東 - 漢字私註
説文解字
動也。从木。官溥說、从日在木中。凡東之屬皆从東。
- 六・東部
康煕字典
- 部・劃數
- 木部四劃
『唐韻』『正韻』德紅切『集韻』『韻會』都籠切、𠀤音蝀。『說文』動也。陽氣動、于時爲春。『書・堯典』平秩東作。《孔傳》歲起於東、而始就耕也。『淮南子・天文訓』東方木也、其帝太皡。
又『史記・曆書』日起於東、月起於西。『鄭樵・通志』日在木中曰東、在木上曰杲、在木下曰杳。木、若木也、日所升降。
又『詩・大雅』東有啓明。
又『爾雅・釋地』東至于泰遠。
又姓。『聖賢羣輔錄』舜友東不訾。
又叶當經切、音丁。『詩・小雅』念我土宇、我生不辰。逢天僤怒、自西徂東。
又叶都郞切、音當。『楊泉・蠶賦』粵召僕夫、築室于旁。于旁伊何、在庭之東。
○按『說文』東自爲部、今倂入。
異體字
簡体字。
音訓
- 音
- トウ(漢) 〈『廣韻・上平聲・東・東』德紅切〉
- 訓
- ひがし。ひがしする。
- (國訓) あづま
解字
白川
もと橐の象形字で、橐の初文。のち假借して方位の東の意に用ゐ、本義の橐の意に用ゐることはない。
説文解字に動くなり
と訓ずるのは、春に蠢動する意とするもので、音義説。
曹はもと二東に從ふ形で、裁判を求める當事者が、束矢鈞金を橐に入れて提供し、裁判が行はれた。東が橐の形であることは、そのことからも知られる。
説文解字に字形を日の木中に在るに從ふ
とし、榑桑神木の意とするのは誤り。
藤堂
象形。中に心棒を通し、兩端を縛つた袋の形を描いたもの。木と日の會意字と見る舊説は誤り。囊や橐の上部と同じ。太陽が地平線をとほして突き拔けて出る方角。『白虎通・五行』に東方者動方也
とある。
落合
象形。筒狀の袋の兩端を縛つた形に象る。
甲骨文での用義は次のとほり。單獨では假借して方角の意味でのみ使はれてゐる。
- ひがし。《英藏》2562
乙丑王卜在攸貞、今日[⿺辶戈]、从攸東、亡災。
- 東の。東側の。《合集》13569
貞、今二月、宅東寢。
- 東にゆく。《合補》2314
…辰卜…戍其東、以…。
- 殷の支配地のうち都から東にあるものの總稱。東土や東方とも稱される。《天理大學附屬天理參考館 甲骨文字》605
乙酉貞、王叀東方征。
- 東方を掌る神格。東方とも稱される。《殷墟小屯中村南甲骨》355
燎東牛三。
- 東母
- 祭祀對象の神名。女性神であらう。《合集》4112
貞、燎于東母三牛。
甲骨文の要素としては原義で用ゐられてゐる。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、袋の中に物を入れて兩端を縛る形に象り、本義は袋。假借して東方の東となす。『詩・召南・小星』嘒彼小星、三五在東。
甲骨文、金文は、袋の中に物を詰め、兩端に底がなく繩で縛る形に象る。東、橐、㯱、束の字形は相近く、東と束は一字の分化したもの。東の甲骨文、金文はみな方位詞に假借し、東方を表す。
- 《合集》9735
東土受年
- 臣卿鼎
公違省自東、才(在)新邑。
- 殷簋
東啚(鄙)五邑
。
東方は日の出づる處で、深厚な文化の意義を具有する。古く禮を行ふ時、主は東に位置し、客は西に位置する。それで主人家(主人の側?)を「東主」(所有者)、「東道主」(主人役、ホスト)と呼び、また「房東」(家主、大家)は房屋を貸し出す人を指し、「店東」は店主を指す。粵語俗語に「東家唔打打西家」といひ、「東家」は僱主、上司を指す。この主のもとでは仕事をせず、別の主のもとで仕事をするの意。
太陽が東方より昇ることから、東方は陽を象徵し、西方は陰を象徵する。漢・趙曄『吳越春秋・勾踐陰謀外傳』立東郊以祭陽、名曰東皇公。立西郊以祭陰、名曰西王母。
「東王公」は天界の統領で、男性神仙を領導し、女性神仙の統領の「西王母」と名聲を齊しくする。今の山東省濟寧市嘉祥縣紙坊鎮武翟山は、漢の晩期の武氏家族の墓地。武氏祠前石室(武榮祠)の東側の山牆(家の兩側の山形の壁)の尖つた所には東王公の畫像が刻まれ、西側の山牆の尖つた所には西王母の畫像が刻まれてゐる。畫中の東王公は頭に山形の冠を頂き、両肩に羽翼を有し、寢臺の上に端坐する。寢臺の兩脇に羽人が一人づつ仕へる。寢臺の下に尾を卷いた羽人と飛龍がある。
古書には「東王公」は石室に住むと記載され、武氏祠と相合ひ、具體的な面貌に別があるに過ぎない。『神異經・東荒經』東荒山中有大石室、東王公居焉。長一丈、頭髮皓白、人形鳥面而虎尾、載一黑熊、左右顧望。
説文解字は東字を日が木中に在るに從ふと分析するが、不確か。
屬性
- 東
- U+6771
- JIS: 1-37-76
- 當用漢字・常用漢字
- 东
- U+4E1C
關聯字
東に從ふ字
- 㯥
東聲の字
- 棟
- 重
- 涷
- 凍
- 蝀