即位した初年。(補註: 後にいふ元年に相當。) 殷金文にも見える。《合補》11469・記時在六月、甲寅、酒翌上甲。王口祀。

漢字多功能字庫

呼吸、會話、飲食のために開いた口の形に象る。本義は人の口。

古文字の要素として上下逆さの(倒口)がある。口と同樣、發聲に關はるが、別の作用を有す。そのことはなどを參照できる。飲食については、古文字の觀點からは、すべて亼(倒口)に從ひ、口は關係ない。、飲などを參照できる。

甲骨文では本義に用ゐる。《合集》13642疾口は、口に疾病があることを表す。

金文での用義は次のとほり。

簡帛文字では本義に用ゐる。《郭店簡.語叢四》簡4口不慎而戶之[不]閟(閉)、亞(惡)言報己而死無日は、門戸を閉ざさぬやうに口舌を愼まなければ、惡言が報いをなし、死期が至るだらう、の意。《馬王堆帛書・雜療方》第46行口脣不乾

屬性

U+53E3
JIS: 1-24-93
當用漢字・常用漢字
𠮚
U+20B9A
𠙵
U+20675

関聯字

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