宀 - 漢字私註
説文解字
交覆深屋也。象形。凡宀之屬皆从宀。武延切。
- 七・宀部
説文解字注
交覆𥥍屋也。古者屋四注。東西與南北皆交覆也。有堂有室是爲深屋。《自部》𦤝下曰、宀宀、不見也。是則宀宀謂深也。象形。象兩下之形。亦象四注之形。武延切。古音當在十二部。凡宀之屬皆从宀。
康煕字典
- 部・劃數
- 部首
『廣韻』武延切『集韻』彌延切、𠀤音綿。『說文』交覆深屋也。《田藝衡曰》古者穴居野處、未有宮室、先有宀、而後有穴。宀、當象上阜高凸、其下有𠕄可藏身之形、故穴字从此。室家宮宁之制、皆因之。
音訓
- 音
- ベン(漢) メン(呉) 〈『廣韻・下平聲・仙・緜』武延切〉[mián]{min4}
解字
白川
象形。屋根が左右に深く垂れてゐる形に象る。
《段注》に古者屋四注。
とあるが、殷代の遺構から考へられる建物はみな切妻形式のものである。
卜文で宀に從ふものは約七十字、みな平常の住居ではなく、祭祀儀禮を行ふ場所であつた。
藤堂
象形。屋根を被せた家を描いたもの。上から屋根を被せることや、家を表す記號として用ゐる。
落合
家屋の象形。甲骨文の上部は屋根、左右の縱劃は壁を表す。
甲骨文では建築物の汎稱に用ゐる。《合集》13517丁卯卜、作宀于沎。
漢字多功能字庫
甲骨文は房屋の形を象る。王筠曰く乃一極兩宇兩牆之形也
(屋根、軒、壁の形)、屋根の頂きを「︿」形につくり、兩邊は左右の壁の形。甲骨文では房屋を表す。辛未卜、乍(作)宀
(《合集》22246)の「乍(作)宀」は屋を造るの意。甲骨文の要素とされ、省略して「︿」につくる例もある。甲骨文の龐は广に從ふが、广は三面に壁がある(つまり一面の壁がない)屋の形を象る。
金文は甲骨文の形を承け、氏族徽號に用ゐ、また人名に用ゐる。宀乍父辛觶など。金文の要素として、宀と广は通用し、いづれも房屋を表す。
宀と後世の字の對應には、主に三説ある。按ずるに宀は房屋の形を象る。穴、宅、廬の初文であるか否かは、考證を待つべし。
- 馬叙倫は、宀は穴の初文で、古人は最初穴に住まひ、後に宮室を營む、といふ。田藝衡曰(上揭『康煕字典』)。
- 于省吾は宅の初文とし、甲骨文の宅は動詞で、居住することを表す、といふ。
- 蔡哲茂、徐中舒は、廬の初文で、廬と六は音が近く、且つ宀と六は形が近い。故に甲骨文の宀を假借して數字の六とした、とする。
宀には後に蓋で覆ふの義が派生した。『元包經・太陽』乾、顛宀勹盈。
唐李江注宀、覆。
『說文釋例』交覆者、對『广』衹一牆而言。
『說文部首箋正』古者屋為四注、中有堂、前有楹、後有寢、東西有房。四下交覆、故曰深屋。
屬性
- 宀
- U+5B80
- JIS: 1-53-63
関聯字
宀に從ふ字を漢字私註部別一覽・宀部に蒐める。