耆 - 漢字私註
説文解字
老也。从老省、旨聲。渠脂切。
- 八・老部
説文解字注
老也。『〔禮記〕曲禮』「六十曰耆」。許不言者、許以耆爲七十已上之通偁也。鄭注『〔禮記〕䠶義』云、耆耊皆老也。古多假借爲嗜字。又按『〔儀禮〕士喪禮』『〔同〕士虞禮』魚進鬐《注》、鬐、脊也。古文鬐爲耆。許書髟部無鬐字。依古文禮。故不錄今文禮之字也。徐鉉沾附。未識此意。許於禮經古文今文之字依一則廢一。
从老省、旨聲。渠脂切。十五部。」」
康煕字典
- 部・劃數
- 老部・四劃
『廣韻』渠脂切『集韻』『韻會』渠伊切『正韻』渠宜切、𠀤音祁。『說文』老也。『爾雅・釋詁』耆、長也。『禮・曲禮』六十曰耆指使。《疏》耆、至也、至老之境也。『釋名』六十曰耆。耆、指也、不從力役、指事使人也。
又『周語』耆艾修之。《註》耆艾、師傅也。
又『左傳・昭二十三年』不懦不耆。《註》耆、彊也。
又官名。『周禮・秋官』伊耆氏。《註》伊耆、古王者號、始爲蜡、以息老物、此主王者之齒杖、後王識伊耆氏之舊德、而以名官與。今姓有伊耆氏。
又國名。『史記・周本紀』明年、敗耆國。《註》卽黎國也。
又『史記・匈奴傳』匈奴謂賢曰屠耆。
又『前漢・揚雄傳』兗鋋瘢耆、金鏃淫夷者數十萬人。《註》瘢耆、馬脊創瘢處也。
又『集韻』軫視切、音旨。致也。通作厎。『詩・周頌』耆定爾功。《傳》耆、致也。『左傳・宣十二年』耆、昧也。《註》耆、致也。致討於昧。
又『集韻』時利切、音視。嗜亦作耆。『禮・月令』節耆欲定心氣。
- 部・劃數
- 老部・六劃
『字彙補』同耆。
音訓
- 音
- (1) キ(漢) ギ(呉) 〈『廣韻・上平聲・脂・鬐』渠脂切〉[qí]{kei4}
- (2) シ(漢) ジ(呉) 〈『集韻』時利切、音視、去聲至韻〉[shì]
- (3) シ(漢、呉) 〈『集韻』軫視切、音旨、上聲旨韻〉[zhǐ]
- 訓
- (1) おいる
- (2) たしなむ
- (3) いたす。いたる。
解字
白川
形聲。聲符は旨。旨は詣の初文。
『説文解字』に老なり
とし、字を老の省に從つて旨聲とするが、字の本音と合はない。
詣は稽の初文で稽首の意があり、その姿勢のやうに耇曲したものの意であらう。
『禮記・曲禮上』に六十曰耆。指使。
(六十を耆と曰ふ。指使す。)とあるのは、旨の聲を用ゐたものであらう。
嗜好の意はまた別義。
藤堂
老の略體と旨(うまみ)の會意。年を經て旨みの出たことを表す。
漢字多功能字庫
耆字の金文と篆文の構形は同じく、均しく老の省に從ひ、旨聲。本義は老年。
金文では聲符の旨を或は變じて古の形に作る。滕𥎦耆戈(春秋晩期)の字形を参照せよ。この聲符は或は春秋戰國期の變體である。
金文での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、老年を指す。逨盤
天子其萬年無彊(疆)、耆黃耇、保奠周邦、諫辥(乂)四方。
は、天子は萬壽無疆で、年老いて髮が黃色くなり、周の邦を保ち定め、四方を治める、の意。 - 人名に用ゐる。十三年相邦義戈
工大人耆。
戰國竹簡での用義は次のとほり。
- 本義に用ゐ、老年を指す。《清華簡一・皇門》簡1
朕寡邑少(小)邦、𥣫(蔑)又(有)耆耇慮事屏朕立(位)。
は、我が城邑は寥落(荒廢)し、國家は弱小で、我が地位を保護するために物事を考へる老人はゐない、の意。 - 讀んで祁となし、寒氣の盛大なるを形容するのに用ゐる。《上博竹書一・緇衣》簡6
晉冬耆(祁)寒、少(小)民亦隹(惟)日怨
は、冬の氣候は嚴寒で、小民もまた上天を恨むであらう、の意。 - 秦簡では或は嗜と讀み、嗜好を指す。
- 《睡虎地秦簡・為吏之道》簡35-5
人各食其所耆(嗜)。
- 《睡虎地秦簡・日書甲種》142正-4
丙午生子、耆(嗜)酉(酒)而疾、後富。
- 《睡虎地秦簡・為吏之道》簡35-5
傳世文獻の用義は次のとほり。
- 多く本義に用ゐる。
- 『爾雅・釋詁上』
耆、長也。
- 『孟子・梁惠王下』
乃屬其耆老而告之。
- 『爾雅・釋詁上』
- 專ら六十歲の老人を指す。
- 『釋名・釋長幼』
六十曰耆。
- 『禮記・曲禮上』
六十曰耆、指使。
鄭玄注指事使人也。
- 『禮記・射義』
幼壯孝弟、耆耋好禮。
陸德明釋文六十曰耆。
- 『釋名・釋長幼』
屬性
- 耆
- U+8006
- JIS: 1-70-45
- 𦓀
- U+264C0
關聯字
耆聲の字
- 蓍
- 嗜
- 榰
- 鬐
- 𣹡
- 𧡺