日 - 漢字私註
説文解字
説文解字注
實也。以疊韵爲訓。『〔禮記〕月令・正義』引『春秋』元命包云、日之爲言實也。『釋名〔釋天〕』曰、日、實也。光明盛實也。大易之精不虧。故曰實。
从〇一象形。〇象其輪郭。一象其中不虧。人質切。十二部。
凡日之屬皆从日。
古文。象形。葢象中有烏。武后乃竟作𡆠。誤矣。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
- 古文
- 𡆸
『唐韻』『正韻』人質切『集韻』『韻會』入質切、𠀤音𦨙。〔音1〕『說文』實也。太陽之精不虧。『博雅』君象也。『釋名』日、實也、光明盛實也。『易・乾卦』與日月合其明。又『繫辭』縣象著明、莫大乎日月。又『說卦』離爲火爲日。『周禮・天官・九𡣕註』日者天之明。『禮・祭義』日出於東。『史記・天官書註』日者、陽精之宗。『前漢・律歷志』日合於天統。『後漢・荀爽傳』在地爲火、在天爲日。『淮南子・天文訓』火氣之精者爲日。
又『書・舜典』協時月正日。《傳》合四時之氣節、月之大小、日之甲乙、使齊一也。又『洪範』五紀、三曰日。《傳》紀一日。《疏》從夜半以至明日夜半、周十二辰爲一日。又『禮・曲禮』外事以剛日、內事以柔日。《疏》十日有五奇五偶、甲丙戊庚壬五奇爲剛、乙丁己辛癸五偶爲柔也。又『郊特牲』郊之祭也、迎長日之至也。《註》迎長日者、建卯而晝夜分、分而日長也。
又『左傳・文七年』日衞不睦。《註》日、往日也。
又『左傳・桓十七年』天子有日官、諸侯有日御。《註》皆典歷數者。
又『史記・日者傳註』卜筮占𠋫時日、通名日者。
又『集韻』而力切、音眲。〔音2〕義同。
又『韻補』叶而至切。『李嵩・述志賦』審機動之至微、思遺餐而忘寐。表略韻於納素、託精誠於白日。
『類篇』唐武后作𡆠。
- 部・劃數
- 囗部(一劃)
『集韻』入質切。同日。『說文』實也。太陽之精不𧇾。从囗一、象形。唐武后作𡆠。
いはゆる則天文字は、正しくは囗を圓形に、の形に作つたといふ。
- 部・劃數
- 囗部・四劃
『玉篇』古文日字。註詳部首。
音訓義
- 音
- ニチ(呉) ジツ(漢)⦅一⦆
- ジョク(推)⦅二⦆
- 訓
- ひ⦅一⦆
- か⦅一⦆
- 官話
- rì⦅一⦆
- mì⦅三⦆
- 粤語
- jat6⦅一⦆
- mik6⦅三⦆
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・入聲・質・日』人質切
- 『集韻・入聲上・質第五・日』入質切
- 『五音集韻・入聲卷第十四・質第一・日三日』人質切
- 聲母
- 日(半齒音・次濁)
- 等呼
- 三
- 官話
- rì
- 粤語
- jat6
- 日本語音
- ニチ(呉)
- ジツ(漢)
- 訓
- ひ
- か
- 義
- 太陽。日月。
- 晝。日夜。
- 一晝夜。一日。
- ある一日を指す。記念日。誕生日。命日。某月某日。
- 期間を日數で表すときの量詞。
- 日々。毎日。日常。
- ある日。ある時期。過日。他日。來日。
- 日本を指す。
- 本邦では日向を指す。日州。
- 釋
- 『廣韻』
日: 『說文』曰「實也。太陽精不虧。从囗一。象形。」人質切。五。
- 『集韻』
日𡆠: 入質切。『說文』「實也。太陽之精不虧。从囗一。象形。」唐武后作𡆠。文十六。
- 『康煕字典』上揭。
⦅二⦆
- 反切
- 『集韻・入聲下・職第二十四・日』而力切
- 『五音集韻・入聲卷第十五・職第六・日三日』而力切
- 聲母
- 日(半齒音・次濁)
- 等呼
- 三
- 日本語音
- ジョク(推)
- 義
- ⦅一⦆に同じ。
- 釋
- 『集韻』
日: 而力切。太陽精也。李舟說。文三。
- 『康煕字典』上揭。
⦅三⦆
- 官話
- mì
- 粤語
- mik6
- 義
- 人名。金日磾(jawp)や馬日磾(jawp)を本音に讀むといふ。
解字
白川
象形。太陽の形に象る。中に小點を加へて、その實體があることを示す。三日月の形に小點を加へて夕とするのと同じ。
『說文』の釋は『釋名・釋天』に日、實也、光明盛實也。
、月、缺也、滿則缺也。
とするのによるもので、音義説。日と實、月と缺は、今の音は遙かに異なるが、古音は近く、本邦の漢字音にはなほその古音が殘されてゐる。
藤堂
象形。太陽の姿を描いたもの。
落合
太陽の象形。中央の點は、太陽に烏がゐるといふ神話を表したものとも、中空ではなく中身があることを示す記號ともいふ。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 太陽。中日は太陽が南中する時間帶を指す。陽日は穩やかな天候の意。《合集》28569
中日往、不雨。
- 太陽の神格。入日は沈む太陽、出日は昇る太陽、いづれも祭祀の對象。《殷墟小屯中村南甲骨》212
辛未卜、侑于出日。
- 日中、晝間。終日、湄日は、ともに一日中の意。《合補》9539・末尾驗辭
己巳卜荷貞、王往于日、不遘雨、燕叀吉。允雨不遘。四月。
- 日數を數へる助數詞。當日から起算し、現代日本語の「〜日目」にあたる。今日は本日、翌日は次の日ややや近い日附、來日や至日はやや先の日附。之日は主に驗辭で用ゐられ、當該の日附を指す。《合集》7363・後半驗辭
己丑卜泳貞、旬…。五日丁巳、子陷死。
- 祭祀名。先王に對し行はれる。他の祭祀と組み合はせた彡日、翌日、𫩻日などもある。《合集》27575
日于妣癸、其⿱乇口、王受祐。
- 日有食
- 日食。あるいは黃砂などで日が隱れることも含まれると考へられる。《合集》11480
貞、日有食。
- 日有戠
- 戠が食に通じ日食を指すとする説と、戠が色に通じ日の異常な色とする説がある。《合集》33698
庚辰貞、日有戠、非禍、惟諾。
- 鬼日
- 厄日の意か。
- 𧷛日
- 凶事の意。鬼日と同意かもしれない。
太陽以外の物體を日の形で表すこともある。
漢字多功能字庫
太陽に象る。もとは一つの圓形につくるが、圓形は甲骨上に刻みにくく、方形に變へられた。中に點があるのは、囗と混ざるのを防ぐため。本義は太陽。
甲骨文での用義は次の如し。
- 本義に用ゐ、天體の日を指す。《合集》34163
㞢(有)出日
は、日の出るをいふ。《合集》11480日有食(蝕)。
- 夕と相對し、白晝を指す。《合集》33871
今日雨、夕雨。
は、今日の晝間雨が降り、晩もまた雨が降ることをいふ。《合集》34036日風不𡆥(憂)
は、今日は晝間風があり(あるが)、憂ふ必要はない、といふ。 - 時を記すのに用ゐ、一日を指す。《合集》12314
自今五日雨。
は、今日より五日間ずつと雨が降ることをいふ。 - 卜辭中にまた「中日」(日中の時分)、「昃日」(正午の後)、「終日」(一日中)などの語がある。
- 祭名に用ゐる。《合集》27463
日于父甲。
は父甲に對して日祭を行ふことをいふ。
金文での用義は次の如し。
- 本義に用ゐ、太陽を指す。弭白師耤𣪕
䜌(鸞)旂五日。
張政烺は1935年河南汲縣山彪鎮で出土した水陸攻戰紋鑑を根據に、圖案中に出て來る船に船頭が立てた大きい旗を指して、旗は鸞身(鸞のからだの意?)に似てをり、上に圓形が五つあり、これは五日を象り、弭白師耤𣪕のいふところと似てゐるといふ。 - 白晝の意に用ゐ、夜と相對する。𫲨𧊒壺
日夜不忘。
- 時を記す單位に用ゐ、銘文中に「今日」、「翌日」などの語が見える。鄲孝子鼎
鄲孝子台(以)庚寅之日命鑄飤鼎鬲。
- 干支の前に用ゐ、亡父の稱とする。作冊睘尊に「文考日癸」の名がある。唐蘭は、古人は祭の日次排行に基づき先祖の呼稱とし、例へば甲日に祭を行ふなら祖甲父甲と稱するが、これは卜辭がただ「父癸」とするのによる。
屬性
- 日
- U+65E5
- JIS: 1-38-92
- 當用漢字・常用漢字
- 𡆠
- U+211A0
- 𡆸
- U+211B8
関聯字
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