亶 - 漢字私註
説文解字
多穀也。从㐭旦聲。多旱切。
- 五・㐭部
説文解字注
多榖也。亶之本義爲多榖。故其字从㐭。引伸之義爲厚也、信也、誠也。見『〔爾雅〕釋詁』、『毛傳』。从㐭且聲。多旱切。十四部。
康煕字典
- 部・劃數
- 亠部・十一劃
『唐韻』多旱切『集韻』『韻會』黨旱切『正韻』多𥳑切、𠀤音僤。信也。『書・盤庚』誕告用亶。『詩・小雅』是究是圖、亶其然乎。『儀禮・士冠禮』醮辭曰、旨酒旣淸、嘉薦亶時。《註》誠也。
又姓。東漢亶誦、善律曆。
又海外國名。『韓愈・送鄭尚書序』夷亶之州。《註》夷州、亶州、𠀤國名。
又『集韻』張連切、音鱣。屯亶、難行不進貌。『正譌』別作迍邅、非。
又與但同。『詩・小雅』擇三有事、亶侯多藏。『前漢・賈誼傳』非亶倒懸而已。『揚雄傳』亶費精神於此。
又與襢袒同。『荀子・議兵篇』路亶者也。『劉向・新序』路單、卽露袒。
又『集韻』時連切、音蟬。『山海經』有亶爰山。
又與𦒜同。『揚雄・蜀都賦』堪巖亶翔。
音訓・用義
- 音
- (1) タン(漢、呉) 〈『廣韻・上聲・旱・亶』多旱切〉[dǎn]{taan2}
- (2) セン(漢) 〈去聲線韻〉{sin6}
- (3) テン 〈『集韻』張連切、音鱣、平聲〉
- (4) タン [dàn]{daan6}
- 訓
- (1) まこと。あつい。
- (2) もつぱら。ほしいまま。
- (4) ただ
音義(2)は擅との通用に由る。
屯亶は音(3)に讀み、行き難きさま。
音(4)に讀んで但と通用する。
解字
白川
象形。下部は建物の下壇、上部は廩藏の形で、神倉の象。
『説文解字』に穀多きなり
とし、旦聲とするが、旦は基壇の形であらう。その部分をまた壇といふ。
『詩・小雅・常棣』に亶其然乎
(亶に其れ然るか)の《傳》に信なり
とあり、誠信の意に用ゐる。
單と通用し、『詩・周頌・昊天有成命』單厥心
(厥の心に單くす)を『國語・周語下』に引いて亶に作る。「單す」の訓もある字。
藤堂
㐭と音符旦の形聲。上部(㐭)は、稟(米倉)の上部と同じで、穀物を圍ひの中、屋根の下に集めた姿。亶は、物を多く集めるの意を含む。
漢字多功能字庫
㐭に從ひ旦聲。本義は穀物の多きこと。『説文解字』亶、多穀也。(後略)
- 『詩・小雅・十月之交』
擇三有事、亶侯多藏。
楊樹達云『詩』文言多藏、故以訓多穀之亶狀之。『亶侯』者、猶言「亶兮」也。
古書では多く引伸義に用ゐる。《段注》亶之本義為多穀、引伸之義為厚也、信也、誠也。
亶は忠厚(忠實で情厚い)を表す。『爾雅・釋詁下』亶、厚也。
- 『國語・周語下』
於、緝熙。亶厥心肆其靖之。
韋昭注亶、厚也。
- 『風俗通義・窮通』
非唯聖人俾爾亶厚、夫有恆者亦允臻矣。
誠信を表す。『爾雅・釋詁上』亶、信也。
邢昺疏皆謂誠實不欺也。
- 『詩・大雅・板』
靡聖管管、不實於亶。
毛傳亶、誠也。
鄭玄箋不能用實於誠信之言、言行相違也。
副詞となし、誠然(誠に、實に、全く)、確實(確かに、間違ひなく)を表す。
- 『尚書・泰誓上』
惟天地萬物父母、惟人萬物之靈、亶聰明作元后、元后作民父母。
孔傳人誠聰明、則為大君。
- 『荀子・彊國』
今相國上則得專主、下則得專國、相國之於勝人之埶、亶有之矣。
通じて殫となし、盡(つくす、ことごとく)を表す。
- 『墨子・非樂上』
士君子竭股肱之力、亶其思慮之智。
孫詒讓閒詁亶、殫聲近字通。
但と通ず。
- 『漢書・趙充國辛慶忌傳』
誠令兵出、雖不能滅先零、亶能令虜絕不為小寇、則出兵可也。
顏師古注亶、讀曰但。
屬性
- 亶
- U+4EB6
- JIS: 1-48-25
關聯字
亶に從ふ字を漢字私註部別一覽・㐭部・亶枝に蒐める。