橐 - 漢字私註
説文解字
囊也。从㯻省、石聲。
- 六・㯻部
康煕字典
- 部・劃數
- 木部十二劃
- 古文
- 𡇈
『唐韻』『集韻』𠀤他各切、音拓。『說文』囊也。『唐韻』囊無底。『詩・大雅』于橐于囊。《毛傳》小曰橐、大曰囊。『左傳・宣二年』趙盾見靈輒、爲簞食與肉、置諸橐而與之。
又冶器也。『老子・道德經』天地之閒、其猶橐籥乎。《註》橐者外之櫝、所以受籥也。籥者內之管、所以鼓橐也。『淮南子・本經訓』鼓橐吹埵、以消銅鐵。
又盛衣食之器者曰橐梠。『莊子・天下篇』禹親自操橐耜、而九雜天下之川。
又橐橐、杵聲也。『詩・小雅』椓之橐橐。
又橐駝、獸名。言其負囊橐而駝物也。『揚雄・長楊賦』敺橐駝、燒𤑺蠡。
又橐臯、吳地。『春秋・哀十二年』公會吳于橐臯。『漢書』屬九江郡。
又『唐韻』章夜切、音柘。義同。
又『集韻』都故切、音妒。木名。
○按【說文】別立橐部、今倂入。
音訓
- 音
- タク(漢、呉) 〈『廣韻・入聲・鐸・託』他各切〉[tuó]{tok3}
- 訓
- ふくろ。ふいご。ふいがう。
解字
白川
形聲。聲符は石。石に宕、拓の聲がある。石を除いた字の初形は東。東は上下を括り結んだ袋の形で、東がのち方位の東西の義に專用されるやうになつて、原義を保存するために石聲を加へた橐が作られた。
『説文解字』に囊なり
とあり、『詩・大雅・公劉』の釋文に引く『説文解字』に底無きを囊と曰ひ、底有るを橐と曰ふ。
と見える。橐の初形東の字形を以ていへば、底無きものが東(橐)であらう。その《毛傳》には橐を小、囊を大とする。
藤堂
心棒を通して兩端を縛つた袋の形(東)と木と音符石の會意兼形聲。石は、中身が詰まつた意を含む。中に物を詰める、木で作つた袋狀のもの。つまり、ふいごの外枠。
落合
袋の中に物を入れた形の會意字。東や叀の異體に形が近い。具體的に袋の中身を表した異體字のほか、袋の中の物體を省略した異體字もある。
【補註】 漢字多功能字庫は、叀の異體に近似する片側を縛る形のみを橐の甲骨文として擧げ、東に近似する兩側を縛る形を㯱として擧げる。
甲骨文での用義は次のとほり。
- 物を入れた袋を數へる助數詞。《合集》15494
…百橐…。
- 占卜用語。文章の末尾に附されるが、具體的な意義は不詳。《合補》1845
己亥卜賓貞、翌庚子、步戈人、不橐。
- 祭祀名。《合集》1825
貞、勿橐王夨三[⿱冖羊]。
- 地名またはその長。《合集》9419・貢納記錄
…亥、迄自橐十…。
- 有石一橐
- 占卜用語。吉祥の意か。
篆文で東を意符、石を聲符として橐の字體が作られた。
繁文には聲符に襄を用ゐた囊もあり、これも篆文に初出。
漢字多功能字庫
甲骨文は繩で縛つた袋の形に象り、本義は袋。
甲骨文は袋の中に物品を入れ、繩で縛つた形に象る。橐は底がある袋で、一端のみを縛る必要があり、東、㯱、束は底がない袋で、繩で兩端を縛ることに區別がある。『戰國策』高誘注無底曰囊、有底曰橐。
甲骨文に用義が三つある。
- 肉を盛る器を表す。
- 方國名に用ゐる。
- 蠹の初文。蠹は木を害する蟲のことで、轉じて災害の意(參・魯實先)。
屬性
- 橐
- U+6A50
- JIS: 1-86-13
關聯字
橐聲の字
- 𣟄
- 蠹