巢 - 漢字私註
説文解字
鳥在木上曰巢、在穴曰窠。从木、象形。凡巢之屬皆从巢。鉏交切。
- 六・巢部
説文解字注
鳥在木上曰巢、在穴曰窠。《穴部〔窠字條〕》曰、穴中曰窠、樹上曰巢。巢之言高也。窠之言空也。在穴之鳥、如鴝鵒之屬。今江蘇語言通名禽獸所止曰窠。
从木、象形。象其架高之形。鉏交切。二部。
凡巢之屬皆从巢。
康煕字典
- 部・劃數
- 巛部・八劃
『唐韻』『集韻』『韻會』『正韻』𠀤鋤交切、音鄛。『說文』鳥在木上曰巢、在穴曰窠。从木象形。『詩・召南』維鵲有巢、維鳩居之。『禮・禮運』先王未有宮室、冬則居營窟、夏則居檜巢。『古史考』許由夏常居巢、故號巢父。
又國名。『周書序』巢伯來朝。《傳》殷之諸侯。
又湖名。『括地志』廬州巢縣有巢湖。
又樂器。『爾雅・釋樂』大笙謂之巢。《疏》巢、高也。言其聲高也。
又車名。『左傳・成十六年』楚子登巢車以望晉軍。《註》巢車、車上爲櫓。
又姓。『廣韻』有巢氏之後。『史記・三皇紀』有巢氏、有天下者之號。
又菜名。『陸龜蒙詩序』蜀疏有兩巢、大巢卽豌豆之不實者、小巢生稻畦中。一曰野蠶豆。
又『廣韻』士稍切、音㑿。棧閣也。
又『集韻』莊交切、音𥊌。大笙也。
又『韻會』子小切『正韻』子了切、𠀤音勦。國名。
又叶牀魚切、音鋤。『崔駰・反都賦』大漢之初、雍土是居。京平之世、鴝鵒來巢。
又叶鋤尤切、音愁。『宋玉・高唐賦』王雎鸝黃、正冥楚鳩。姊歸思婦、垂雞高巢。
廣韻
- 卷・韻・小韻
- 下平聲・肴・巢
- 反切
- 鉏交切
『說文』曰、鳥在木上曰巢、在穴曰窠。
『爾雅〔釋樂〕』云、大笙謂之巢。
又縣名。在廬江。
亦姓。有巢氏之後。『左傳〔襄二十五年〕』楚有巢牛臣。
鉏交切、八。
- 卷・韻・小韻
- 去聲・效・巢
- 反切
- 七稍切
棧閣也。
七稍切。又士交切。一。
集韻
- 卷・韻・小韻
- 平聲三・爻・巢
- 反切
- 鋤交切
鋤交切。
『說文』鳥在木上曰巢、在穴曰窠。
一曰、大笙。
又國名。
亦姓。
文二十。
- 卷・韻・小韻
- 平聲三・爻・巢
- 反切
- 徂交切
徂交切。
文一。
異體字
いはゆる新字体。
音訓・用義
⦅一⦆
- 反切
- 『廣韻・下平聲・肴・巢』鉏交切
- 『集韻・平聲三・爻・巢』鋤交切
- 官話
- cháo
- 粤語
- caau4
- 日本語音
- サウ(漢)
- 訓
- す。すくふ。
⦅二⦆
- 反切
- 『廣韻・去聲・效・巢』七稍切
- 義
- 棧閣也。(『廣韻』) 【補註】棧閣とは棧道のこと、また物置部屋のこと。
⦅三⦆
- 反切
- 『集韻・平聲三・爻・巢』徂交切
- 義
- 大笙。(『集韻』)
解字
白川
象形。木の上の鳥の巢に、雛のゐる形に象る。
『説文解字』に鳥、木上に在るを巢と曰ふ。
とあり、その穴中に在る者を窠、窟といふ。
木上に人が棲むことを巢居といふ。
藤堂
巢の形(後に西と書く)と木の會意。高い木の上の鳥の巢のこと。高く浮いて見える意を含む。
落合
殷代の巢は木と袋の象形の西から成る。西が「鳥の巢の象形」として用ゐられてをり、木の上に鳥の巢があることを表した會意字。
西周代に上部を複雜化した字形があり、その上部が巛の部分になつてゐるが、巛は河川の象形で、別の成り立ち。甾も現用字形では類似形だが、成り立ちには關係しない。
殷代の資料には部分字としてのみ見え、西周代には地名としてのみ使はれてゐる。
漢字多功能字庫
甲骨文は甾と木に從ひ、樹上に鳥の巢の在るさまに象る。殷虛甲骨文に單獨で使用される巢は見えず、ただ偏旁として用ゐる。周原甲骨に巢の字形が僅かに殘るが、殷虛甲骨の字形と相近い。金文の構形は甲骨文に同じく、甾の上三劃は少し折れ曲がり、後世の字形の元となつてゐる。本義は鳥の巢。
甲骨文では疑ふらくは方國名に用ゐる。周原甲骨H11:110征巢
。
金文では國名に用ゐる。䌛侯鼎䌛侯隻(獲)巢。
帛書では巢穴の義を表す。《馬王堆帛書・五十二病方》第261行未有巢者、煮一斗棗、一斗膏、以為四斗汁、置般(盤)中而居(踞)之、其蟲出。
整理者注巢、當指瘻管、古人以為蟲巢。
傳世文獻での用義は次のとほり。
- 本義を表す。
- 『詩・召南・鵲巢』
維鵲有巢、維鳩居之。
- 『呂氏春秋・應同』
夫巢覆卵毀、則鳳凰不至。
- 『詩・召南・鵲巢』
- 廣く昆蟲、動物の巢穴を指す。
- 『漢書・五行志』
成帝建始四年九月、長安城南有鼠銜黃蒿、柏葉、上民冢柏及榆樹上為巢、桐柏尤多。
- 『漢書・五行志』
動詞となし、棲息を表す。
- 『莊子・逍遙遊』
鷦鷯巢於深林、不過一枝。
- 『古詩十九首・行行重行行』
胡馬依北風、越鳥巢南枝。
また築巢を表す。『左傳・昭公二十五年』有鸜鵒來巢。
遠古時代の傳説に、有巢氏が人々に樹上に木を組んで住處を作り、野獸の侵襲を避けることを教へたとされる。『韓非子・五蠹』上古之世、人民少而禽獸眾、人民不勝禽獸蟲蛇。有聖人作、搆木為巢以避群害、而民悅之、使王天下、號曰有巢氏。
ゆゑに巢は先民が樹上に築いた居所を表し、轉じて粗末な住居を指す。
- 『孟子・滕文公下』
當堯之時、水逆行、氾濫於中國、蛇龍居之、民無所定。下者為巢、上者為營窟。
- 『禮記・禮運』
昔者先王、未有宮室、冬則居營窟、夏則居橧巢。
巢は古代の樂器の名で、巢笙を指す。『爾雅・釋樂』大笙謂之巢、小者謂之和。
また古國名や古地名に用ゐる。
- 『尚書・仲虺之誥』
成湯放桀于南巢、惟有慚德。
- 『左傳・成公七年』
吳始伐楚、伐巢、伐徐、子重奔命。
後には敵人や盜賊の住處を表す。
- 『新唐書・李靖傳』
若直取丹楊、空其巢窟、惠亮等自降。
- 『宋史・張闡傳』
(張)闡建策造戰艦、以大艦為營、小艦出戰、乘水涸直擣賊巢、賊勢以衰。
屬性
- 巢
- U+5DE2
- JIS: 1-84-8
- 人名用漢字
- 巣
- U+5DE3
- JIS: 1-33-69
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
巢に從ふ字を漢字私註部別一覽・木部・巢枝に蒐める。