廣 - 漢字私註
説文解字
殿之大屋也。从广黃聲。
- 初句の段注に
『土部』曰、堂、殿也。倉頡篇曰。殿、大堂也。『廣雅』曰、堂堭、合殿也。殿謂堂無四壁。『漢書・胡建傳・注』無四壁曰堂皇是也。覆乎上者曰屋。無四壁而上有大覆葢。其所通者宏遠矣。是曰廣。引伸之爲凡大之偁。『詩〔小雅〕六月』『〔詩・周頌〕雝』《傳》皆曰、廣、大也。
といふ。 - 九・广部
康煕字典
- 部・劃數
- 广部十二劃
『唐韻』『集韻』『韻會』𠀤古晃切、光上聲。『說文』殿之大屋也。
又『玉篇』廣、大也。『廣韻』廣、闊也。『易・繫辭』廣大配天地。《疏》大以配天、廣以配地。
又州名。『唐書・地理志』嶺南道有廣州。
又姓。『姓譜』出丹陽、廣成子之後、宋有廣漢。
又『玉篇』古曠切、光去聲。『周禮・地官・大司徒』周知九州之地域廣輪之數。《疏》馬融云、東西爲廣、南北爲輪。『釋文』廣、古曠反。
又車名。『周禮・春官・車僕』廣車之萃。《註》廣車、橫𨻰之車也。『釋文』廣、古曠反。『左傳・僖二十八年』西廣東宮。《疏》楚有左右廣、蓋兵車之名。『宣二年』分爲二廣。《註》十五乗爲一廣。
又『正字通』音曠。『荀子・王霸篇』人主胡不廣焉。《註》廣、開泰貌。
又與曠通。『前漢・五行志』師出過時之謂廣。
又姑黃切、音光。『爾雅・釋獸』回毛在背、闋廣。《疏》伯樂相馬法、旋毛在背者名闋廣。『音義』廣、音光。
又『韻補』叶果五切、音古。『禮・樂記』今夫古樂、進旅退旅、和正以廣、弦匏笙簧、會守拊鼓、始奏以文、復亂以武。
異體字
いはゆる新字体。
音訓・用義
- 音
- (1) クヮウ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・蕩・廣』古晃切〉[guǎng]{gwong2}
- (2) クヮウ(漢、呉) 〈『正字通』音曠、去聲、宕韻〉
- 訓
- (1) ひろい。ひろさ。ひろめる。ひろげる。ひろがる。おほきい。
音(2)は、東西の幅を指す(南北の長さは袤)。また曠に通ずる。
解字
白川
形聲。黃聲。黃に橫の意がある。
『説文解字』に殿の大屋なり
とあり、四壁のない建物をいふ。
引伸して廣大の意となり、金文に廣伐、廣成、廣啓、廣嗣などの語がある。連語の修飾語に用ゐることが多い。
藤堂
广(屋根)と音符黃の會意兼形聲。黃は、矢の先に獸の脂をつけて火を燃やした火矢の姿。その火矢からぎらぎらと黃色い光が四方に擴がる。廣は、四方に擴がつて中のがらんとした廣間のこと。
擴や廓(四方を圍み、中を擴げた町)などはその語尾の詰まつた入聲の言葉。
落合
甲骨文では人名(第一期(武丁代))に用ゐる。《合集》4880貞、勿禦廣于母庚。
金文で宀が大きな家屋の形である广に變へられた。
漢字多功能字庫
甲骨文は宀に從ひ黃聲。金文は广に從ひ黃聲。宀は房屋の形に象り、广は宀に比べて簡單な建築に象る(裘錫圭)。廣の本義は大屋。段玉裁は廣の本義を周りに牆壁のない大屋とする。
大屋から引伸して、廣闊(廣々として開ける、廣大寬闊)、廣大、增廣(擴げる、擴がる)、推廣(普及させる)などの義を表す。
金文は多く广に從ひ、ときどき宀に從ふ。宀、广は廣の意符で、いづれも建築物に象り、字の構成要素として通用する。後期金文では誤つて厂に從ふ。广と厂は形が近く、相混じる。黃は聲符。
甲骨文では人名に用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 人名に用ゐる。
- 大を表す。班簋
廣成氒(厥)工(功)
は、その功業を大成することを表す。『詩・小雅・六月』四牡脩廣
毛亨傳廣、大也。
『廣雅・釋詁』廣、大也。
- 範圍の廣大なることを表す。晉公盆
廣𤔲(司)四方
は、ひろく四方を治めることを表す。 - 「廣伐」は大規模、範圍の大きい軍事進攻を表す。
- 多友鼎
廣伐京𠂤(師)
。 - 禹鼎
噩侯馭方䢦(率)南淮尸(夷)、東尸(夷)廣伐南或(國)、東或(國),至于歷內。
- 多友鼎
- 「廣啟」は大々的な啓發を表す。
- 叔向父禹簋
廣啟禹身
。 - 士父鐘
用廣啟士父身。
- 楊樹達は、「廣啟」は大いに佑助するの意とする。
- 叔向父禹簋
- 地名に用ゐる。「廣衍」は漢の河西郡に屬し、今の内蒙古の準格爾旗西南に在る。廣衍矛
廣衍
。
戰國竹簡でも大きな範圍を表す。《睡虎地・秦律十八種》簡98關市為器同物者、其小大、短長、廣夾(狹)必等。
後にまた東西の距離を表し、袤は南北の距離を表す。『説文解字』袤字條に一曰、南北曰袤、東西曰廣。
といふ。《睡虎地・秦律十八種》簡66布袤八尺、福(幅)廣二尺五寸。布惡、其廣袤不如式者、不行。
古書に「廣袤」をまた「廣輪」に作り、土地の面積を表す。
- 『漢書・西域傳』
蒲昌海、一名鹽澤者也、去玉門、陽關三百餘里、廣袤三百里。
- 『周禮・地官・大司徒』
以天下土地之圖、周知九州之地域廣輪之數。
賈公彥疏馬融云、東西為廣、南北為輪。
屬性
- 廣
- U+5EE3
- JIS: 1-55-2
- 人名用漢字
- 広
- U+5E83
- JIS: 1-25-13
- 當用漢字・常用漢字
關聯字
廣に從ふ字
廣枝 @ 广部 - 漢字私註部別一覽に蒐める。
其の他
- 广
- 广を廣の簡体字に用ゐる。