丹 - 漢字私註
説文解字
巴越之赤石也。象采丹井、一象丹形。凡丹之屬皆从丹。都寒切。
- 五・丹部
古文丹。
亦古文丹。
説文解字注
巴越之赤石也。巴郡、南越皆出丹沙。『蜀都賦』丹沙赩熾出其坂。謂巴也。『吳都賦』赬丹明璣。謂越也。丹者、石之精。故凡藥物之精者曰丹。象采丹井。謂也。采丹之井、史記所謂丹穴也。蜀吳二都賦注皆云、出山中、有穴。丶象丹形。都寒切。十四部。凡丹之屬皆从丹。
古文丹。
亦古文丹。按此似是古文彤。
康煕字典
- 部・劃數
- 丶部三劃
- 古文
- 𠁿
- 㣋
- 𠕑
『唐韻』都寒切『集韻』『韻會』多寒切『正韻』都艱切、𠀤音單。赤色丹砂也。『書・禹貢』礪砥砮丹。『山海經』丹以赤爲主、黑白皆丹之類。《陶弘景曰》卽朱砂也。
又道家以烹鼎金石爲外丹、吐故納新爲內丹。『黃庭經』九轉八瓊丹。《註》八者、朱砂、雄黃、空靑、硫黃、雲母、戎鹽、硝石、雌黃也。
又『博物志』和氣相感、則陵出黑丹。仁主壽昌、民延壽命、天下太平。
又以朱色塗物曰丹。『揚雄・解嘲』朱丹其轂。
又容美曰渥丹。『詩・秦風』顏如渥丹。
又赤心無僞曰丹。『謝朓詩』旣秉丹石心、寧流素絲涕。
又姓。漢丹玉、宋丹山、明丹衷。
又丹陽、郡名。漢武帝攺鄣郡爲丹陽郡。晉武帝分立宣城、毗陵二郡。又州名。本赤翟地、元魏置汾州、後改丹州。又『崔豹古今註』丹徼、南方徼、色赤、故稱丹徼、爲南方之極也。
又丹丹、國名。見『南史』。
又『山海經』鳳凰產于丹穴。又竊丹、鳥名。爲九鳳之一。
又牡丹、花名。『本草』一名鼠姑。又木丹、梔子花別名。紫丹、茈草別名。
又叶都懸切、音顚。『陸機・羅敷歌』南崖充羅幕、北渚盈輧軒。淸川含藻景、高岸被華丹。
- 部・劃數
- 丶部四劃
『玉篇』古文丹字。註詳三畫。
- 部・劃數
- 冂部・五劃
『五音集韻』古文丹字。註詳丶部三畫。
- 部・劃數
- 彡部・五劃
『說文』古文丹字。註詳丶部三畫。【字彙】譌作𢒈、非、今改正。
音訓
- 音
- タン(漢、呉) 〈『廣韻・上平聲・寒・單』都寒切〉[dān]{daan1}
- 訓
- に。あか。あかい。
解字
白川
象形。丹井に丹のある形に象る。丹は朱砂の狀態で出土し、深い井戸を掘つて採取する。
『説文解字』に巴越の赤石なり。丹井に采るに象る。丶は丹の形に象る。
といふ。
『史記・貨殖傳』に、蜀の寡婦の清が、丹穴を得て豪富を得たことを記してゐる。
『書・禹貢』に、荊州に丹を産することが見える。
金文の《庚贏卣》に「丹一⿰木厈」を賜ふことが見え、聖器に塗るのに用ゐた。
甲骨文の大版のものには、その刻字の中に丹朱を加へてをり、今も鮮明な色が殘されている。
『抱朴子・仙藥』には、丹を仙藥とする方を記している。
丹には腐敗を防ぐ力があり、古く葬具にも用ゐられ、殷墓からは、器が腐敗し、その朱色が土に殘された花土の類が出土する。
藤堂
會意。土中に掘つた井型の枠の中から、赤い丹砂が現れ出るさまを示すもので、赤いものが現れ出ることを表す。
落合
指示。甲骨文は、人爲的に掘つた穴である井の中に指示記號の點を加へた形。地中から發掘される顏料を意味する。略體として凡を用ゐた字形もあり、後代にはこれが繼承された。
甲骨文では地名に用ゐる。領主は丹伯や子丹と呼ばれる。《合集》716呼從丹伯。
漢字多功能字庫
甲骨文、金文は、凡と點に從ふ。凡は盤の形に象るが、丹字の中で指すものは盤とは關係ない。甲骨文はあるいは井に從ふ。構形本義不明。或る説に、點は丹砂の形で、礦井の中に丹砂ある形に象り、丹を採る井を表す、とする。按ずるに、丹は字の構成要素として、井の形と通用する。
甲骨文では、地名、方國名として、「己卯卜王才(在)丹」のやうに用ゐる。
金文での用義は次のとほり。
- 人名に用ゐる。
- 丹砂、朱砂を表す。庚贏卣
易貝十朋又丹一𣐼
について、郭沫若は「丹は丹砂。𣐼字は木に從ひ厈聲、疑ふらくは管の異文。丹砂の單位に𣐼を以て言ふのは、猶ほ、貝に朋を以て言ひ、車に輛を以て言ひ、馬に匹を以て言ふがごとし。」と曰ふ。
戰國文字では赤色の意を表す。《上博楚竹書七・武王踐阼》太公望奉丹箸(書)以朝
の「丹書」は紅色の筆墨を用ゐて書いた書のこと。
《段注》に丹者石之精、故凡藥物之精者曰丹。
といふ。
屬性
- 丹
- U+4E39
- JIS: 1-35-16
- 當用漢字・常用漢字
- 𠁿
- U+2007F
- 𠕑
- U+20551
- 㣋
- U+38CB
關聯字
丹に從ふ字を漢字私註部別一覽・井部・丹枝に蒐める。