厎 - 漢字私註
説文解字
柔石也。从厂氐聲。職雉切。
- 九・厂部
厎或从石。
- 別條に揭出する。
説文解字注
柔石也。柔石、石之精細者。《鄭注》『〔書〕禹貢』曰、厲摩刀刃石也。精者曰砥。『尙書大傳』其桷、天子斲其材而礱之。加密石焉。《注》曰、礱、厲之也。密石、砥之也。按厎者、砥之正字。後人乃謂砥爲正字。厎與砥異用。強爲分別之過也。厎之引伸之義爲致也、至也、平也。有假借耆字爲之者。如『〔詩〕周頌〔武〕』耆定爾功。《傳》曰、耆、致也、是也。从厂氐聲。職雉切。十五部。按此字从氐聲。俗从氏、誤也。古音氏聲在十六部。氐聲在十五部。不容稍誤。唐以來知此者鮮矣。五經文字石刻譌作𠨿。少一畫。不可從。『顧亭林・與潘次耕書』分別𠨿厎不同義。不知古無从氏之𠨿。厎與底爭首筆之有無。末筆則從同也。厎與底音義均別。《广部》詳之。
厎或从石。今字用此而厎之本義廢矣。『毛詩〔小雅〕大東』周道如砥。『孟子』作厎。
康煕字典
- 部・劃數
- 厂部・五劃
『唐韻』諸市切『集韻』『韻會』軫視切『正韻』諸氏切、𠀤音指。『說文』柔石也。从厂、氐聲。《徐曰》可以爲礪。『前漢・梅福傳』爵祿、天下之厎石。『蕭望之傳』厎厲鋒鍔。《註》師古曰、厎、柔石。厲、卓石。
又『說文』致也。『書・旅獒』西旅厎貢厥獒。
又定也。『書・臯陶謨』朕言惠可厎行。
又『說文』厎、或从石作砥。『詩・小雅』周道如砥。
又『韻會』通作底。【孟子】引【詩】周道如底。
又或作耆。『詩・周頌』耆定爾功。《註》致也。音指。與厎同。
又『集韻』都黎切、音低。至也。
又陟利切、音致。致也。『書・禹貢』震澤厎定。
又丁計切、音帝。義同。
又『正韻』旨而切、音支。『前漢・梅福傳』註、師古曰、厎細石也、音之履反、又音秪。
音訓
- 音
- (1) シ(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・止・止』諸市切/『廣韻・上聲・旨・旨』職雉切〉[zhǐ/dǐ]{zi2/dai2}
- (2) テイ 〈『集韻』都黎切、音低、平聲齊韻〉
- (3) チ 〈陟利切、音致、去聲〉
- (2) シ 〈『正韻』旨而切、音支、平聲〉
- 訓
- (1) と。といし。とぐ。いたる。いたす。さだめる。
- (2) いたる
- (3) いたす
- (4) といし。とぐ。
藤堂は發音について、古くはzhǐ、新しくはdǐとする。
解字
白川
形聲。聲符は氐。氐は氏(曲刀)や厥(剞劂、彫刻刀)などを砥石に當てて礪ぐ形。
『説文解字』に柔石なり
とあり、砥石をいふ。
厂は崖下のところ。そこで石を切り出す。
致と通用することがある。
藤堂
厂(崖、石)と音符氐の會意兼形聲。氐は、低、底(平らで低い底)の原字で、平らで厚さが薄い意を含む。厎は、薄く平らな巖石で出來た砥石。
漢字多功能字庫
厂に從ひ氐聲。本義は材質が細密で滑らかな砥石。轉じて磨練の意。
異體を砥に作る。『説文解字』に柔石也。
、段注に柔石、石之精細者。
とする。
後に磨礪、鍛鍊の意を派生する。『文選・鄒陽・上書吳王』聖王厎節脩德、則游談之士、歸義思名。
李善注厎、礪也。
金文では官職名に用ゐる。害簋官𤔲夷僕、小射、厎魚。
厎字を陳夢家は底と釋し、底魚とは刺魚、叉魚のことで、魚を射る官とする。按ずるに金文は厂に從ひ广に從はず、厎と底は形と音のいづれも近く、「厎魚」を魚を射る官と解釋するのは參考にできる。『淮南子・時則』天子親往射漁
。『左傳・隱公五年』公矢魚于棠
は、魯隱公が棠の地にあつて弓矢で魚を射ることを指し、古代の魚を射る俗を反映してゐる。
古書にあるいは底を誤つて厎に作る。
- 唐・伍喬〈觀山水障子〉「功績精妍世少倫、圖時應倍用心神。不知草木承何異、但見江山長帶春。雲勢似離巖厎石、浪花如動岸邊蘋。更疑獨泛漁舟者、便是其中舊隱人。」」「巖厎石」は「巖底石」のこと。
- 元・黄溍〈題松溪圖〉
獨騎瘦馬走赤日、忽對畫圖雙眼明。想見髙人茅屋厎、石牀卧聽松風聲。秋風漸髙霜露白、松根茯苓已堪食。鬱紆遲暮祗自憐、卷圖還客三歎息。
「茅屋厎」は「茅屋底」で、この句は、高人は茅屋で橫になつて松濤(松風)を聽く、の意。
屬性
- 厎
- U+538E
- JIS X 0212: 20-38